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『今度一緒に、パワースポット巡りに参加してみませんか?』
と。
会社の後輩から誘われていた。
忙しい時期も過ぎ、若干落ち着いて来たから、せっかくなので行ってみよう!
張り切って予約したものの、後輩は急な呼び出しで出張するはめになってしまったのだ。
『……パワースポットで御利益得てないからかなぁ……この出張……』
ぶつぶつと言い出したから、次の機会にしようかと話をするが、
『前金返って来ないんですよ……せめて先輩だけでも御利益貰って来てくださいよぉ……』
メソメソし出した後輩。
彼女が欲しいだのなんだのかんだの。
了解したから、メソメソグチグチを止めてくれ……また後輩の愚痴飲みに付き合わされるなんて、たまったもんじゃない。
何とか後輩を浮上させといた。
……けどな、最初も男2人の参加で肩身狭いなぁ~って考えてたけども。
実際、男1人で参加してみると……
ポツン
……浮いている。
オッサンが1人。
周りから、かなりの勢いで浮いているのだ。
ほぼ女性同士のグループかペア……カップルもチラホラいる中に、ボッチのオジサン。
涙が出そうだ。
……色々な事に負けないパワーが欲しい所です。
出来れば、即効性のある物が嬉しいです。
時折、こちらに向かってヒソヒソクスクスされると、地味に精神が削られて行くのだが……
パワースポットの御利益は、これを乗り越えたら得られるのだろうか?
かなりの苦行である。
「御次に向かいますのは、【聖龍の滝】です。【聖龍】の【聖】はヒジリ、セイントの字を書きます」
……聞いた事のない滝だ。
【青龍の滝】なら知っているんだが?
そちらの滝は知らない。
新しく造られた名称なのだろうか?
「こちらの滝は、地元でもほとんど知られておらず、近年荒廃する寺院を復元した事で発見されたと言うお話です」
地元の人達が知らないって、凄い話じゃないのか?
廃れてしまった寺の敷地でも、普通は入ってしまうもんだろ?
……いや、神域として入らない事もあるか?
もしくは祟り系。
そこ、入っていいのか?
「ひっそりと奥まった場所となりますが、澄んだ空気に滝から響く音は心が洗われ、滝壺は光の加減か青く、悪い物が吸い込まれる様だと言われています。清らかで神秘的な風景です」
……悪い物が吸い込まれるって、人まるごと吸い込まれるヤツ?
あれだ。
自殺の名所的なヤツだ。
奥まった場所、滝、滝壺。
事件も起きそうなヤツだ。
パワースポットで御利益じゃなく、背後に影をくっつけて帰るパターンっぽいぞ?
心霊ツアーじゃないのだろうか……?
「こちらはかなりの御利益があるそうで、前回参加された方のなかには、宝くじの高額当選をされた方がいるとかいないとか……」
……かけてもいい。
絶対に、いない。
……が、周りの目の色が変わったなぁ。
人間の欲は怖いもんだわ。
「ここで自由時間となりますが、滝に近寄ったり、水に入ったりしない様にお願いします。普通に危険です」
普通に危険って説明あるの?
最近はそんな説明でOK出ちゃうの?
……まぁ入らないけども。
自由時間か。
少し散策してもいいかもしれないが……
いかんせん祟りがチラついて、大胆に散策へ乗り出せない。
「すいません……こちらは地元の方々も来られない神聖な場所だったりはないのでしょうか?そこを勝手に歩き回るのはどうなのでしょうか……?」
おぉ……自分と同じ事考えている人がいたよ!
添乗員さんに質問してる。
どれどれ、一緒に聞かせて貰おうか。
同じ考えの人間がワラワラ集まっていく。
……だよね。
みんな同じ事考えるよね。
「あっ、そうですよね?心配になりますよね。説明が不足して申し訳ありません。地元の方々なんですが、住んでいらっしゃる方々は、こちら側の山は大昔、御寺があった所だから、管理の人が来るまでは遠慮しようと言われていたそうです。特別な伝承とかは無かったそうなので、大丈夫ですよ」
そうなのか。
祟りとか不思議事件が起きていた訳でもないのか。
……いや、詳しくはわからないから、なんともいえないが。
「最近は地元の方々も、こちらを散策されているそうで、少し行った所に休憩できるスペースもありますよ」
……なら、大丈夫なのかな?
みんなも納得した様子で、バラバラと散っていった。
せっかく来たからな。
滝に近寄らずとも、マイナスイオンは吸って帰ろうか。
散策をしようとして、1回止まる。
こちら側を歩いて行くと、さっき先に行ったカップルがいるはず。
歩くスピードは、こちらが上。
絶対に追い付いてしまう。
女性グループの方も同じ。
1人ボッチのオジサンが背後から来たら、どう思うだろうか?
ちょっとしたホラー体験になりはしないだろうか?
