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不死の泉
しおりを挟む─ちゃぷ、とどこかで鳴る水の音で意識が浮上していく。内臓をぐっと押し上げられる感覚で、緒斗之進は完全に覚醒した。
「っはあ……あっ…♡…っえ?」
「目が覚めたんだね」
まだぼんやりとしている緒斗之進は、自分の口から無意識に零れる喘ぎに首を傾げることしかできない。混乱する緒斗之進を後ろから抱きかかえているのは、狂史朗だった。
「あえ…?にい、さん…?」
「そう、兄さんだよ」
「なん…俺…倒れて…っあ」
自分が狂史朗に挿入されていることに気がついたのは、下から軽く突き上げられたからだった。二人は周囲を高垣に囲まれた露天風呂にいて、緒斗之進は兄と繋がっている最中だった。後ろからの突き上げに、緒斗之進はただ喘ぐことしかできない。
「緒斗はね、僕が刺したら倒れちゃったんだよ」
兄の声は、告げる内容と相反して淡々としていた。緒斗之進にも、失神する前の記憶が徐々に蘇ってくる。五年に一度の戯れと、すぐに捕まってしまったこと。逃げようとしたら、由紀也に刺されたこと。そこまで思考が及んで、緒斗之進はハッとして自身の腹に目をやる。しかし、そこには予見していたような光景はなかった。
血はおろか、刺傷すらも見当たらない。目を凝らせば、なまっ白い肌に引き攣れたような跡が確認できるだけだ。その跡も、まさに「治りかけ」で今に綺麗さっぱり無くなってしまうことだろう。それもその筈、二人がいるのは鬼の里に伝わる秘湯「不死の泉」だからだ。
「緒斗は弱っちいね。五年前と一緒だ。僕にすぐ捕食される」
「ぁあッ…♡っや…あっ」
「不死の泉」は、どんな傷をもたちどころに癒す。里ではとても貴重なものとして扱われていて、基本的に首領と、その弟たちしか入浴することを許されていない。その効能は目を見張るものがある。五年前、鬼ごっこに負けて手足をもがれた緒斗之進も、「不死の泉」のお陰で五体満足な体を取り戻している。(高度な文明を築いてきたとはいえ、鬼も所詮魔物。道徳や倫理は存在しないのだ。)
「こんなに弱いのに、まだ人間界に行くつもりなの?すぐ死んじゃうよ」
人間は鬼なんかよりずっと怖いんだよ、と繰り返し聞かされた言葉が囁かれる。これは兄達の常套句だった。何回も、何十回も、教えこまれたこと。
「はァ……ァ…ッ♡ぁん」
下から突き上げられるたびに、快感が弾けていく。ぐぷぐぷと卑猥な音を立てながら、隙間からお湯が入ってきてしまう。胎内に異物が侵入してくる感覚に、緒斗之進の腰が震える。
「緒斗には僕がいないとダメなんだよ。分かった?」
「ぃや…っ…あっ……あっ、そこはっ」
狂史朗の手が、おもむろに胸に伸びてくる。節くれだった手で胸の尖りを弄れば、背中を反らしてよがる。乳首を優しく押したり、横に倒したり、強弱をつけて摘んだり。指の動きに、緒斗之進はひたすら翻弄された。
「だから、僕とずっとここに居ようね。もう里を出たいなんて、言ったらダメだよ」
「いっ!分かった…分かったから…っ!ぐりぐり、っ…やめっ…」
強く引っ張られると、鈍い痛みが走る。ひたすら頷く緒斗之進に満足したのか、狂史朗は手を離した。額にうっすら汗をかいて微笑みを浮かべる狂史朗は、傍目には絶世の美青年にしか見えないだろう。
「いいこだね…。ご褒美に中出しするね」
宣言したあと、狂史朗がぐっと腰を突き上げる。ナカのいいところを全て擦りながら肉棒が更に奥に入っていく。肉の襞ひとつひとつに、所有印をつけるみたいに。抽挿の速度がどんどん速くなっていき、ナカで震えたかと思うと、じわあと暖かいものが広がっていく。兄に種付けされている。その背徳感と快感で、緒斗之進はぶるっと震えた。
「は、あ…っ♡……は」
「のぼせちゃった?そろそろ上がろうか」
緒斗之進はすっかり茹で上がってしまっていた。快感と、暑さで頭がぼんやりして兄の言うなりになってしまう。
「夜は長いからね。たくさん、あそぼうね」
耳元で吐息混じりに囁かれた言葉に、脳が侵されていく。逆上せた頭で、緒斗之進はこくりと静かに頷いた。
××××
「あぁっ♡あんっ…♡あっ…!」
閉ざされた座敷の奥で、二人の魔族がまぐわっている。中央に敷かれた布団の上、緒斗之進は執拗な責めを受け続けている。最初は甘く蕩けていた喘ぎ声も、次第に掠れはじめた。二人が放出する熱気が室内に満ち満ちていた。
「っ……緒斗之進……はっ」
「あっ…♡あっ…♡あっ…♡」
緒斗之進の身体を貪る狂史朗の姿は、正しく鬼としか言いようがない。緒斗之進の中で何度果てたことだろう。どのくらい時が経ったのか、空は白み始めていた。何度も意識が途切れそうになり、その度に狂史朗に頬を優しく叩かれて覚醒する。終わらない悪夢を見ている感覚だ。
激しく抜き差しされている合間にも、「すき」だとか「あいしてる」だとか、愛という名の呪詛を囁かれ続ける。抵抗する術を持たない緒斗之進は、人形のように揺すられることしかできなかった。
──二人の痴態は、朝が来るまで続いた。
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