騙されて異世界へ

だんご

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15 何かいすぎる

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 「おいおいおいおい……嘘だろ?」

 一晩中【清浄】をかけて回ったが、殆ど汚れは取れず。
 とりあえず、寝床を確保する為に一部屋で集中的に【清浄】を使い、なんとか寝ても平気な位まで持って行ったはずなのだが……

 あっ、リックはいつも通り自室で寝たよ。
 信じられないが、そのまま寝に行ったよ。
 どこに寝るスペースがあるかわからないが、寝に行ったよ。
 ホント、驚いたよ。
 いや、今の状況も驚いてるよ?

 床のホコリが尋常じゃないだけ積もってやがる。
 どうなってんだ?
 けど、布団には乗っていない……?
 埃に海の満ち欠けみたいのあんの?
 まさか、海の満ち潮状態?
 怖っ!!
 いや、まてよ?
 【清浄】だけでは掃除にならないって事か?
 ……汚れっぷりが半端なくて、効果が出ない?

 『※その認識でOKです』

 マジかよ……
 そう言えば、壁の汚れも5~6回【清浄】かけてようやくだったもんな……
 歩きながらかけた所は、ただ押し流しただけだったか。

 『※その認識でOKです』

 マジか……
 これは厄介だな……
 まっ、でも家に汚れを産み出す魔物でもいるか『※その認識でOKです』と思ったわ……って、うえっ?!
 いるのかよ……

 『※その認識でOKです』

 まさか、リックとか?

 『※その』︵プツンッ︶

 ……今、かすったよね?
 フライング的な。
 認識さんもリックを怪しんでる?
 大元はアイツだから。

 『※その認識でOKです』

 だよなぁ~……はぁ……
 厄介な恩人に拾われたもんだ……
 んで、リック以外にも魔物がいる、と。

 『※その認識でOKです』
 
 やべぇじゃん。
 ここ、マジでヤバいよ。

 とりあえず、窓開けとくか。
 ……一応、リックも起こしがてら窓開けて来よう。
 あの部屋、マジで酷いからな。
 どうせ寝てるだろうから、揺すって起こそう。

 「︵ガチャッ︶リック、」

 ︵カサカサカサカサ︶
 ︵ドザァーーーーーー︶
 ︵サァーーーーーー︶

 んぎゃーーーーーーー?!
 まっ○ろ○ろすけっっ?!
 そこら中、煤と埃まみれっ?!
 ジ○リだって、こんな使われ方するとは思えないだろうっ?!

 【鑑定】
 ・カブリ虫。雑食性。不快害虫。
 
 違ったっ!!
 全然違ったっっ!!
 ゴキさん達だったっ!!
 ジ○リさん、○ろすけっ!ごめんなさいっ!!
 鳥肌が酷いっ!!

 【イエナイ】
 ・危険は少ない。雑食性。カブリ虫が出現する所について行く。煤や埃を排出する。

 ヒィ……
 魔物もいたんだった……
 ゴキさんに毛がモサモサ生えてるみたいなヤツ。
 テカテカ油ギッシュなゴキも嫌だけど、毛が生えてるのも嫌だ。
 ゴキと仲良しな魔物なんて、とても嫌だ。
 口に出して名前を言うのも躊躇われる。
 ……だからイエナイなのか?

 【※その認識でOKです】

 ……なるほど……ヤバいっ!鳥肌だっ! 
 全身鳥肌で皮膚が引き攣った感じが取れないっ!
 くそっ!
 リックのヤツ、こんななかでスヤスヤとしてやがるっ!
 信じられん図太さだな?!
 よくゴチャゴチャの物の中で寝られるもんだよなっ?!

 「頼む……捨てないでぇ……」

 あぁ~……ゴミと共に出される可能性が高いよなぁ。

 『※その』︵プツンッ︶

 ちょいちょい認識さんが主張してくるな。
 いや、思わず色々言いたくなるのは、よくわかるんだ。
 激しく突っ込みたいけど、行き場のないこの気持ち……どうしてくれようか?ってやつだろ?

 『※その認識でOKです』

 だよなぁ……
 ……とりあえず、窓全開っ!!
 
