騙されて異世界へ

だんご

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24 普通のスライム

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 翌朝、薬草採取の為、日が昇り出す辺りに森へと出発した。
 持ち物は、採取道具と携帯食、水の革袋を【アイテムボックス】の中に仕舞ってあるわけだ。
 一応、ショートソードと腰ベルトも借りている。
 使える訳ではないが、何もないよりマシだとさ。
 まっ、自前のサバイバルナイフよりも長いから、あるだけで安心感があるな。
 掃除依頼ばかりしてたから、初めての冒険者らしい依頼だ。
 ちょっとばかり嬉しくもある。

 「さてと…… 薬草類にしぼって【鑑定】っと」

 ふむふむ。
 癒やし草がポツポツあるな。
 1~2株残して採取だな。
 山菜採取用みたいな鋭利なスコップを取り出し、採取開始。
 根を傷付けない為に、周りの土にスコップを入れる。
 いくらレベルアップで身体能力が上昇しようが、素手で土を掘るよりも、道具があった方が楽なのだ。
 ギリギリは手で土をほぐし、回収。

 ポツポツある事はあるが、すぐに採取を終えてしまう。
 やはり、こんな森の浅い場所では量は揃わないな。
 これを納めた所で、銀貨どころか銅貨50枚にも届かないな……
 銅貨は1枚10円、銀貨は1枚1000円位か……
 毎日の食事だって、1食に200~300円かかるんだ。
 それなのに、日給500円以下とは……ちょっと辛いよな。
 これで宿も手配しててら、金欠で死んでたな。

 「……もう少し森に入っておくか」

 【鑑定】【マッピング】【身体強化】を活かし、再度散策を開始した。
 できれば敵と遭遇したくないが……

 【スライム】
 ・やや危険。体内に取り込んだ物は何でも消化する。時折消化液を体外に排出し攻撃してくる。核を破壊すると死滅する。

 ……出た。
 お約束のスライムが出てしまったよ。
 しかも、あれだ。
 子供のおもちゃによくあるタイプ。
 デロデロタイプ。
 しかも黄緑。ちょっとドギツイ明るさのあるヤツ。
 某有名ゲームの可愛いスライムなんて、幻想かもしれないな……
 動きは激しく遅いがウジュルウジュル動くので、気持ち悪い。
 陸に上げられ、戸惑ったタコの様だ。
 タコより動きが鈍いけど。

 透明感が足りないので、核の位置が特定できないが……
 細かめにショートソードで斬り込めれば、当たる確率が上昇するのか?
 いや、溶かされる可能性があるからなぁ……
 
 どうしたもんか……
 とりあえず、その辺に落ちてた枝数の多い木の棒で叩いてみた。
 
 『ドッ、ジュッ』

 叩いた瞬間、スライムは区分けされたが、枝は溶かされた感じかな?
 ん。
 衝撃の瞬間は区分けされてたスライムも、ジワジワと枝を包み込みだした。
 こうやって体内に取り込んで消化・吸収するんだろうな。

 『※その認識でOKです』

 いったんスライムから棒を引き抜いてみた。
 細い枝は折れてしまったが、木の皮がうっすら溶けてる程度。
 溶かす速度は遅いみたいだ。
 ただ、スライムから抜き取ってもジュワジュワしてる所を見ると、液が付いてる内は溶け続けるのか?

 『※その認識でOKです』

 観察していると棒に付着しているスライム液が減ってきた。
 すると液に接していない部分は、ジュワジュワ効果が消える。
 ……ん?
 あれか?
 化学反応的なヤツか?
 飽和状態になってしまうと消えちゃうし、溶かせないってヤツ?

 『※その認識でOKです』

 なるほど、なるほど。
 でも、核のある本体は、その限りではないと?

 『※その認識でOKです』

 ほうほうほう。
 ……あっ、それでか。
 キングスライムに突っ込んだ後の事を少しだけ思い出したよ。
 
 『※その認識でOKです』

 ……ん。
 スライム、危険。
 命も危険だけど、社会的な方向でも危険。
 露出、ダメ、絶対。
 駆除すべし。

 これ【鑑定】で核の場所、わからないかな?
 よくよく目を凝らして見る。
 うっすらと、固形の物が見える様な、見えない様な……

 試しにショートソードでついてみた。

 『パキンッ』

 硬い感触が手に伝わってきた。
 が、ジュワジュワという音も聞こえてきたので、慌ててショートソードを引き抜き、飛沫を切る。

 「っぶねぇ。武器持ってかれるな……」

 さらにブンッと付着物を遠心力で吹き飛ばす。
 借り物だ。弁償なんて、とんでもない。
 ……よし。
 ショートソードが溶ける音は消失したな。

 スライム本体も核が破壊されたらしく、縮小してきた。
 ジワジワと消えて行くと、ビー玉位の石が割れている状態で現れる。
 多分、ソレがコイツの核なんだろうな。
 一応、回収っと。

