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~であって。中学生と教師2
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わたしはその日、朝から体調が悪かった。
冬の寒さも本格的な12月。
おとといの夜から部屋干しして乾かなかったダウンジャケットを、昨日濡れたまま着てきていたのが悪かったのだろうか。
ストーブの効いた教室の中で、わたしは席に座ってズキズキと痛む頭痛に耐えながら、友達の葉月ちゃんと話をしていた。
「昨日のりくんと手、つないだんだ。」
葉月ちゃんがうれしそうに報告する。
のりくんは葉月ちゃんの彼氏で、付き合ってまだ日が浅いらしい。毎日のりくんののろけ話を聞かされる。
葉月ちゃんの話を流して聞きながら、好きになるってどういう感じなのだろうと想像する。
わたしは生まれて11年、人を恋愛的に好きになったことがないのかもしれない。
好きという感覚がどういうものなのか、わたしは未だにわからない。
「好きってどういう感じなの?」
と尋ねると、葉月ちゃんは右手を頬に添えて考えた。
「そうだなー、こう、胸がほんわかするっていうのかな。好きだなーって感じがする。あっ、でも、胸がドキドキもするかなー。」
葉月ちゃんは恥ずかしさをごまかすように、きゃははと小学生らしく笑う。
「そっか…。」
言って頬杖をつく。
言葉で説明されてもよくわからない。
わたしもいつかは彼氏が欲しいけれど、それが叶う日はそう近くないのかもしれない。
ふと先生の方に目をやると、黒板の横の先生机に座って――おそらくテストの丸付けをしているのだろう、ペンの紙をこする音が時々聞こえる。――女子生徒たちと談笑していた。
その姿を見て、ふいに胸の真ん中に棒を刺されたような重い痛みがはしった。
「どうしたの?」
不快感に顔をしかめたわたしに、葉月ちゃんが尋ねる。
「うーん、ちょっと頭が痛くて。」
わたしがおでこに手をやると、彼女は心配そうにこちらに目線を合わせた。
「大丈夫?先生呼ぼうか。」
「いや、大丈夫。」
先生と他の子たちの楽しい時間を邪魔したらだめだと、わたしは葉月ちゃんの申し出を拒否した。
「でも辛そうだよ。呼んでくるね。」
そう言うと、わたしの返答を聞かずにさっさと走って先生のところまで行ってしまう。
葉月ちゃんがわたしの体調が悪そうだと告げている声が聞こえる。
先生と先生の周りにいた女子生徒がこちらを向き、目が合うと先生は早足でわたしの席まで来る。
心臓が悲鳴をあげそうなほど脈打っている。
「大丈夫?熱は?」
そう言って、先生がわたしのおでこに手を伸ばしたとき。
わたしは、反射的に顔を背けてしまった。
気まずくて先生の顔は俯いたわたしには見えなかったし、いつもと違う心臓の鼓動が、わたしは熱のせいではない気がした。
「とりあえず、熱測ってみよう。」
気にしているのかいないのか、先生が教室の前の棚にしまっている体温計を取りに行く。
「…どうしたの?」
わたしの反応に疑問をもった葉月ちゃんが尋ねるが、
「…ううん、なんでもない。」
何と答えて良いのかわからず、わたしはそれ以上何も言うことができなかった。
熱は38度を超えていたので、先生にすぐに保健室に行くように指示される。
今日はもう帰っても良いとのことだったので、ランドセルは後で保健室まで葉月ちゃんが持ってきてくれることになった。
保健室に向かう道中、全身が熱くだるい感じはしたが、血管全体が動くようなドキドキは不思議とおさまっていた。
冬の寒さも本格的な12月。
おとといの夜から部屋干しして乾かなかったダウンジャケットを、昨日濡れたまま着てきていたのが悪かったのだろうか。
ストーブの効いた教室の中で、わたしは席に座ってズキズキと痛む頭痛に耐えながら、友達の葉月ちゃんと話をしていた。
「昨日のりくんと手、つないだんだ。」
葉月ちゃんがうれしそうに報告する。
のりくんは葉月ちゃんの彼氏で、付き合ってまだ日が浅いらしい。毎日のりくんののろけ話を聞かされる。
葉月ちゃんの話を流して聞きながら、好きになるってどういう感じなのだろうと想像する。
わたしは生まれて11年、人を恋愛的に好きになったことがないのかもしれない。
好きという感覚がどういうものなのか、わたしは未だにわからない。
「好きってどういう感じなの?」
と尋ねると、葉月ちゃんは右手を頬に添えて考えた。
「そうだなー、こう、胸がほんわかするっていうのかな。好きだなーって感じがする。あっ、でも、胸がドキドキもするかなー。」
葉月ちゃんは恥ずかしさをごまかすように、きゃははと小学生らしく笑う。
「そっか…。」
言って頬杖をつく。
言葉で説明されてもよくわからない。
わたしもいつかは彼氏が欲しいけれど、それが叶う日はそう近くないのかもしれない。
ふと先生の方に目をやると、黒板の横の先生机に座って――おそらくテストの丸付けをしているのだろう、ペンの紙をこする音が時々聞こえる。――女子生徒たちと談笑していた。
その姿を見て、ふいに胸の真ん中に棒を刺されたような重い痛みがはしった。
「どうしたの?」
不快感に顔をしかめたわたしに、葉月ちゃんが尋ねる。
「うーん、ちょっと頭が痛くて。」
わたしがおでこに手をやると、彼女は心配そうにこちらに目線を合わせた。
「大丈夫?先生呼ぼうか。」
「いや、大丈夫。」
先生と他の子たちの楽しい時間を邪魔したらだめだと、わたしは葉月ちゃんの申し出を拒否した。
「でも辛そうだよ。呼んでくるね。」
そう言うと、わたしの返答を聞かずにさっさと走って先生のところまで行ってしまう。
葉月ちゃんがわたしの体調が悪そうだと告げている声が聞こえる。
先生と先生の周りにいた女子生徒がこちらを向き、目が合うと先生は早足でわたしの席まで来る。
心臓が悲鳴をあげそうなほど脈打っている。
「大丈夫?熱は?」
そう言って、先生がわたしのおでこに手を伸ばしたとき。
わたしは、反射的に顔を背けてしまった。
気まずくて先生の顔は俯いたわたしには見えなかったし、いつもと違う心臓の鼓動が、わたしは熱のせいではない気がした。
「とりあえず、熱測ってみよう。」
気にしているのかいないのか、先生が教室の前の棚にしまっている体温計を取りに行く。
「…どうしたの?」
わたしの反応に疑問をもった葉月ちゃんが尋ねるが、
「…ううん、なんでもない。」
何と答えて良いのかわからず、わたしはそれ以上何も言うことができなかった。
熱は38度を超えていたので、先生にすぐに保健室に行くように指示される。
今日はもう帰っても良いとのことだったので、ランドセルは後で保健室まで葉月ちゃんが持ってきてくれることになった。
保健室に向かう道中、全身が熱くだるい感じはしたが、血管全体が動くようなドキドキは不思議とおさまっていた。
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