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ふざけたハンドルネームのままBLゲームの世界に転生してしまった話
7 選択をミスった結果
しおりを挟むまたこの中から選ばないといけないのか……。
俺はもう一度、選択肢に目を通した。
→手取り足取り教えて下さい
腰取り教えて下さい♡
先生に治してもらいたいです
真ん中の選択肢は論外だ。
サクッと帰れそうなのは……1番下か?
治してもらったらお礼を言って、ハイさよならできるもんな。これにしよう。
「先生に、治してもらいたいっす」
よし言ったぞ。選んでやったんだから早く治せよ。(上から目線)
ヘンリー・スティーマ
『僕に、ですか。……全く、仕方のない子ですね』
保険医の顔の左横側にも表示されているハートのゲージ、何だかさっきよりも赤いやつの増え幅が多いような……?
そして例の字幕付き付箋とともにハートが消えると、奴の周りに風が起こりはじめ、その風……かどうかはわからんが、とにかく風が傷口を優しく撫でた。
おお、こいつは風魔法を使って治療を行うのか、と感心していると、
「‼︎ ‼︎ 何してるんすか‼︎」
突然、保険医が右手の傷口にキスをしやがった。
「何って、君が僕に治してくれって言ったんじゃないですか……特別ですよ?」
保険医はおちょくってんのか、こちらを一瞥すると傷口にリップ音を立てやがった。
先生に治してもらうって、こういう事だったのか……さっきペロペロを回避したかと思ったら、こっちで地雷を踏むとは(泣)
確かに傷は塞がってるんだけど、きもい。というかこれ、風起こした意味あんの……?
「いや、普通に治して下さい……っ」
奴の唇が別の傷口へと移動し、ぞわぞわとした悪寒が走る。俺の右腕には既に、鳥肌が立ちまくっていた。
今すぐ手を引っ込めたくて仕方がないのに、妙にこそばゆくて力が入らない。
どうにかしてコイツから離れられないだろうか、少ない頭をフル回転させる。
――そういや俺、光魔法が使えるんだよな?
俺が光魔法を使うとしたら……。
俺は咄嗟に左手で前髪を捲り上げると、いちかばちかで叫んだ。
「ハゲビーム‼︎‼︎」
…………沈黙が、流れた。
なんか、保険医もポカンとした顔でこっち見てるし。
渾身のハゲビーム、出ませんでしたよ。
と、思った瞬間
「み゙っ‼︎」
俺のおでこから強烈な光が出現して、保険医の顔面に直撃した。その拍子に奴が握っていた右手が解放されたので、すかさず引っ込めて逃げた。後ろの方から「目がァ」という、どこかのアニメ映画みたいなセリフが聞こえてきたような気がするけど、多分気のせいだ。
本当はダメなのは百も承知で廊下を走っていくと、周りにいる生徒から、痛いほどの驚きと好奇の視線を向けられた。
この世界では廊下を走るのって、そんなにギルティなの……?
逃走中?の身としては今更走るのをやめるわけにもいかず、少し先に空き教室っぽいのを見つけたので、俺はそこに避難した。
薄暗い教室に入ると、目の前がパァッと明るくなった。
そっか、俺のデコ光ったままだったのか!
廊下であんなに注目を集めていた理由が、漸く今になってわかった。恥ずかしい。
「えーと、おでこー?
そろそろ光るのやめてもらっていいよ」
適当に声をかけると、教室が薄暗い状態に戻った。どうやら発光は無事おさまったようだった。
俺は教室のドアを閉めると、そのままドアにもたれ掛かった。
はあ……、まだ転生?してから体感で一時間も経ってないはずなのに、随分と疲れた。やっと一人になれた事だし、少し休んでこう。
大きく息をついて、視線を落とすと――全身ボロボロの男が倒れているのが、視界に入ってきてしまった。
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