 さて、薬草採取の再開だな。
 ……わかってはいたが、薬草類はまばらに分布している。
 森の浅い場所なんて、こんなものだろうな。
 多分、山菜系と同じだろう。
 群生している所なんかは、玄人さんの秘密の庭になってるに違いない。

 そこから数時間。
 ひょっこり現れるスライムに危機感を刺激されつつ、ポツリポツリと薬草を採取した。
 癒やし草27本、痺れ草13本。
 【鑑定】に頼ってなんとか集まったって感じだ。
 癒やし草が1本銅貨2枚、痺れ草が3枚だから全部で銅貨93枚。
 1日の稼ぎは930円って事。
 銀貨に届かなかったが……
 森の手前でこれだけ集めたならば、かなりのもんだろ。
 まぁ、食い物で消える額だが……
 やっぱり自炊して出費を抑えなきゃヤバいよなぁ。
 そこは、あっちにいた頃と同じか。
 やれやれだ。

 ギルドで薬草の査定をすまし、色を付けて貰った報酬をありがたくいただく。
 本当にありがたい……
 前回程の色付けは無かったが、銀貨1枚半分の稼ぎになった。
 1500円って事だな。
 使い勝手がいいから、銅貨にして欲しいと告げる。
 すると大き目の銅貨15枚で出てきた。
 多分、大銅貨ってヤツだろうな。
 銅貨10枚で大銅貨1枚って事だろう。

 『※その認識でOKです』

 なるほどなるほど。
 了解しました。
 銅貨でジャラジャラするのが減らせるという事ね。
 
 「助かったよ。これで多少なりともポーションができて来るな……欲を言えば限りないがな?」

 ビルがニヤリとこちらを眺めてくるが……
 そんな挑発的な顔されてもなぁ……誰得よ。

 「……へいへい。そんな目を向けられたら、断わるなんて出来ないからなぁ?」

 って返しておくがな?
 オッサンからの熱い視線なんかいらん。
 適当な会話を切り上げて、屋台で買い食いをしながら帰宅。
 金銭的な余裕が欲しいなら、自炊した方がいいんだろうけどな……
 リック達と食材の割り勘をしないなら、屋台の方がいいだろうな。
 1人前を作る為だけに釜戸をおこすのもな?
 手間も薪代もかかるんだよな。 
 冷蔵庫がないから保存きかないし。

 食堂って手もあるが……
 なんか汚いっていうか、ガラが悪いっていうかな?
 ギルドにくっついてる所は、ガラが悪い連中がいるし。
 まぁ、テンプレだ。
 テイクアウトも出来るが、若干割高だし。
 かと言って、町の食堂が安全かと言えば、同じ様なもんだ。
 しかも若干汚い。
 カトラリーの数がそろってないのか、手づかみ派が多いのだ。
 フィンガーボウルやおしぼり、ナプキンがないもんだからテーブルクロスで拭いてやがる。
 しかも、しょっちゅう取り替える訳でもないから……
 いつの汚れかもわからん物がこびりついている。
 皿もそろってない様子で、黒パンが皿代わりになってたりもする。
 ときたま客が黒パンを犬だったり、スラム街の住人に放おっていたりする所を見ると、不味いんだと思う。
 なんか、中世時代辺りのヨーロッパの話に似ている様な気もする。
 カトラリー系が全くない訳でもないから、何とも言えないが。
 
 そんな訳で、食堂での外食案はボツだ。
 ギルドにくっついている食堂がまともだから、そっちでって考えもあるが……
 なんだかんだ知り合いと遭遇したり、知らんけども話しが盛り上がったりと、多分そっちは落ち着いた食事は期待できない。
 情報収集的には良い。
 すこぶる良い。
 ただ、気疲れが溜まるな。
 下手な発言したら、正体がバレるしな。
 大人しくしてるのが1番だ。
 テイクアウトでお願いします。だ。
 
  


    
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