騙されて異世界へ

だんご

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7 これから

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 まいったな……
 いちいちノリツッコミしてたら疲れて来たわ。
 しかも、チュートリアルに時間かけ過ぎてるゲーム初心者状態だ。
 自分の命に直結してるから、ゲームとか思い出したくもないんだけどさ。
 まんま初期設定な感じが、こちらの緊張感を奪っていく訳だ。
 これ、生き残るのが大変になりそうだよな。

 だってね?考えてみなさいよ。
 まかり間違ってチート状態になるとするだろ?
 脳内パラダイスが噴き出して『俺チューーーッ!!』とかなったら、テンプレではアッサリ死ぬってヤツよ。
 『この勘違い野郎がっ!』が死因だな。
 安定のモブの最期。
 後ろで仮神が嗤う的な描写があるんだろうなぁ。
 あっ、絶対それ。
 それで間違いないわ。

 よく見る小説で、冴えないオッサンの活躍話あるけどさ?
 もともと何かしらの才能が人より高いだろ?
 物作りが出来る・何かの専門職・想像力が高い・信仰心が高い・腕っぷしが強い・信じられない程の善人……
 物語の主人公になり得るオッサンは、同じオッサン目線で見るとスンゴイ訳よ。
 流石、物語の主人公になるオッサンは違いますねぇな感じだ。

 俺を隣りに並べて御覧なさいよ。
 『ないわ~』ってなるよ?
 ほとんど人並みで、地味に生きて来たし?
 特技ないし?
 休日は、独りキャンプの焚き火でウフウフする位の残念なオッサンだぞ?
 後輩のフラれた愚痴を慰める日常だぞ?
 人よりメーターが高いのなんてない……いや、異常な猫好きってだけだしなぁ……
 これだけだな……昔から平均振り切ってるやつ。

 ……けどな、去年愛猫と死別してからは、ちょっと猫との距離置いてるのだ。
 なんか、思い出し涙出てきた……
 俺が死んだら迎えに来てくれるだろうか……やっぱり○ゅ~るが無いと寄って来ないんだろうか……
 あの世へのお迎えも○ゅ~る次第……持っていない下僕は拒否されるのだろうか……
 なんか悲しくなって来たな……とりあえず、置いとこうか。
 まぁ、普通の人間が生き残るなんて無謀な世界に地味なオッサン……なんか更にハードルが上げられてるんだよなぁ。

 とりあえず、嘆き・その他諸々はポイ捨てして、現状の把握だな。
 生き残る為に必要な事の確認だ。

 名前    ソブル
 年齢    42歳
 職業    冒険者
 Lv        1
 スキル (【隠匿】)【言語翻訳】【鑑定】【マッピング】【健康維持】【アイテムボックス】
 魔法     【生活魔法】【回復魔法(小)】
 称号   (【聖竜(仮)に拉致られし者】)
 加護   (【聖竜(仮)の加護】)

 【マッピング】はあるけど【マップ】は……無いな。
 てか、別画面出て来たけど、画面ほぼ真っ黒なんだよ……この黄色い丸が俺だよな……
 周辺ちょっと白いのは【マッピング】出来たからだろうな。
 地道な埋め込み作業が必要なんだな。

 『※その認識でOKです』

 ……深呼吸だ。深呼吸。
 落ち着いて、考えよう。
 画面を消して周りを見渡すと……森ですな。
 仮神が降りた所は、ちょうど小さい公園位の広さにひらけているが。
 周りはぐるりと高い木々が囲っている。
 木の隙間から覗いても、永遠と木。
 途切れる事は無さそうだ。
 下手に森へ入ると、完全に飲み込まれてしまうだろうな。
 かと言って動かずにいると死ぬ。
 餓死する未来しかない。
 更に言えば、目指すべき場所がわからない。
 人里を目指すべきか否かもわからない。
 そこが安全だとも限らないからな。
 異世界事情がサッパリわからんのだから仕方がないんだが。
 せめて、もう少し情報が欲しかった……

 まだ『勇者召喚』に巻き込まれた方がマシかもしれないな。
 敵がわかり易いだろう?
 けど、敵の目を避けながら生き残るのも辛いか……
 やっぱり敵になり得るヤツに察知されない方がいいか。
 なら、今の状態が1番なのか?
 ……振り出しに戻るよな。

 とにかく、生き残る事だけを考えるか。
 まず自分のいる場所が安全か否か。
 拠点の確保。
 食料・水の確保。
 情報の確保だな。
 手っ取り早く木に登って周りを見てみるか?
 全然周辺の状態がわからんからな……登れるか?
 3階建ての建物位の高さがあるんだが……ちょっと無理っぽい……?

 『※その認識でOKです』

 ……己の限界が早々にわかるって素敵だね。
 せめて方角がわかる様に、地面に棒立てておくか。
 棒を立て、伸びた影をなぞり地面に跡を残しておく。
 これでザックリと方角がわかるだろう。
 太陽が東から昇って西に沈むならだけどな。
 まっ、目安ができるからいいか。
 方角は地球と同じかな?

 『※その認識でOKです』

 ちょいちょい挟まる『認識さん』に気持ちが持っていかれるな。
 けど、方角が地球と同じで助かった。
 これなら太陽の傾きで確認出来るからな。
 ……まてよ?
 『認識さん』に、アプローチを変えてみるのもアリか?

 ……この森は深くて、人里は遠いって事か……?

 『※その認識でOKです』

 イケそうだな。
 一応、野生動物が生息しているな……?

 『※その認識でOKです』

 危険な生物もいる……?

 『※その認識でOKです』
 
 その後『認識さん』に確認を取っていって、色々わかった事は、かなりの絶望的な状況に置かれているという事実だ。

 まず、ここは剣と魔法の世界の【始まりの大地】と呼ばれる場所で、野生動物どころか魔物も出るとの事。
 スタート地点だから最弱の森かと思いきや、ここ【始まりの大地】から世界が出来上がって行ったので、最古の森だと言う。
 アレよ。ラスボス手前の森ってヤツよ。
 殺しにかかっているとしか思えない場所に落とされたのだよ。
 まぁ、聖竜の存在を察知されない為に人目が無い所に降ろすしかなかったって事情もあった様だ。
 それと言うのも、聖竜を自分達の欲望の為に支配したい者が多いらしい。
 詳しく『誰』と特定出来ない程、皆が皆、隙きあらばな感じらしい。

 この世界の住民は、人間・エルフ・獣人・ドワーフ・魔族・妖精・精霊・竜族。
 それぞれの国を持ってたり、散らばっていたりで存在しているそうだ。
 多かれ少なかれ差別は存在していて、戦争は起きていないが、ギスギスはしているらしい。

 さらに、俺が絶望的な気分になったのは、ほぼ全ての国で転移者狩りが行われているとの事。
 待遇の差はあれど、使い潰してくれるらしい。
 人里は危険である事がわかって良かったが、野生化しなきゃ生き残れないと知ってガックリしたよ。

 そして、この情報引き出すまで3時間位使ったよ……
 探り探りの確認で、良く引き出せたと自分で自分を褒めてもいいと思う。
 あと、日時計を思いついて、確認前に設置した自分も褒めたい。
 影の動きから、方角がわかった。
 あっちが東。

 『※その認識でOKです』

 うん。よし。【マップ】に反映された。
 これで活動しやすくなるな。
 
 




 




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