 「あっ、タバサ?」

 「大丈夫か、ソブル?差し入れだ!」

 「んぁ?タバサだって?!」

 リックが飛び起きたな。

 「今、リックとそっちに行くよ」

 「了解」

 リックに【清浄】を念入りにかけさせ、1階の玄関へ向かう。
 一晩中頑張ったのに、煤と埃だらけだ。
 ハッキリ言って泣けてくる。

 「おはよう、タバサ」

 「おはよう2人共。ソブル無事で何よりだな」

 「森に残された時よりヤバい体験だが……無事らしい」

 「そこまで酷くは……」

 「「︵キッ!!︶」」

 「あるな……すまん……」

 とりあえず、タバサからの差し入れをありがたくいただくよ。
 広場の屋台で適当に買って来てくれたらしい。
 串焼きと炙りパン、瓶に入った果実水だ。

 「果実水まで……ありがとう、タバサ!」

 多分だが瓶入りは貴重だろう。値段も張るはずだ。

 「あぁ。多分、必要かと思ってな……新品の水入れごとってのもなぁ、混じったら嫌だろ?」

 そう言って、放置されたままの皮袋を見る。
 ……あれ、皮製の水筒だったのか。
 結構家の中に散らばってたな……大切に使えよ……

 「想像したくもないな……」

 「……だろ?」

 「そんなの【清浄】かければ……」

 「︵ギロッ︶」

 「すまん……なんでもない……」  

 リックよ……
 余計な事は口にするなよ。
 愛情メーターがマイナスになるぞ?

 「あと、これも持って来たから使ってくれ」

 「助かるよ、タバサ」

 掃除用具だ。
 何もなかったから、超ありがたいわ。

 「なんだ……タバサは帰るのか……?」

 「リック。お前、少し考えろよな……」

 「ソブル?」

 「いいか?女性をこんな汚い所に引きずり込むなんざ、正気を疑われるぞ?」

 「なっ?ソブル?」

 「はぁ~……リックの意識も磨かなきゃならんな」

 「すまんな、ソブル。リックを頼む……」

 「えっ?タバサ?」

 「できるだけやってみるわ。気をつけて帰れよ?」

 「ソブル?」

 「昼頃にまた来る」

 「タバサ?タバサッ?!」

 タバサがダッシュで消えた。
 物の見事に豆粒程の大きさしか見えない場所まで行ってしまった。
 タバサの本気がうかがえる。
 それでも好きな相手の為に、よく頑張ったよ。
 タバサ……いい嫁さんになるだろうな。
 まだ、嫁に出せる場所ないけど。

 「1秒でもいたく無いだろうに……よく耐えたなぁ……」

 「酷いぞ、ソブル!」

 「バカヤローが。タバサの消えっぷりが全てを物語ってるんだよ。頭に叩き込んどけ。不潔な場所は、女性は特に嫌がるからな」

 「あ……」

 「タバサに逃げられたくなければ、ズボラな自分を切り倒せよ?」

 「わかった……」

 無言で屋台飯を食い、果実水で喉を潤す。
 この瓶は、しばらく再利用させて貰おう。
 掃除道具は、ほうき・ちりとり・デッキブラシ・バケツ・雑巾だな。
 これは?

 【鑑定】
 ・殺虫霧。家の中の不快害虫を根こそぎ退治する。窓を閉め使用。1時間後に換気すること。

 あ~……バル○ンね。
 了解了解。
 2個あるから、1階と2階でまとめて使っちゃうか。

 「リック。とりあえず家の中にコレ設置するから、全部の窓を閉めるぞ?」

 「殺虫霧?それって家で使うもんだったのか?」

 「どこで使うもんだと思ってたんだよ……ったく」

 「いや、てっきり外で使うんだと思ってたわ」

 「煙の意味ねぇだろが……はぁ~」

 「確かに……1時間またなきゃならんのか?」

 「そうだ。あっ、なら庭の草刈りもやってしまうか。外にいるし、出来る事はやってしまおう」  

 「草刈りも掃除なのか?」

 「当たり前だろ?お前も庭があるから虫が~って言ってただろ?整備して、外の害虫も退治するんだよ!」

 「なるほど……」

 「ほれ、動け動け。早く嫁と暮らしたければ、サッサと動け」

 「なっ?!わかったから、ほうきで尻を叩くなよ!」

 家中の窓を閉めて、逆に家中の内ドアを開ける。
 クローゼットや引き出し等々も開ける。
 そして2階に1つ置き、点火。
 1階にもう1つ置いて、点火し、脱出。
 これで不快害虫共は一網打尽さ。

 「ソブル!借りて来たぞ!」

 「おう、お疲れさん」

 リックには、庭道具の借り出しを頼んでたのだ。
 お隣さんの高齢夫婦の庭も荒れ放題で、道具を貸して貰う代わりに、除草を手伝う事にしたのだ。
 だってさ、あっちもこっちも草がボーボーだったら……ねぇ?
 片方残ってると虫被害、あんまりかわらないんだよ。

 「んじゃ、鎌で刈って行くな~」

 「おっと、待て待てリック。草は手で抜くんだよ」

 「はっ?」

 「鎌で刈ったら、すぐ復活するだろ?根ごと引っこ抜いて、余計な土払っておくんだよ」

 「そうなのか?」

 「そうなんだよ。だから、まず手袋使うんだよ。道具が必要になるのは後だよ」
 
 「なるほど……」

 それから、モクモクと雑草抜きに没頭するのだった。

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