……それが自分の心に耐えられる範囲ならいいのだが。
多分、無理。
ガラスのオジサンハートが割れてしまう。
もう少し、滝を眺めてから行く事にしよう。
と。
会社の後輩から誘われていた。
忙しい時期も過ぎ、若干落ち着いて来たから、せっかくなので行ってみよう!
張り切って予約したものの、後輩は急な呼び出しで出張するはめになってしまったのだ。
『……パワースポットで御利益得てないからかなぁ……この出張……』
ぶつぶつと言い出したから、次の機会にしようかと話をするが、
『前金返って来ないんですよ……せめて先輩だけでも御利益貰って来てくださいよぉ……』
メソメソし出した後輩。
彼女が欲しいだのなんだのかんだの。
了解したから、メソメソグチグチを止めてくれ……また後輩の愚痴飲みに付き合わされるなんて、たまったもんじゃない。
何とか後輩を浮上させといた。
……けどな、最初も男2人の参加で肩身狭いなぁ~って考えてたけども。
実際、男1人で参加してみると……
ポツン
……浮いている。
オッサンが1人。
周りから、かなりの勢いで浮いているのだ。
ほぼ女性同士のグループかペア……カップルもチラホラいる中に、ボッチのオジサン。
涙が出そうだ。
……色々な事に負けないパワーが欲しい所です。
出来れば、即効性のある物が嬉しいです。
時折、こちらに向かってヒソヒソクスクスされると、地味に精神が削られて行くのだが……
パワースポットの御利益は、これを乗り越えたら得られるのだろうか?
かなりの苦行である。
「御次に向かいますのは、【聖龍の滝】です。【聖龍】の【聖】はヒジリ、セイントの字を書きます」
……聞いた事のない滝だ。
【青龍の滝】なら知っているんだが?
そちらの滝は知らない。
新しく造られた名称なのだろうか?
「こちらの滝は、地元でもほとんど知られておらず、近年荒廃する寺院を復元した事で発見されたと言うお話です」
地元の人達が知らないって、凄い話じゃないのか?
廃れてしまった寺の敷地でも、普通は入ってしまうもんだろ?
……いや、神域として入らない事もあるか?
もしくは祟り系。
そこ、入っていいのか?
「ひっそりと奥まった場所となりますが、澄んだ空気に滝から響く音は心が洗われ、滝壺は光の加減か青く、悪い物が吸い込まれる様だと言われています。清らかで神秘的な風景です」
……悪い物が吸い込まれるって、人まるごと吸い込まれるヤツ?
あれだ。
自殺の名所的なヤツだ。
奥まった場所、滝、滝壺。
事件も起きそうなヤツだ。
パワースポットで御利益じゃなく、背後に影をくっつけて帰るパターンっぽいぞ?
心霊ツアーじゃないのだろうか……?
「こちらはかなりの御利益があるそうで、前回参加された方のなかには、宝くじの高額当選をされた方がいるとかいないとか……」
……かけてもいい。
絶対に、いない。
……が、周りの目の色が変わったなぁ。
人間の欲は怖いもんだわ。
「ここで自由時間となりますが、滝に近寄ったり、水に入ったりしない様にお願いします。普通に危険です」
普通に危険って説明あるの?
最近はそんな説明でOK出ちゃうの?
……まぁ入らないけども。
自由時間か。
少し散策してもいいかもしれないが……
いかんせん祟りがチラついて、大胆に散策へ乗り出せない。
「すいません……こちらは地元の方々も来られない神聖な場所だったりはないのでしょうか?そこを勝手に歩き回るのはどうなのでしょうか……?」
おぉ……自分と同じ事考えている人がいたよ!
添乗員さんに質問してる。
どれどれ、一緒に聞かせて貰おうか。
同じ考えの人間がワラワラ集まっていく。
……だよね。
みんな同じ事考えるよね。
「あっ、そうですよね?心配になりますよね。説明が不足して申し訳ありません。地元の方々なんですが、住んでいらっしゃる方々は、こちら側の山は大昔、御寺があった所だから、管理の人が来るまでは遠慮しようと言われていたそうです。特別な伝承とかは無かったそうなので、大丈夫ですよ」
そうなのか。
祟りとか不思議事件が起きていた訳でもないのか。
……いや、詳しくはわからないから、なんともいえないが。
「最近は地元の方々も、こちらを散策されているそうで、少し行った所に休憩できるスペースもありますよ」
……なら、大丈夫なのかな?
みんなも納得した様子で、バラバラと散っていった。
せっかく来たからな。
滝に近寄らずとも、マイナスイオンは吸って帰ろうか。
散策をしようとして、1回止まる。
こちら側を歩いて行くと、さっき先に行ったカップルがいるはず。
歩くスピードは、こちらが上。
絶対に追い付いてしまう。
女性グループの方も同じ。
1人ボッチのオジサンが背後から来たら、どう思うだろうか?
ちょっとしたホラー体験になりはしないだろうか?
……それが自分の心に耐えられる範囲ならいいのだが。
多分、無理。
ガラスのオジサンハートが割れてしまう。
もう少し、滝を眺めてから行く事にしよう。
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