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昼食を終えたら買い物を再開だ。残るはアクセサリーショップと魔道具店だ。まずはアクセサリーショップに向かってもらう。

アクセサリーショップはかなり流行っていて、男女問わず沢山の客が入っていた。おかげで居心地の悪い思いをせずに済んだ。

ここでも2人がかりで「どっちが似合う?」攻撃を何度も受け、必死に応戦した。良く頑張った俺。その結果、服よりもアクセサリーの方が時間がかかり、2時間近くをアクセサリーショップで過ごした。エレナはバングルを、エヴリンさんはネックレスをそれぞれ1つずつ購入した。銀製のシンプルなものだが銀貨2枚もしていた。

オンラインショップで現代のアクセサリーを買ってプレゼントしたら喜ぶだろうな、と思ったのだが、あまりにもオーバーテクノロジーになりかねないので自重しておくか。

最後に俺がお願いした魔道具屋に向かってもらう。見たいのは屋外で使えるコンロのような魔道具だ。これがあれば屋外で料理が出来る。アウトドア用のガソリンストーブやガスストーブもあるけど、いくらこちらの道具に見えるように偽装がかかっていても、万が一誰かに面白がって鑑定をかけられたりした時の事を考えたら面倒だからね。

後は明かりの魔道具だな。明るさの調節ができてランタンみたいに使える物が欲しい。野営の時だけでなく、安い宿に泊まった時も使えるだろう。

それから結界の魔道具だ。ウォルターがいれば大丈夫だと思うのだが、見張りなしで安眠するための保険みたいなもんだ。

最後に普通のマジックバッグ。これは食材の仕込みをするために欲しいのだ。熟成や漬け込みに時間が必要な食材はこちらに入れて管理したい。容量はそれほど大きくなくて良い。後はエレナに時間経過が遅くなるマジックバッグをプレゼントしてあげたいが、それは金額次第だな。

魔道具屋も大きくて立派だった。様々な物が置かれている。店員も数人いて商品の案内などをしている。手隙の店員を1人捕まえて、商品の案内を頼む。

コンロの魔道具は火口が1つの物は金貨5枚、2つの物は金貨10枚、火口が4つとオーブンがついた物が金貨40枚だった。

マスター級以上の冒険者なら安定して魔獣を狩る事ができる。ポルカ村とは違い買取額が大幅に高い。やはり需要と供給による者なのだろう。一角ウサギなら1羽で金貨3枚半、一角シカで金貨7枚、一角イノシシなら金貨8枚くらいの稼ぎになる。

パーティーを組んで討伐に当たれば、1日で2~3頭は狩れるはずだ。そうすれば最低でも1日で金貨7枚は稼げる。4~6人で組むパーティーが多いので、1日で1人金貨1枚以上稼げるのだ。そう考えれば決して高い金額ではないだろう。

同様に、灯油ランプのような形をした魔道具は光る部分が1つで小さい物で金貨2枚、中くらいの物で金貨5枚、大型の物で金貨10枚だった。コンロよりかなり安い事に驚いた。

結界の魔道具は動物避けの物が金貨5枚、低級魔獣避けが金貨20枚、中級魔獣避けが金貨50枚だった。これは納得かな。中級魔獣まで防げる物があるとは思わなかったけど、これは良い物だ。

マジックバッグは容量によって値段が変わるようで、馬車2台分の容量で金貨30枚、馬車10台分の容量で金貨100枚、馬車40台分の物は金貨500枚だった。

マスター級以上の冒険者なら、最低でもパーティーで1つくらいは持っているそうだ。持ち帰る獲物の数が大幅に変わるからね。稼ぐための必需品なのだろう。

ちなみに時間経過を遅らせる魔法をかけた物もあるが、経過時間が1/2になる物はそれぞれの価格の2倍、経過時間が1/5になる物はそれぞれの価格の5倍、経過時間が1/10になる物はそれぞれの価格の10倍になるのだそうだ。

この辺はダンジョンをメインに活躍する冒険者が好んで買うらしい。持ち込む飲食物も、持ち帰る獲物も、時間経過を遅らせる事ができればそれだけ奥に進めるし、獲物も数多く狩れると言うことだ。

ここまで案内してもらって、目星の商品を試しに触らせてもらった時に問題が発覚した。俺は魔力を操れないので、魔道具を扱うことができなかったのだ。どの魔道具も起動させる時にごく少量の魔力を流さなければいけないのだが、俺にはそれができなかったのだ。悲しすぎる。

ちなみにエレナは身体や物品の汚れを落とす清潔化(クリーン)や、一定時間自分の周囲5mくらいが見える程度の灯をともす灯明(ライト)、火を熾す時に焚き付けに火を点ける着火(ティンダー)、と言った生活魔法と呼ばれる簡単な魔法は使えるそうで、どの魔道具も問題なく使えていた。ちくせう。

唯一マジックバッグだけは魔力なしで使えるので、仕方なく馬車2台分で時間経過は普通の物を1つと、馬車2台分で時間経過が1/10になる物を1つ、馬車10台分で経過時間が1/10の物を1つ購入した。時間経過が普通の物は俺が使うためだが、時間経過1/10の物はエレナにプレゼントするつもりだ。獲物や採取物と自分の荷物を分けるため2つ購入した。馬車10台分の物は大型のヒップバッグ型、馬車2台分の物は小さめのウエストポーチ型だ。俺の物もウエストポーチ型にした。

ついでに2口のコンロと、中型のランプ、中級魔獣避けも買って、エレナへプレゼントするためのウエストポーチ型の時間経過が1/10のマジックバッグに入れておく。初めて同じ職業になった仲間へのエールのような物だ。他意はない。ないったらない。

エレナとエヴリンさんの2人が夢中で商品をあれこれ見ている隙に、冒険者証を水晶玉にかざして会計を済ませてしまい、収納へしまう。これ、どんな仕組みになってるのか知らんけど面白いわぁ。この世界、収納持ちでもそれほど容量が大きくない者はマジックバッグを併用するのが当たり前のようで、店員にも驚かれなかった。

「魔道具を使うことができなくて残念です。お2人も付き合わせてしまって申し訳ありませんでした。時間を無駄にしてしまいましたね。」

2人にそう声をかけて詫びる。

「そんな、気にしなくていいですよ。魔道具に触ったのが初めてなんですからしょうがないですよ。」

「そうですよ。それに、私たちの方がお店の数も時間もいっぱい付き合っていただいてるんですから。」

2人が笑顔でそう言ってくれた。ありがたい。

「そう言ってもらえるとありがたいです。では、もう一軒だけお願いできますか?先日飲んだコーヒーの味が忘れられないんです。私がご馳走しますので、ぜひお付き合いください。」

そう言うとエレナは嬉しそうに頷いたが、エヴリンさんは顔を赤くして俯いてしまった。ああ、この間やらかしたのを思い出しちゃったのね(笑)。

「ではお2人とも、行きましょうか。さあ、馬車に乗りましょう。」

2人に声をかけて一緒に馬車へと向かった。


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