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宿までの馬車の中では、コーヒーとお菓子の話で盛り上がった。

エヴリンさんがジャムの美味しかった順位を教えてくれた。一番美味しかったのはブルーベリーで、一番苦手だったのはオレンジのマーマレードっぽいジャムだったらしい。皮も刻んで果肉と一緒に煮るので、皮の苦味が出ているのが苦手だったようだ。

宿は北居住区の繁華街の中にあった。石造りで7階建ての立派な建物だった。

馬車から降りて2人と1匹で連れ立って歩き、入り口を潜ってフロントに向かう。エヴリンさんが書類を出してフロントマンに渡す。

「私、冒険者ギルドヴァレンティナ本部の職員エヴリンと申します。先日ギルドから予約したお部屋をご利用いただくお客様をお連れしましたので、宿泊手続きをお願いします。

宿泊者はこちらのタカさんと、タカさんの相棒のウォルターさんです。
宿泊期間は1週間の予定です。延長の場合は最終宿泊日の前日までにお知らせします。

支払いはギルドがしますので、チェックアウト時にこちらの書類に代金をご記入のうえサインしていただき、宿泊者をお迎えに上がったギルド職員にお渡しください。」

フロントマンに書類を渡しながら説明するエヴリンさん。お仕事はちゃんと出来るのね(笑)。

「こちらに宿泊させていただくタカと申します。こちらは私の相棒のウォルターです。ウォルターの食事で生肉や内臓を用意していただいたりとご迷惑をおかけしますが、どうぞよろしくお願いします。」

そう言って頭を下げる。フロントマンは和かに答える。

「ようこそお越しくださいました。お客様が快適に過ごせるよう取り計らわせていただくのは我々の仕事です。どうぞお気になさらずに。

早速ですがお部屋にご案内させていただいてもよろしいですか?」

もちろん異論はない。

「はい、よろしくお願いします。」

そう言うとフロントマンはベルを鳴らした。すぐにドアマンがやってくる。

「503へご案内を。」

フロントマンがドアマンに鍵を渡す。ドアマンが近づいて来て一礼する。

「お部屋へご案内いたします。お荷物はどちらですか?」

いつものやりとりだね。

「収納持ちなのでこのままお願いします。エヴリンさん、今日は本当にありがとうございました。また明日お会いしましょう。それでは失礼します。」

エヴリンさんに礼をしてドアマンの後ろについて歩き出す。

階段の所で振り向くと、エヴリンさんはそのまま見送ってくれていた。手を振ると笑顔で手を振り返してくれた。

彼女の見送りに暖かくなった心を抱きしめながら階段を登った。




案内された部屋はジニアルで泊まった部屋と同じ感じのスイートだった。間取りは待合室にリビング、寝室、セカンドルーム、トイレ、風呂だ。

酒棚があって自由に飲めるのも一緒だ。

ベッドも豪華で見るからにフカフカだった。これじゃあまた床で寝る事になるかな?(笑)。

一通りの説明を受け、夕食を7時に頼むとドアマンは出て行った。さあ、風呂だ。すぐに風呂に湯を張る。

ついでに盥や銃など、使った道具の汚れを取り出して排水口に捨てる。

リビングに戻り、装備類を外して収納し、風呂に入る前に水を飲む。もちろん盥を出してウォルターにも飲ませる。

少しリビングで寛ぎ時間を潰す。そろそろいい頃合いかな?

出した物を一旦収納して風呂へ向かう。

脱衣所で皮袋と着替えを出す。今日はジャケットとズボンも新しい物に替える。

脱いだ服は全て皮袋に入れる。ウォルターと一緒に風呂場に入る。

いつも通りウォルターを洗い、風呂に浸からせ、自分を洗い、ウォルターを上がらせて水を与え、自分が風呂に浸かる。

湯の中でのんびりと体をほぐす。

充分に体がほぐれて温まったらぬるめのシャワーを浴び、風呂の栓を抜いて上がる。

着替えて水を飲み、リビングで寛いでいるとベルが鳴った。夕食が届いたのだろう。

待合室を通り抜けてドアを開け、カートを押したボーイを出迎える。2人のボーイがテーブルの上に食事をセッティングしていく。

セッティングが終わったのを確認して、明日の朝食を6時に持ってきてくれるように頼み、一緒に洗濯サービスの利用をお願いして洗濯物を渡す。

朝食と一緒に持ってきてくれるように頼むと、ボーイたちは一礼して出て行った。

さあ、せっかくだから冷めないうちに食事にするか。

ウォルターの分は小鹿のようだ。皮を剥いだ丸の肉と、内臓がそれぞれ皿に盛られている。水も大きなボウルで2つ用意されている。

俺の分はなかなか豪華だ。

ヤマメの姿焼きが5尾、小魚の酢漬けの盛り合わせと刻んだ香味野菜の盛り合わせ、鳥のロースト、根菜の炒め物、マッシュポテト、ブロッコリーとニンジンを茹でた物、タマネギとセロリのチーズ焼き、ラタトゥイユのような野菜のトマト煮込み、アクアパッツァのような野菜と魚と貝のスープ、拍子切りの大根のサラダ、色々なフルーツを賽の目にカットして混ぜ合わせたフルーツサラダ、山盛りのパンだ。

酒棚から火酒とワイン、グラスを取り出してテーブルに置く。

「さあ食べようウォルター。いただきます。」

ウォルターに声をかけて食べ始める。

料理はどれもこれも美味かった。

前世ではイタリア料理が好物だったので、特にラタトゥイユもどきとアクアパッツァもどきは最高だった。おかげでワインを3本、火酒も2本も飲んでしまった(笑)。

普通なら二日酔い待った無しなのだろうが、全状態異常完全無効のおかげで二日酔い知らずだ(笑)。

存分に飲み食いし、余ったパンは収納する。パンがどんどん溜まっていくな。

食べ終えた食器類と飲み干した酒瓶をカートに乗せて、廊下に出しておく。

空いたテーブルの上でM45の弾込めだ。空のマガジンにポチポチと弾を詰め、収納する。

一通りやるべき事はやったはずだ。今日はもう寝よう。

俺はベッドから毛布を持って来て包まると、ウォルターに寄り添いながら床の上で横になった。


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