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29 お猫様
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「にゃっにゃっにゃっ!」
「わかったって」
キナコがデコをペシペシペシペシ叩いて催促しまくる。
屋台広場からの匂いをキャッチしてからは、デコが赤くなる勢いだ。
「にゃっ!にゃん、にゃん、にゃん!」
「わかったよ……ちょっといいか?」
多分、キナコが1番そそられているだろう店主に声をかけた。
チラリとみた感じでは、玉ねぎやら塩ダレやらで漬け込んだ肉を串焼きにしている物を出している様だ。
「毎度!おっ、お猫様連れか」
「おう。しっかり敷かれてるぜ」
「違いねぇ。俺の店を選ぶとは、中々の目利き……いや、いい鼻を持ってんな」
「みたいだな。旨そうだ」
「旨そうだじゃ無く、旨いんだよ」
とりあえず、キナコの指定した3種の串を各2本ずつたのむ。
大き目な葉で串を包んでテイクアウトだ。
「肉がデカいからな。お猫様には、ちとつらいぜ?」
ふと思う。
この世界では、猫に味付けの濃い物を与える事についての知識は無いのだろうか……
獣人のキナコが食うから、問題は無いのだろうが。
突っ込みを入れられずにホッとした反面、心にモヤモヤが満ちていく。
命が軽い世界。
自分の命を守る為、日々精一杯生きているのだ。
ペットの命の重さはいかばかりか……
「旨いんだがな?お猫様に長生きして貰いたきゃ、俺んとこの串は少しで勘弁してやってくんないか?」
前言を撤回しよう。
知っている様だ。
「ああ。もとよりそのつもりだ。あっちに行って来たしな」
商店区画を指しキナコ用の準備が整っている事を匂わせる。
「おっ、そうか……さてはお前さん、イイ奴だな?」
「どうだろうな……まぁ、手探りになるがな……」
キナコとの生活は、前から手探りのままだ。
良いも悪いも一緒に体験している状態だし。
猫から獣人になった事から、また手探りだからな。
食事もトイレも風呂も。
猫キナコの親8年生から、獣人キナコの親1年生だもんな。
きっと大変だろうが……同時に希望に満ちている。
「まぁ、俺もそうさ。濃い口のもんは、チビ達にはダメだってんだから、お猫様には特に悪いんじゃねぇかって常々思ってただけだがな?」
「いいか悪いかって言ったら、悪いんじゃねぇかって俺も思ってたんだ」
元の世界じゃ完全に悪だったが。
「腹減らしてる奴等が可哀想でってな?やってる奴等を見るとな……どうにもよぅ……売り上げは追加になるが……なぁ」
なんだ。
店主の方がイイ奴じゃねぇか。
多分、動物の禁忌食の概念は無いと思っていた。
元の世界だって、浸透したのは本当にごく最近の話だ。
浸透しきれているかも怪しい所だが。
それなのに、なんとなく察している……
想像だが、何かやらかして酷く後悔した事もあるんだろう……
後悔して後悔して、気付いた時には遅くて。
どうしようもないよな。
「おっ、なら普通の肉串を出せるか?」
「今日は全部漬け込んだから無理だが、明日からはできるぜ。漬けねぇ分、ほんのり割引してやれるしな」
「なら、明日から頼めるか?まっ、毎日って訳でもないけど……」
「いや、漬け込むんが今日だけ特別だったんだ。普段はまだ残ってるんだって……売れてねぇ訳じゃねぇぞ?だから気にせず寄ってくれ!」
……これは優しさだな。
うん。
「ありがとう。可能な限り、寄らして貰う」
「おう!……固定客ゲットだぜっ!」
「そのセリフは胸の内に留めとけよ……ったく」
「おう!毎度あり!」
銅貨で支払い、他の屋台でパンを買って、家路に着く。
頭上のキナコがさっきから大人しいのが気になるな。
けど尻尾はゴキゲンな感じだ。
ゆっくりとしたリズムで振られいる。
「キナコ?」
「にゃん?」
お返事できるにゃんこさんは、良いにゃんこさんです。
「流れで明日から味付け無しのも買う事になったが……コッソリ半分こしような?」
「にゃん♡」
それで良いみたいだな。
ゴキゲンだし、これで良かったのか。
うん。
これが、いい。
夕日を背に、ドドンとリック宅に到着だ。
「にゃ~……」
「おう。立派な家だよな~……けど、俺は居候だ」
「にゃ?」
「うん。ここ、人ん家……御厚意で住まわせてもらってんだ。キナコもそのつもりで頼む」
「にゃん!」
家に入ってから、ここまでの経緯をキナコに説明していった。
キナコは時折『にゃ』と相槌を打ってくれるので、結構嬉しい。
全部を全部分かってくれるとも思わないが、キナコがいると実感出来る素晴らしさは、もう、感無量です。
「そうだ、キナコ。トイレはどうする?」
「にゃ~……にゃん、にゃっにゃっ」
四角、置いて、砂かき……
キナコがジェスチャーを出来る様になるだなんて……異世界、素晴らし。
ってゆーか、キナコ、凄いんじゃね?
