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しおりを挟むギルドが用意してくれた馬車に乗り宿へ向かう。今日は色々あったのに、エレナはまだまだ元気そうだ。
ギルドマスターの計らいで、明日はエヴリンさんの案内で街を観光する事になった。ギルドでチャーターした馬車も出してもらえるし、カタリナさんからの提案で、今回の招集に対する報酬の中から棒銀貨5枚分の前払いをしてもらえるそうだ。さすがカタリナさん、気配り上手です。
俺は遠慮するつもりだったのだが、何故かエレナが一緒に来て欲しいと懇願するので一緒に行く事にした。荷物持ち決定かな?(笑)。
宿に着き馬車から降りると、明日は8時に迎えにくるとの事だった。それなら朝食は6時で大丈夫だな。御者さんに礼を言って宿に入る。
「良ければ今日の夕食も私の部屋でご一緒にどうですか?」
歩きながらエレナに告げると嬉しそうに頷いた。
「ぜひ!お願いします!嬉しい!」
満面の笑みだ。そんなに喜ばれると照れるわ。
フロントで鍵を受け取りながら食事を頼む。
「エレナ、先にお風呂に入りたいでしょう?食事は8時で大丈夫ですか?」
そう尋ねると嬉しそうに頷く。
「夕食は8時にお願いします。私の部屋で一緒に食べますので、料理は私の部屋に運んでください。私の食事にはエールの小樽を、彼女の食事には果汁のジュースを一緒にお願いします。それと、鹿の魔獣が加わりましたので、鹿の魔獣の餌として生のニンジンとキュウリを10本ずつ追加してください。水もお願いします。」
そう注文するとフロントマンは恭しく頷いた。
「かしこまりました。他に何かご注文はございませんか?」
フロントマンに尋ねられる。エレナを見るとプルプルと首を横に振る。
「いいえ、これだけです。よろしくお願いします。」
そう言って一礼し、皆んなで階段を上がって部屋に入る。
俺はすぐに風呂に湯を張り、ついでに脱衣所に着替えを出しておく。リビングに戻り、装備を外して収納し楽な格好になる。とりあえず一息ついて水を飲む。ウォルターにもタップリと水を飲ませてやる。
風呂の湯が満たされたのでウォルターと一緒に風呂に入る。ウォルターを綺麗に洗い、湯船で温まらせている間に自分の身体を洗う。ウォルターを上がらせて水を与え、自分も湯船に浸かって温まりながら身体をほぐす。ああ、気持ち良い。
しっかりと身体をほぐして風呂から上がり、栓を抜いてお湯を抜く。ついでに収納内にある使った道具たちの汚れだけを取り出し排水口に流す。身体を拭いて着替え、洗濯物を袋に入れる。リビングに戻り水を飲む。美味いねぇ。
ウォルターと戯れながらノンビリしているとベルが鳴る。ドアを開けるとエレナとイスラが立っていた。風呂上がりだからか貫頭衣のような服を着ている。広く開いた襟刳から見える鎖骨と、短い着丈のせいでお膝が見えてるのが劣情をそそる。髪の毛もツインテールではなくポニーテールにしている。うあ、ポニーテールも可愛いぜ。
「いらっしゃい。ポニーテールも可愛いですね。どうぞお入りください。」
そう声をかけると真っ赤になった。そんな反応されたら変に意識しちまいそうだ。やべ、何だか俺も顔が熱いや。
エレナを招き入れて椅子を引いて座らせる。水でも出そうかと思ったところでベルが鳴る。夕食が届いたようだ。
ボーイたちを招き入れテーブルをセッティングして貰う。セッティングが終わったところで洗濯物を渡して朝食と共に持って来てもらうようにお願いし、明日の朝食を6時に頼む。
「エレナ、朝食も一緒で良いですよね?」
と確認すると満面の笑みで頷いたので、朝食も2部屋分両方を俺の部屋に運んでもらうよう頼む。
ボーイたちが退室したので、すでに飲み物が注がれたグラスを持ち上げてエレナと乾杯する。
「エレナ、イスラと従魔契約を結べておめでとう。リリーと一緒に大事にしてあげてください。良き仲間を得られた今日という日に、乾杯。」
そう言ってグラスを差し出すと、頬を染めてグラスを打ち付けてきた。いちいち可愛いなおい。グラスのエールを一息に飲み干す。プハァッ!美味い!
