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閑話 闇の取引

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 雪が降り、風が吹く街の中を一人の少女が歩いている。そこは王都の路地。あらくれもの冒険者たちのたまり場となっている。こんなところに少女が迷い込もうものならすぐに冒険者たちの餌食になってしまうだろう。
 だが誰もその少女に近づこうとしない。少女はある建物の前で止まり扉を四回特殊なリズムで叩く。

「合言葉は?」

「闇は闇の中」

 すると扉が開き、少女は扉の中に消えてゆく。建物中は、見た目はただの民家だが、奥にある本棚の仕掛けを押すと本棚が移動し、階段が現れる。
 少女は一歩一歩階段を降りる。階段が繋がっている場所は王都の闇の一つ。元囚人を牢獄していた檻が広がっている。
 だがそれ以上にそこには大勢の人間が商売をしていた。俗いう闇市である。ここでは公には販売できない商品から賭け事に至るまで様々である。

「お~鬼の姉ちゃんじゃないか。ここに来るのは一週間ぶりか?」

「お久しぶり。肉切り(ミートスラッシャー)」

 ここではお互いに本名では呼ばずそれぞれについている通り名のようなもので呼び合う。少女話している小太りの男はどうやら少女知り合いの様でしばらく談笑していた。

「そうだわ。例の物はあるかしら?」

 小太りの男は思い出したかのように少女を目的の物がある所まで連れて行く。置かれていたのは上には白い布が被されていたわらで作ったバッグだった。
 少女は布を取り中身を確認する。

「これだけじゃあ足りないわ」

「は~? これだけ集めるのにどれだけ苦労したか。これ以上は流石に無理だぜ!」

 その言葉に少女の圧が跳ね上がる。小太りの男は体がぶるぶると震え始め、少女が耳元で何かを囁くと

「そ、それだけはやめくれ~」

「なら三日後までに倍の量を用意してくることね。報酬はその時に渡すわ」

 そして少女は闇市の暗闇の中に消えていった。それを見送る小太りの男は恐怖のあまり腰を抜かしてしまう。
 そして約束の三日後が来た。確かにそこには目的の物が約束通り倍用意されていた。少女は銀貨百枚と肉切り包丁を渡す。
 小太りの男は肉切り包丁を手に取り、それをまるで舐めまわすように見つめる。

「これが姉ちゃんの友達が作ったって言うどんな肉でも紙に見たいに切れるって言う包丁かい」

「そう。彼曰く予想以上にいいものが出来たそうよ」

 その言葉に小太りの男は薄気味悪く笑う。少女はまるで関係の無いように目的の物を手に持ち闇市を後にする。
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