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ふざけたハンドルネームのままBLゲームの世界に転生してしまった話
49 クルスの独白
しおりを挟むクルスは一体、何を言っているんだ……?
唖然とする俺を傍目に、クルスは真っ黒なピーコートを脱ぐと、そこから攻略ガイドを取り出した。そして俺の隣に座ると、ほとんど見る機会のなかったジェームスの攻略ページを開いて、右下のほうを指差した。
「ここ、エドワードの隣にいる奴、いるだろ」
「うん?」
そのページには、俺…というか主人公がタキシード姿のジェームスにお姫様抱っこされている端っこに、ギャラリーのうちの一人としてエドワードと、彼に肩を抱かれている少し綺麗めのモブが入り込んでいる画像があった。
「こいつがどうかしたの?」
「……そいつ、生徒会の書記。
寮のエドワードの部屋の前でチョコレート持って待ってたから、別邸に連れて行って……で、くっつけてきた」
「えええぇぇ⁈‼︎」
青天の霹靂だった。
「なんでそんな事したんだ⁉︎……それじゃあ、クルスが今までエドワードの為に頑張ってきた事が全部、水の泡じゃないか……」
そして俺がしてきた事も、全部パァ……? なんでだよ。
俺が呆然として言葉を失っていると、クルスがゆっくりと語り始めた。
「初めはもちろん、エドワードと両想いになりたい一心で必死だった。
でも、エドワードが僕のことを見てくれるようになったのは、この攻略ガイドに基づいて、与えられた選択肢から最適な解答を選んでいたからであって……。
好感度が上がってなかった理由はわかっていた。途中から、お前のいない所では攻略ガイドの最適解ではなく、僕自身の意思で回答をしていたんだ。そしたら、……期待外れだという顔をされてしまって。
エドワードが僕に微笑んでくれるようになったのは、僕自身の事を好きになって貰えたからではなくて……僕がエドワードにとって、都合の良い答えをくれる存在だったからなんだと察してしまった。
……あんなに好きだったはずなのにな。
いつの間にか、あの日エドワードに恋をした瞬間の自分にずっと呪いを掛け続けられていたんじゃないかと思うくらい、気持ちが冷めてしまっていた。
言うのが遅くなって、ごめん」
そう言って、俺に頭を下げた。
「なんだ……そうだったのか。
まあでも、好きじゃなくなった奴とあのページに載ってた事をするのはキツイよな」
俺は、クルスがガン見していた画像を思い出した。しかもエドワードは実は俺様なプレイをするようだしな。しつこいようだが、今一度繰り返す。俺様なプレイ。
「兎にも角にも、これで攻略対象は全員、めでたく誰かしらとくっついた訳だな?
これで一応、ゲームクリアって事でいいのかな? お疲れさま、クルス」
俺も、お疲れさま。
クルスの肩をぽん、と叩いて笑うと、クルスも微笑んだ。
「コノハ……ありがとう」
「こちらこそ、話してくれてありがと。
じゃあ俺、帰るわ」
そう言ってベッドから立ちあがろうとすると、クルスに腕を掴まれた。
「待ってくれ……他にもまだ、話していない事があるんだ」
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