騙されて異世界へ

だんご

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37 ラッキー

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 ギルドにて。
 ビルが頭を抱えて、俯いてしまった。
 それもそうだろうな。
 ワイルドベアの討伐ができそうな人間は、皆出払ってるんだもんな。
 昏睡状態で、トドメ刺せる人員がいたとしても、月追い草の群生地だもんな。
 頭を抱えてしまうのも無理はない。

 「大変だな」
 
 「お前……無事に帰ったからって他人事かよ……」

 「俺じゃどうにもならんからな」

 「そりゃ、そうだけどなぁ……」

 「そんなに考え過ぎるとハゲるぞ?」

 「もうハゲてるよっ!」

 だな。
 スキンヘッドだ。
 それ、ハゲから来てたのか。

 「はぁ……しかしお前、よく眠らずに済んだな」
 
 「おう。元々こういうのは、効きづらいんだと思うんだ。スキルの恩恵か体質かは解らんけどな。今回も余り近寄らなかったのと、短時間で離脱したのと……キナコへの愛だな」

 ビルの視線が生暖かい。
 デコに視線が来ているようだが、生憎と俺はまだハゲる兆候は無い。
 無いったら無い。

 「愛か……額のソレ見りゃわかる。ご主人思いのイイ奴じゃねぇか」

 「ん?額?」

 「……気付いてねぇのかよ。額にガッツリ爪痕と流血の跡が付いてんだよ」
 
 「え?」
 
 手で拭うと、乾いた血のかけらが付いてた。
 そう言えば『死の揺り籠』手前でガッツリやられたんだったか。
 そう言えば、キナコと手元しか【清浄】してなかったな。 
 帰ったら、ガッツリ【清浄】かけておこう。
 その内、1度キナコの風呂も考えておかないとな。
 何か石鹸とかトリートメント様モノ、探してみるか。
 毛並みがゴワゴワになったら困るからな。

 「ふ……キナコ……」

 「くるる……あぎっあぎっあぎっ」

 「おっ、おい……ソブル、顔。顔噛まれてるぞ?」

 「うん?あぁ。愛情表現だな!」
 
 「いや、そうか?そうなのか?」

 「……くるる。あぎっ」

 わかったって、キナコ。
 風呂入れの事、考えたのを察したんだろ?
 でも、ここでは言わんぞ。
 勿体無い。
 キナコの賢さ、可愛さの発表は、最小限だ。
 拐われたら困るだろ?

 「はぁ……まぁいい。採取した物を出してくれ」

 「おう。月追い草もいくつか採ったのも出していいか?」  

 「ソレは専用の容器に入れるから、最後だな」

 「おう。ギリギリ取れた獲物達もあるんだが?」 

 「ソレは裏で出して貰う。月追い草も裏で受け取るか……アレはヤベェからな」 

 「そこまでヤベェのか……」
 
 「過敏に反応する奴もいるんだよ。昏睡状態になったと思ったら、涙・鼻水がダバダバ出てな……酷い事になるんだ……恐怖だぜ?アレ。みるみる内に地面に水溜りが出来てなぁ」

 「そんなにか?! 」

 ソレ、花粉症発症とかのレベルじゃ無いんだが?!
 異世界の花粉症はダイナミックなんだな……
 いや。
 アレはマスクが無く、意識も無かったら……
 水溜り、あるかもしれんな。
 怖い怖い。

 裏の解体場だろうか?
 そこで獲物と薬草、月追い草をわたした。

 「……アレだな。食物連鎖を感じる獲物だな」

 「……おう。見た時、衝撃的だったぜ?」

 角兎が銀貨1枚。
 魔狐が銀貨5枚。
 森ウルフが銀貨5枚。
 月追い草が1本大銅貨2枚。 
 
 値段の割合がわからんが、基本金額なんだろうな。
 薬草類を比べると、月追い草が抜きん出て高い。
 その分、かなり危険な一品だった様だ。
 もろもろ合わせて、合計金額が金貨1枚、銀貨4枚、大銅貨1枚になった。
 初めての金貨だ。
 これには、できるだけ手を付けない様にしないとな。

 「やっぱり狩りで獲物を取った方が稼げるんだよな……」

 「そりゃあな。お前も武器が手に入ったら変えるのか?」

 「身体の動きも見てだな。かなり鈍ってるからな……それに、キナコがいるから無理できねぇしな」

 「まぁ、無理はしねぇ事だ」

 「おう」

 嘘はついていない。
 武器が手に入ろうが、学生・・の頃に比べれば鈍ってるし。
 キナコを危険に晒したくないし、残して死ねないからな。
 報酬を受け取り、ギルドを出た。
 
 今日は、屋台の串焼きとパンを買って帰ろうか。
 疲れたからな。
 いつの間にかキナコは寝ていた。
 抱っこ紐から伝わる暖かさに和みながら、広場へ急いだ。
 

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