なんか、もう天才じゃね?
天から授かった才能も可愛さも全部余す所無く発揮してるよな?
完全無欠のキナコ様?
もはや神なんじゃね?
仮神より神じゃね?
全世界、全宇宙が平伏してもいいんじゃね?
やべぇ……世話をできる俺、最高に幸せです……
「んにゃ……?にゃ?」
「……はっ!すまんキナコ。ちょっと飛んでた。箱に砂な?」
「にゃん」
心なしか目が座っておられる。
キナコ神様は心を見通すとでも……はっ!
まさか真眼?! いや、神眼?!
やはり、神‼
「にゃ~~~~~」
「あっ、ゴメンナサイ……」
低いにゃ~が出て、尻尾がタシンタシンしてる。
キナコ様がお怒りじゃぁ!
「にゃ~~~~~」
「本当に申し訳ありませんでした」
やべ。
マジで怒らせる前に飯の仕度をするか。
「フスンッ」
やべぇ。
マジで可愛ぇ。
おっと。飯、飯。
「わかったって」
キナコがデコをペシペシペシペシ叩いて催促しまくる。
屋台広場からの匂いをキャッチしてからは、デコが赤くなる勢いだ。
「にゃっ!にゃん、にゃん、にゃん!」
「わかったよ……ちょっといいか?」
多分、キナコが1番そそられているだろう店主に声をかけた。
チラリとみた感じでは、玉ねぎやら塩ダレやらで漬け込んだ肉を串焼きにしている物を出している様だ。
「毎度!おっ、お猫様連れか」
「おう。しっかり敷かれてるぜ」
「違いねぇ。俺の店を選ぶとは、中々の目利き……いや、いい鼻を持ってんな」
「みたいだな。旨そうだ」
「旨そうだじゃ無く、旨いんだよ」
とりあえず、キナコの指定した3種の串を各2本ずつたのむ。
大き目な葉で串を包んでテイクアウトだ。
「肉がデカいからな。お猫様には、ちとつらいぜ?」
ふと思う。
この世界では、猫に味付けの濃い物を与える事についての知識は無いのだろうか……
獣人のキナコが食うから、問題は無いのだろうが。
突っ込みを入れられずにホッとした反面、心にモヤモヤが満ちていく。
命が軽い世界。
自分の命を守る為、日々精一杯生きているのだ。
ペットの命の重さはいかばかりか……
「旨いんだがな?お猫様に長生きして貰いたきゃ、俺んとこの串は少しで勘弁してやってくんないか?」
前言を撤回しよう。
知っている様だ。
「ああ。もとよりそのつもりだ。あっちに行って来たしな」
商店区画を指しキナコ用の準備が整っている事を匂わせる。
「おっ、そうか……さてはお前さん、イイ奴だな?」
「どうだろうな……まぁ、手探りになるがな……」
キナコとの生活は、前から手探りのままだ。
良いも悪いも一緒に体験している状態だし。
猫から獣人になった事から、また手探りだからな。
食事もトイレも風呂も。
猫キナコの親8年生から、獣人キナコの親1年生だもんな。
きっと大変だろうが……同時に希望に満ちている。
「まぁ、俺もそうさ。濃い口のもんは、チビ達にはダメだってんだから、お猫様には特に悪いんじゃねぇかって常々思ってただけだがな?」
「いいか悪いかって言ったら、悪いんじゃねぇかって俺も思ってたんだ」
元の世界じゃ完全に悪だったが。
「腹減らしてる奴等が可哀想でってな?やってる奴等を見るとな……どうにもよぅ……売り上げは追加になるが……なぁ」
なんだ。
店主の方がイイ奴じゃねぇか。
