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しおりを挟む「さて、準備しますかね。」
俺は一言呟くと着替え始めた。でっぱった腹に邪魔されながら厚手の靴下を履くと、履き慣れたジーンズと襟付きトレーナーを身につける。
頑丈なケースに収められたタブレットPCを、これまた頑丈な生地で作られた大きなワンショルダーのバックパックに収め、バックパックのショルダーベルトに装着してあるポーチに二つ折りのゴツいガラケーを収める。
そして手慣れた調子でプラカゴに放り込んであった道具を身につけていく。
ジーンズの左ポケットと右の尻ポケットにクリップ付きのナイフを挿す。バイク用のオーバーパンツを履くと、その上にギッシリと中身が詰まった重たい大型ポーチが装着されているベルトを腰に巻く。
首には様々な物がぶら下がったチェーンと、何やら飾りのついた大ぶりなペンダントヘッドがついた紐をネックレスのように提げる。
首にマフラーを巻いて、消防服などにも使われる頑丈な生地で作られたフライトジャケットに袖を通し、先ほどの大きなワンショルダーのバックパックを背負うと、グローブが入ったヘルメットを手に取る。
「出来ることなら、海外のように拳銃もEDC出来りゃ良いのにな。」
誰ともなく呟き、玄関でバイク用のブーツを履いて外に出て鍵をかける。
雲ひとつない真っ青な空と燦々と照りつける太陽に迎えられ、じっとりと汗をかきはじめる。
「とっとと走り出さんと暑くてかなわんな。」
俺は思わず独り言ち、ヘルメットを玄関左手横にある二階への階段に置くと、玄関を出てすぐ右手横に止めてある3台の原付きバイクのうちの1台を引き出すために、鍵束の中からそのバイクの鍵を外そうとしていた時だった。
-ピシッ!-
空からガラスがひび割れるような音が響いたので驚いて上を見ると、真っ青な空にひび割れたガラスのように亀裂が入っていた。
「は?」
と呟く俺が見つめる目の前で亀裂が広がり、空にパックリと真っ黒な割れ目ができた。
そこから溢れ出た漆黒の闇が地上へと降りかかり、俺はその中に飲み込まれた。
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