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8歳の初恋

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夢を見ていた。

10年前のあの日。
リリーが田舎の領地に住んでいた時の夢だ。

その日リリーは、自邸の近くの森で一人で花を摘んでいた。
お父様とお母様に綺麗な花束をプレゼントしようとして、一生懸命カゴに花を集めていたのだ。

そして夢中になるあまり、リリーは石に躓いて転んでしまった。

「大丈夫?」

一人で泣きじゃくるリリーの前に現れたのは、天使のように美しい少年だった。
太陽に照らされた金髪は黄金のように光り輝き、泣くのも忘れて彼に見とれてしまった。

「ああ、少し血が出てるね。ちょっと待ってて」

少年は近くの小川でハンカチを濡らし、リリーの足についた血を綺麗にしてくれた。
そしてそのハンカチで傷口を縛る。

「これで大丈夫だ。家への道順は分かる?」

こくんと頷くリリーを、「念のため」と言って屋敷まで送ってくれた彼は、優しく、穏やかで、素敵な騎士様のようだった。
多分これがリリーの初恋で、そして最初で最期の恋だったのだと思う。
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