多分、動物の禁忌食の概念は無いと思っていた。
元の世界だって、浸透したのは本当にごく最近の話だ。
浸透しきれているかも怪しい所だが。
それなのに、なんとなく察している……
想像だが、何かやらかして酷く後悔した事もあるんだろう……
後悔して後悔して、気付いた時には遅くて。
どうしようもないよな。
「おっ、なら普通の肉串を出せるか?」
「今日は全部漬け込んだから無理だが、明日からはできるぜ。漬けねぇ分、ほんのり割引してやれるしな」
「なら、明日から頼めるか?まっ、毎日って訳でもないけど……」
「いや、漬け込むんが今日だけ特別だったんだ。普段はまだ残ってるんだって……売れてねぇ訳じゃねぇぞ?だから気にせず寄ってくれ!」
……これは優しさだな。
うん。
「ありがとう。可能な限り、寄らして貰う」
「おう!……固定客ゲットだぜっ!」
「そのセリフは胸の内に留めとけよ……ったく」
「おう!毎度あり!」
銅貨で支払い、他の屋台でパンを買って、家路に着く。
頭上のキナコがさっきから大人しいのが気になるな。
けど尻尾はゴキゲンな感じだ。
ゆっくりとしたリズムで振られいる。
「キナコ?」
「にゃん?」
お返事できるにゃんこさんは、良いにゃんこさんです。
「流れで明日から味付け無しのも買う事になったが……コッソリ半分こしような?」
「にゃん♡」
それで良いみたいだな。
ゴキゲンだし、これで良かったのか。
うん。
これが、いい。
夕日を背に、ドドンとリック宅に到着だ。
「にゃ~……」
「おう。立派な家だよな~……けど、俺は居候だ」
「にゃ?」
「うん。ここ、人ん家……御厚意で住まわせてもらってんだ。キナコもそのつもりで頼む」
「にゃん!」
家に入ってから、ここまでの経緯をキナコに説明していった。
キナコは時折『にゃ』と相槌を打ってくれるので、結構嬉しい。
全部を全部分かってくれるとも思わないが、キナコがいると実感出来る素晴らしさは、もう、感無量です。
「そうだ、キナコ。トイレはどうする?」
「にゃ~……にゃん、にゃっにゃっ」
四角、置いて、砂かき……
キナコがジェスチャーを出来る様になるだなんて……異世界、素晴らし。
ってゆーか、キナコ、凄いんじゃね?
なんか、もう天才じゃね?
天から授かった才能も可愛さも全部余す所無く発揮してるよな?
完全無欠のキナコ様?
もはや神なんじゃね?
仮神より神じゃね?
全世界、全宇宙が平伏してもいいんじゃね?
やべぇ……世話をできる俺、最高に幸せです……
「んにゃ……?にゃ?」
「……はっ!すまんキナコ。ちょっと飛んでた。箱に砂な?」
「にゃん」
心なしか目が座っておられる。
キナコ神様は心を見通すとでも……はっ!
まさか真眼?! いや、神眼?!
やはり、神‼
「にゃ~~~~~」
「あっ、ゴメンナサイ……」
低いにゃ~が出て、尻尾がタシンタシンしてる。
キナコ様がお怒りじゃぁ!
「にゃ~~~~~」
「本当に申し訳ありませんでした」
やべ。
マジで怒らせる前に飯の仕度をするか。
「フスンッ」
やべぇ。
マジで可愛ぇ。
おっと。飯、飯。
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