夢の続き

結紀

文字の大きさ
上 下
1 / 1

夢の続き

しおりを挟む
朝、目が覚めると私はマグロになっていた。


布団の上でピチピチと跳ねていた。


これは一体⁉ピチピチドスンドスンと跳ねまわる私の音に何事かと兄が部屋へ覗きに来た。


おい、うるさいぞ!ってうわぁ!マグロ⁉


驚きたじろぐ兄に助けを求めるように近づく。


こ、これは……!


兄は急いでキッチンへ行き、すぐさま部屋へ駆け戻って来た。


その手には、包丁が握られていた。


正月にちょうどいい!


包丁を手にじりじりとこちらへにじみよる兄。


こんな所で捌かれてたまるかと、私は咄嗟に窓の近くまで飛び跳ねてそのまま外へ落ちた。


あぁ!マグローー!


飛び降りた先は硬い地面ではなく、海の中だった。


まさに文字通りの水を得た魚となった私は、マグロの如き泳ぎで遥か彼方へと消えた。




はっ!


目が覚めると私はいつものように布団の中に居た。


嫌な夢を見た気がする……。


今日は元旦か。初夢なのに縁起が悪い。


家族へ元旦の挨拶をしにキッチンへ向かうと、手に包丁を持った兄が立っていた。


キッチンは血の海のように真っ赤に染まっていた。


両親はテーブルの上でマグロのように横たわっていた。


これから海の彼方へまだ泳げるのかな。


そんな夢の続きの中へ私は逃げた。

しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...