この恋は叶わない

黒猫鈴

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「…」

「なぁ、機嫌なおしてくれよ」

いつものベンチ。無言でサンドイッチを食べる

「…昨日は悪かった、このとーり!」

何故か隣にはカインがいた。
昨日ので気まずくないのだろうか…

私は大きなため息して…

「…わかった、許す」

するとカインが嬉しそうに瞳を輝かして

「サンキュー!」

抱きついてきた。

それにドキドキするけど、私は何もない気をしてカインを離す。

「…その、昨日のこと…忘れる」

「…」

昨日のこと忘れるとは…私がカインのこと好きだということ。
それを忘れるということは…今までの関係で居られると共に…カインから好きではないと言われたようなもので。

それはとても辛いけど…覚悟していたことだ…。
だけど、

「…貴方なんか好きじゃない…」

最後の抵抗。
カインなんか好きじゃないと…抵抗。

「カインなんて嫌いよ…」

だって…そう言わないと…好きじゃないと言わないと…苦しいの。
…それに惨めじゃない…
…カインが好きだったからこそ…抵抗くらいさせて


「ああ…」
カインは分かってくれたみたいで頭を撫でてくれた。

「ごめんな」

ううんいいの、わかってたもの。

「…謝らないで……私こそ…ごめんなさい」

そっと、カインの頬を触り微笑んだ

まだ気持ちの整理ができなくて…好きでいるかもしれないけど…許してね。

「カイン…ごめんなさい」

今だけは、触れさせて。
これで、止めるから…

「カイン…」

ポロッと涙が出た。

「っ」

目を丸くするカイン。
ごめん…すぐ止めるから。
ごめんなさい…。

震える唇を噛み、でもカインから目を逸らしはしない。
これで最後だから…

「ごめんね…」
「っ…あ…かり」

カインが私に手を伸ばしかけた…時

「っ…カイン!」

怒声と走ってくる足音。
キンキン、とした金切り声が響く。

この声主はわかる。

「っ」

嬉しそうなカインを見てから声の方向を見る。カインの恋人と…何故か後ろにシャインがいた。
シャインは攻略候補の一人。青い髪、眼鏡で毒舌なキャラクター。
彼も役員の一人で、カインと仲の良い有人かんけいだった筈。
何故一緒にいるかと思ったけど、彼女の臨時彼氏のことを思い出して、そうか室にが臨時彼氏だったんだ、と1人納得した。

じっとシャインを見ていると彼に睨まれた。
どうやらシャインは私が嫌いみたい。

そりゃ見ず知らずの女がいきなり大切なカインに気に入られ…しかも現状の浮気相手だ…。
…嫌われたって仕方ない。

私はシャインから目線を彼女へと移した。

彼女はわかりやすい。
感情が…隠せない性格をしているから。
だからみんなに愛されるんだ…。
綺麗だし…素敵だもの。主人公補正もあるかもしれないけれど。

そんな彼女が怒っているのは勿論、カインが浮気をしていたと知ったから。

カインを思いっきり睨んでいる。
当の本人、カインはその反応に嬉しくてたまらない様子。

そりゃ嫉妬してほしくて、こんな事までしたんだから…嬉しいに決まってるよね。

「会いたかった!」

カインが言い彼女に駆け寄るが、彼女の様子がおかしかった。
カインを気にせず、私の方へ歩いてくる。

「 この!最低!泥棒女!許さない!」

叫んだ。
と、共に彼女がポケットから杖。怒りに任せ杖を振ると、大きな旋風を出した。
彼女は主人公だ。主人公は聖女という設定上魔法力に秀でていたのを思い出す。
彼女は躊躇なくそれを私へ向けた。

それに比べて私は魔力なんてものは全くない。魔法も避ける反射神経もなく、

「っ」

旋風は私の顔、身体に当たり大きな傷を付け、同時に強い風に巻き上げられたのか何処からか飛んできた石が頭を直撃し一瞬目の前が真っ白になる。

石がカランと床に落ちた。
遅れ、私の血も地面に滴る。

痛い…。

でも私は立っていた。
頭を抑えながら、フラフラしながら、でも立っていた。

よかった、死んでない…。

私は安心したように溜め息すると

「おい!大丈夫かっ!」

カインの悲痛な声。

「わ、私のカインに手を出したから!だから、罰なんだからっ!謝らないわ!」

血を流す私に驚いたのか彼女が叫びながら身を翻して、その場から去って行く。
彼女…はとても傷ついていた…。それはそうだ。
彼女からしたら私は大好きな恋人を取った悪女のような女。

私が、悪い。

こんなことしなければ…カインを好きになって、この世界に来なければ、あんなに…彼女が傷つくこと無かったのに…

ごめん…ね

心中謝る。


「大丈夫か?!」

「来ないで!」

私は止めた
普段叫ばない私だからカインはびくりと止まった。

それを見てほっとする。

「…今すぐ彼女を追いかけて」
「っだが、おまえが」

なんて馬鹿…
私なんて気にしないで早く追いかければいいのに…

私なんて…どうでもいいから。

「私は大丈夫だから!早く追いかけて!彼女が悲しんでる!」

カインは扉を見たり、私に目を移したりしていたが…

「っわ、わかった」

頷いて彼女を追い掛けるように走って行った。

静まり返るベンチに残された私とシャイン。

「っ」

突然の頭の痛みにふらり、床に手をついた。

シャインはただそんな私を哀れそうに見ていた。
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