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~であって。中学生と教師
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「先生にバレンタインのチョコってあげてもいいの?」
小学校に入って初めてのバレンタインデーの前日、母に聞いたことがあった。
学校にお菓子は持って行ってはいけない決まりだったから、授業が終わって一度家に帰ってから先生に渡しに行くことにした。
職員室の窓から先生を呼び、小さな袋に詰めた不格好なクッキーを照れくさそうに手渡す。
「ありがとう。」
先生の顔は見られなかったから、どんな表情をしていたのかはわからない。
男性にしては少し高めの明るい声が、今でもわたしの耳に残っている。
先生に会ったのは、2か月ぶりだった。
中学生になり、卒業アルバムを受け取りに同級生と一緒に母校に行ったわたしは、久しぶりに集まった教え子と交わろうと校舎の外に出てきていた先生を見かけた。
卒業するまでわたしの通っていた小学校にいた先生は、その学校で最も古株だった。
――あ、まだ先生この学校にいたんだ。
変わらない笑い声を聞きながら、わたしはそっと胸をなでおろしていた。
小学生のころ見ていた先生は、いつでもかっこよかった。
1年生のころの担任でその後は担任をもってもらうことはなかったけれど、工作の授業は先生が教鞭をふるっていたので、高学年になっても会う機会はあった。
まだ入学したばかりのわたしたちが学校に早く馴染めるように、先生は「けいちゃん」という名前の腹話術人形を操った。
けいちゃんは先生の名前からきていて、先生も彼を自分の子どものようにかわいがっていた。
工作時間に友達が彫刻刀で怪我をしたときには、真っ先に駆け寄って応急処置をしたし、給食の時間には子どもたちに混じって一緒にご飯を食べてくれた。
たくさん褒めてくれる明るい先生が、みんな大好きだった。
わたしが先生に特別な感情を抱いていると気づいたのは、小学校5年生の時だった。
小学校に入って初めてのバレンタインデーの前日、母に聞いたことがあった。
学校にお菓子は持って行ってはいけない決まりだったから、授業が終わって一度家に帰ってから先生に渡しに行くことにした。
職員室の窓から先生を呼び、小さな袋に詰めた不格好なクッキーを照れくさそうに手渡す。
「ありがとう。」
先生の顔は見られなかったから、どんな表情をしていたのかはわからない。
男性にしては少し高めの明るい声が、今でもわたしの耳に残っている。
先生に会ったのは、2か月ぶりだった。
中学生になり、卒業アルバムを受け取りに同級生と一緒に母校に行ったわたしは、久しぶりに集まった教え子と交わろうと校舎の外に出てきていた先生を見かけた。
卒業するまでわたしの通っていた小学校にいた先生は、その学校で最も古株だった。
――あ、まだ先生この学校にいたんだ。
変わらない笑い声を聞きながら、わたしはそっと胸をなでおろしていた。
小学生のころ見ていた先生は、いつでもかっこよかった。
1年生のころの担任でその後は担任をもってもらうことはなかったけれど、工作の授業は先生が教鞭をふるっていたので、高学年になっても会う機会はあった。
まだ入学したばかりのわたしたちが学校に早く馴染めるように、先生は「けいちゃん」という名前の腹話術人形を操った。
けいちゃんは先生の名前からきていて、先生も彼を自分の子どものようにかわいがっていた。
工作時間に友達が彫刻刀で怪我をしたときには、真っ先に駆け寄って応急処置をしたし、給食の時間には子どもたちに混じって一緒にご飯を食べてくれた。
たくさん褒めてくれる明るい先生が、みんな大好きだった。
わたしが先生に特別な感情を抱いていると気づいたのは、小学校5年生の時だった。
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