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日乃本 義に手を出すな

拾捌

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「……は?」

 柾彦は、思わず声を漏らした。
 会場も同様に、日乃本ひのもと ただしの質問の意図が分からず、視線こそ例のスイッチに注がれているが、皆、ぽかんと口を開けた。
 
「そうだな…三択にしようかな?」
 日乃本 義は柾彦達に構う事なく、話を続けた。
 
「では、まず一番。
 君たちの上にあるシャンデリアがー、――全部、下に落ちる。
 この高さから一気に落ちたら……どうなるかな?」

 柾彦の全身が、一気に凍り付く。

「おい、それ……まさか、起爆スイッチじゃないだろうな⁉︎」

 柾彦が大声でただすと、会場には刹那せつなの沈黙が流れた。
 柾彦の言葉によって自分の置かれた状況を察した令嬢達は、次々と耳をつんざくような悲鳴を上げ、そのほとんどが一目散に会場から逃げ去っていった。

「…あれ、全部聞いていかないの?車代持って帰るの忘れないでね。
 それじゃあ、残った人達で続けようか。次は、二番ね。
 君たちの居たテーブルのどれか一つに、爆発物が仕掛けてあった気がするんだけど、どこだったかな…?
 
 ここまで言えば……後は、わかるね?」


 ――おい、この手を離してくれよ。
 俺も、帰りたいよ。


 やっぱり、起爆スイッチじゃないか。
 柾彦は、日乃本 義に握られた手を振りほどこうとしたが、力の差がありすぎるせいか、びくともしない。
 残っていた数人の令嬢達は、皆ガタガタと顎を震わせ、日乃本 義の狂気に声を失っていた。
 なりふり構わず会場を後にする令嬢、腰に力が入らなくなってしまい地面を這いながら逃げる令嬢、そのまま失神し、再び屈強な皇室職員と思しき男達に引き摺られて会場から消える令嬢……。
 
 こうして、すべての令嬢が会場から消えた。

 日乃本 義がぐりん、と必死に手を振り解こうとする柾彦の方に顔を向け、
「みんな、いなくなっちゃったね!」
 と、屈託のない笑顔で言い放った。
 
「いなくなっちゃったね、じゃねえよ。さっさとこの手を離してくれ‼︎」
「なんで?…さっき繋いだままでいてくれるって、約束したよね?」
 
 繋いでいた手に、更に力が込められる。
 
 日乃本 義の口許には笑みが貼り付いたままだが、目が笑っていない。絶対零度のような冷たい瞳に、柾彦の喉がひゅっ、と鳴った。

「…じゃあ、正解は柾彦にだけ教えてあげよう」
「おい、日乃本ひのもと ただし……やめろ、」
 柾彦は辛うじて声をあげたが、日乃本 義は、構わずスイッチに手を掛けた。そして、

「やめろって、言ってんだろォ‼︎‼︎」
 
 柾彦の叫びも虚しく、カチリと、ボタンを押す無機質な音が会場に響いた。

 
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