「さあ、皆んなで一緒に食べましょう。いただきます。」
そう声をかけて食べ始める。今日もメインは肉と魚の2種、その他に数種類の副菜やサラダ、スープなどが並んでいる。もちろんパンは山盛りだ。サラダからワシワシと食べ進めていく。
ウォルターには子供のイノシシの肉と内臓、リリーにはキャベツの茎とニンジンとキュウリの野菜スティック、イスラには洗ったニンジンとキュウリ、半切りのレタス2個が用意されていた。従魔たちも夢中で食べ進めている。
エレナが考えるイスラとのコンビネーションと、第三者視点からのアドバイスなどを話しながら食事が進む。うむ、我ながら健全だねぇ。
料理が冷めきる前に全て食べ終えた。余ったパンとフルーツを収納する。エレナは幸せそうな顔をしている。
もっと幸せな顔を見たくて、小さな木椀に木の実とドライフルーツを全種類2匙ずつ入れ、蜂蜜をかけて混ぜ合わせて出してやったら、蕩けそうな笑顔を見せられて撃沈した。やべえ、暴れん棒将軍の登場だ。めっちゃ脈うってる。
異世界なんだからはっちゃけても良いはずなんだけど、変な貞操観念が働くのは日本人の性か。どうしても手を出す勇気が出ず、食休みも兼ねて一時間ほどお話しした後に解散する。
部屋に戻らせる時に、エレナがちょっと拗ねたように睨むような目をしていたのには気付かないフリをした。お互いにまだ未成年だからね。
「そう言うのって良くないと思うの。」と言うのは40代以上なら確実に反応するセリフだろう。アニメ化もされた某週間漫画誌に連載されていた漫画に出てくるヒロインキャラのお決まりのセリフだ。色々お世話になったなぁ(笑)。
悶々とした気持ちを押し殺しながら後片付けをしてワゴンを廊下に出し、寝室に向かうと毛布をかぶってウォルターと共に床で寝た。クールダウンにもちょうど良かった。
朝5時に目が覚めた。まず冷たい水を飲んで頭をシャキッとさせる。歯磨き洗顔トイレと収納物の汚れ落としを済ませる。ウォルターの糞と尿を溜めておいて畑の周りに撒いたら、動物とか低級魔獣避けにならないかな?などと考えながらポーションを作成する。
6時少し前にベルが鳴る。ドアを開けるとエレナたちが立っていた。髪は昨夜と違い、いつもの高い位置でのツインテールにしていた。インディゴブルーのジャンパースカートに白のブラウスを着ているのだが、肩紐が長くて前身頃が無く、ウエストが高い位置にあるので乳袋状態になっており、豊かなお胸がこれでもか!と主張していた。まるで一世を風靡した某ファミレスの制服のようだ。
思わず胸元に視線を下げてしまい、慌てて目をそらして顔の熱さをごまかしながら部屋へと招き入れたのだが、視界の片隅でエレナが小さくガッツポーズをしながら微笑むのが見えた。え、これってもしかして勝負かけられてる感じ?どうすべ?
イスを引いてエレナを座らせるとベルが鳴った。ドアを開けボーイたちを中に入れる。洗濯物を受け取って収納し、テーブルをセッティングしてもらう。
ボーイたちが出て行ったので食事を始める。まずは生野菜のサラダに塩と酢をかけてよく混ぜ合わせ、リエットを塗りつけたパンに挟んで食べる。うん、美味い。食べ終えたら次は酢漬けの魚をほぐして付け合わせの刻んだ野菜とよく混ぜ合わせ、バターを塗ったパンに挟んで食べる。うん、これも美味い。
エレナは生野菜のサラダを塩と酢でそのまま食べ、酢漬けの魚はほぐして付け合わせの刻んだ野菜と混ぜ合わせ、一口大に千切ったパンに乗せて食べていた。笑顔でとても美味しそうに食べている。女の子の美味しい顔って良いよね。
「エレナ、ヨーグルトに蜂蜜を入れてよく混ぜて、好きなフルーツを食べやすいように小さくカットして入れて食べると美味しいよ。」
エレナにそう声をかけると、すぐにリンゴ、梨、桃、バナナの皮を剥き、小さくカットして蜂蜜入りヨーグルトに入れて食べ始めた。頬に手を当てて幸せそうな笑顔だ。可愛いなんてもんじゃない。俺は今日1日保つのだろうか?
お腹がいっぱいになったところで余ったパンとフルーツを収納し、朝食と一緒に届いていたティーセットでお茶を入れる。もちろんエレナの分も一緒に淹れてあげた。
カップをエレナの前に置くと、モジモジしながら上目遣いで俺を見てくる。
「ね、ねえ、お願いがあるの。夕べ作ってくれた木の実とドライフルーツの蜂蜜がけをもう一度食べたいんだけど、作ってもらえないかな?ダメ?」
コテンと首を傾げて上目遣いに見つめられる。なんてあざと可愛いんだ!もちろん作りますよええ作らせてくださいこんちくしょう!
「そんなに可愛くお願いされたら断れないよ。すぐに作ってあげるからちょっと待ってね。」
そう声をかけて木椀に木の実とドライフルーツを入れ、朝食で出された蜂蜜をかけて混ぜ合わせて出してあげると、頬を染めながら幸せそうに食べていく。凄まじい破壊力に、俺の理性は砕け散りそうだ。
モーニングティーを楽しみながら今日の予定を話し合う。エレナは王都で流行りのアクセサリーショップと服屋さん、靴屋さんを見たいらしい。エヴリンさんにすでに案内をお願いしてあるのだそうだ。
「タカは行きたいところは無いの?私の行きたい所だけじゃなく、タカの行きたい所にも付き合うよ?」
エレナがそう言ってくれた。
「そうですね、私も服と靴を見たいです。それから魔道具を扱うお店があれば行ってみたいですね。」
そう言うとエレナがニッコリと笑みを浮かべる。
「じゃあタカの服と靴は私が選んであげるから、私の服と靴はタカが選んでね。もちろんアクセサリーもね。」
さらっとそんな事を宣う。いやいや、それじゃ彼氏彼女のデートでしょうが?俺たちまだお付き合いとかしてませんけど?
「私は父とウォルターと暮らしてきたので、そう言う事には疎いんですよ。エヴリンさんにお願いした方が良いんじゃありませんか?」
やんわりと断りを入れるが、エレナはなおも食い下がる。
「だったら尚更タカに選んでほしいわ。だって、何の予備知識もなく選んでもらえるなら、きっとそれが素晴らしい物だって事だもの。ね、お願い。」
ウルウルと瞳を潤ませながら上目遣いで迫ってくるエレナ。やめてくれ!オヂサンはこういうのに耐性無いんだよー!
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