弟狩り 〜鬼の里にて〜

うさぎ

文字の大きさ
上 下
3 / 4

不死の泉

しおりを挟む


  

  ─ちゃぷ、とどこかで鳴る水の音で意識が浮上していく。内臓をぐっと押し上げられる感覚で、緒斗之進は完全に覚醒した。

 「っはあ……あっ…♡…っえ?」
「目が覚めたんだね」

 まだぼんやりとしている緒斗之進は、自分の口から無意識に零れる喘ぎに首を傾げることしかできない。混乱する緒斗之進を後ろから抱きかかえているのは、狂史朗だった。

「あえ…?にい、さん…?」
「そう、兄さんだよ」
「なん…俺…倒れて…っあ」

 自分が狂史朗に挿入されていることに気がついたのは、下から軽く突き上げられたからだった。二人は周囲を高垣に囲まれた露天風呂にいて、緒斗之進は兄と繋がっている最中だった。後ろからの突き上げに、緒斗之進はただ喘ぐことしかできない。

「緒斗はね、僕が刺したら倒れちゃったんだよ」

 兄の声は、告げる内容と相反して淡々としていた。緒斗之進にも、失神する前の記憶が徐々に蘇ってくる。五年に一度の戯れと、すぐに捕まってしまったこと。逃げようとしたら、由紀也に刺されたこと。そこまで思考が及んで、緒斗之進はハッとして自身の腹に目をやる。しかし、そこには予見していたような光景はなかった。
 
 血はおろか、刺傷すらも見当たらない。目を凝らせば、なまっ白い肌に引き攣れたような跡が確認できるだけだ。その跡も、まさに「治りかけ」で今に綺麗さっぱり無くなってしまうことだろう。それもその筈、二人がいるのは鬼の里に伝わる秘湯「不死の泉」だからだ。

「緒斗は弱っちいね。五年前と一緒だ。僕にすぐ捕食される」
「ぁあッ…♡っや…あっ」

「不死の泉」は、どんな傷をもたちどころに癒す。里ではとても貴重なものとして扱われていて、基本的に首領と、その弟たちしか入浴することを許されていない。その効能は目を見張るものがある。五年前、鬼ごっこに負けて手足をもがれた緒斗之進も、「不死の泉」のお陰で五体満足な体を取り戻している。(高度な文明を築いてきたとはいえ、鬼も所詮魔物。道徳や倫理は存在しないのだ。)

「こんなに弱いのに、まだ人間界に行くつもりなの?すぐ死んじゃうよ」

 人間は鬼なんかよりずっと怖いんだよ、と繰り返し聞かされた言葉が囁かれる。これは兄達の常套句だった。何回も、何十回も、教えこまれたこと。

「はァ……ァ…ッ♡ぁん」

 下から突き上げられるたびに、快感が弾けていく。ぐぷぐぷと卑猥な音を立てながら、隙間からお湯が入ってきてしまう。胎内に異物が侵入してくる感覚に、緒斗之進の腰が震える。

「緒斗には僕がいないとダメなんだよ。分かった?」
「ぃや…っ…あっ……あっ、そこはっ」

 狂史朗の手が、おもむろに胸に伸びてくる。節くれだった手で胸の尖りを弄れば、背中を反らしてよがる。乳首を優しく押したり、横に倒したり、強弱をつけて摘んだり。指の動きに、緒斗之進はひたすら翻弄された。

「だから、僕とずっとここに居ようね。もう里を出たいなんて、言ったらダメだよ」
「いっ!分かった…分かったから…っ!ぐりぐり、っ…やめっ…」

 強く引っ張られると、鈍い痛みが走る。ひたすら頷く緒斗之進に満足したのか、狂史朗は手を離した。額にうっすら汗をかいて微笑みを浮かべる狂史朗は、傍目には絶世の美青年にしか見えないだろう。

「いいこだね…。ご褒美に中出しするね」

 宣言したあと、狂史朗がぐっと腰を突き上げる。ナカのいいところを全て擦りながら肉棒が更に奥に入っていく。肉の襞ひとつひとつに、所有印をつけるみたいに。抽挿の速度がどんどん速くなっていき、ナカで震えたかと思うと、じわあと暖かいものが広がっていく。兄に種付けされている。その背徳感と快感で、緒斗之進はぶるっと震えた。

「は、あ…っ♡……は」
「のぼせちゃった?そろそろ上がろうか」

 緒斗之進はすっかり茹で上がってしまっていた。快感と、暑さで頭がぼんやりして兄の言うなりになってしまう。

「夜は長いからね。たくさん、あそぼうね」

耳元で吐息混じりに囁かれた言葉に、脳が侵されていく。逆上せた頭で、緒斗之進はこくりと静かに頷いた。

××××

「あぁっ♡あんっ…♡あっ…!」

  閉ざされた座敷の奥で、二人の魔族がまぐわっている。中央に敷かれた布団の上、緒斗之進は執拗な責めを受け続けている。最初は甘く蕩けていた喘ぎ声も、次第に掠れはじめた。二人が放出する熱気が室内に満ち満ちていた。

「っ……緒斗之進……はっ」
「あっ…♡あっ…♡あっ…♡」

 緒斗之進の身体を貪る狂史朗の姿は、正しく鬼としか言いようがない。緒斗之進の中で何度果てたことだろう。どのくらい時が経ったのか、空は白み始めていた。何度も意識が途切れそうになり、その度に狂史朗に頬を優しく叩かれて覚醒する。終わらない悪夢を見ている感覚だ。
 激しく抜き差しされている合間にも、「すき」だとか「あいしてる」だとか、愛という名の呪詛を囁かれ続ける。抵抗する術を持たない緒斗之進は、人形のように揺すられることしかできなかった。

  ──二人の痴態は、朝が来るまで続いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

嫌がる繊細くんを連続絶頂させる話

てけてとん
BL
同じクラスの人気者な繊細くんの弱みにつけこんで何度も絶頂させる話です。結構鬼畜です。長すぎたので2話に分割しています。

白雪王子と容赦のない七人ショタ!

ミクリ21
BL
男の白雪姫の魔改造した話です。

肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?

こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。 自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。 ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?

とろとろ【R18短編集】

ちまこ。
BL
ねっとり、じっくりと。 とろとろにされてます。 喘ぎ声は可愛いめ。 乳首責め多めの作品集です。

ゆるふわメスお兄さんを寝ている間に俺のチンポに完全屈服させる話

さくた
BL
攻め:浩介(こうすけ) 奏音とは大学の先輩後輩関係 受け:奏音(かなと) 同性と付き合うのは浩介が初めて いつも以上に孕むだのなんだの言いまくってるし攻めのセリフにも♡がつく

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

メスホモさんには幸せな調教を…♡

ジャスミンティー
BL
多くの男失格の潜在的なメスホモさん達に♡様々な手段を用いて♡自分の立場をチンポで分からせてあげるお話♡

平凡な研究員の俺がイケメン所長に監禁されるまで

山田ハメ太郎
BL
仕事が遅くていつも所長に怒られてばかりの俺。 そんな俺が所長に監禁されるまでの話。 ※研究職については無知です。寛容な心でお読みください。

処理中です...