29 / 63
ふざけたハンドルネームのままBLゲームの世界に転生してしまった話
29 頼みの綱はエドワード
しおりを挟むヘラルドルートは、どちらも俺にとって最悪のものだった。ハッピーエンドの方が足の腱を切られていないだけましな気がしなくもないが、地獄と大地獄の差、と言ったところだろうか。いずれも同じ、地獄には変わりないのだ。
これはもしかして、エドワードのバッドエンドの方がマシなんじゃね?と思い、エドワードルートの攻略ページを開いてみた。
攻略ガイドによると、エドワードルートのバッドエンドは、
「……エドワードに愛想を尽かされた主人公が、学園を放校処分となり、元いた修道院に出戻りする……」
……とあった。
あれ、ヘラルドのハッピーエンドより、こっちのバッドエンドの方が良くないか?と思ったが、
『そして、修道院の司祭と修道士達の慰み者にされる毎日を送るのだった』
という何とも不穏な一文で締めくくられていた。
エドワード……あんなに優しげな王子様ヅラしといて、正規のハッピーエンドではクルスを娼館送りにするわ、バッドエンドでは俺を修道院の奴らの慰み者にするわで、見限った奴らに対しては随分と血も涙もない男である。
トビーとの友情エンドルートに入れる可能性が残っていれば、ここまで思い悩むことはなかったのに。トビーが攻略対象から外れてしまったことで、一番重要な安全パイがなくなってしまった。
こうなったら、何が何でもエドワードの目をクルスに向けさせて、二人にゴールインしてもらうしかない。
「……というわけで、クルスは今まで以上にエドワードへの自己アピールを頑張ってください」
「うん……頑張ってはいるんだけど、毎回お前の名前を呼んで回答されるもんだから、なかなか心が抉られるよ……」
昼休み、いつものように空き教室で食事を摂りながら今後の立ち回りについてクルスと話し合っていると、突然、教室のドアがガラッと開いた。
「あれ……君達、こんな所で食べていたのかい?」
……エドワードと想定外のエンカウントを果たしてしまった。
「あ、ああ。俺が人の多いところ、苦手でさ」
俺は咄嗟の思いつきで、エドワードに弁明した。
まあ、人の多いところよりは少ないところの方が好きだから、嘘ではないか。
「そうか。……隣、いいかな?」
こちらに「いやだ」と答えさせる隙もなく、エドワードは俺の隣に座った。
すると突然、エドワードはキラキラエフェクトを身に纏いながら、俺に出題してきた。
あれ、もしかして選択肢……出るのか?
エドワード・ブルジャイン
『コノハ・ゲー、明日の生徒会にはいつもと違うネクタイをしていこうと思うんだけど、どれがいいかな?』
→さくらんぼ柄のがいいと思う
バナナ柄のがいいと思う
前方後円墳柄のがいいと思う
そう言って、どこから出してきたのか、三本のネクタイを見せてきた。
……至極どうでもいい質問だった。多分どれを選んでも大丈夫なやつだ。
俺がふつうに学園指定のネクタイ着けていけよ、と思っていると、クルスがエドワードに向かって優しい笑みを浮かべながら、ネクタイを指差して答えた。
「僕は……この、バナナ柄のがいいと思う。
エドワードの綺麗な髪の色にそっくりだ」
エドワードは相変わらず無反応なままだ。
やはり俺がクルスのお気持ち代弁者にならないといけないのかと思って口を開いた瞬間、
『ありがとう。では明日の生徒会にはこれを着けてこう。
選んでくれて、ありがとう。……クルス』
「‼︎」
エドワードが、クルスに返事をした。好感度ゲージもしっかり反応している。
「……うん、絶対似合うよ」
クルスが嬉しそうに頬を紅潮させて、エドワードに微笑んだ。
ついにクルスが、エドワードのプレイヤーとして認識された瞬間だった。
期待していたバグが、本格的に起こり始めた。
エドワード、頼むぞ。
クルスとハッピーエンドを迎えて、一刻も早く、このふざけたゲームを終わらせてくれ。
そして、攻略対象がエドワード(とヘラルド……)に絞られたところで、聖夜祭というクリスマスイベントに向けた準備が始まった。
44
お気に入りに追加
128
あなたにおすすめの小説
平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜
ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。
王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています!
※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。
※現在連載中止中で、途中までしかないです。
モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話
みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。
数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
王道学園なのに、王道じゃない!!
主食は、blです。
BL
今作品の主人公、レイは6歳の時に自身の前世が、陰キャの腐男子だったことを思い出す。
レイは、自身のいる世界が前世、ハマりにハマっていた『転校生は愛され優等生.ᐟ.ᐟ』の世界だと気付き、腐男子として、美形×転校生のBのLを見て楽しもうと思っていたが…
俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き
toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった!
※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。
pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/100148872
鈍感モブは俺様主人公に溺愛される?
桃栗
BL
地味なモブがカーストトップに溺愛される、ただそれだけの話。
前作がなかなか進まないので、とりあえずリハビリ的に書きました。
ほんの少しの間お付き合い下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる