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ロクセーヌ王国第二王子
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「殿下、お迎えに上がりました」
「ご苦労。この方は僕の客人だ。国賓として丁重におもてなしするように」
「は。承知いたしました」
目の前の信じられない光景に、エルウィンはただ呆然として佇んでいた。
殿下?国賓?
一体、何の話だ。
グレンに隣国へ来ないかと誘われた時、エルウィンは一も二もなく頷いた。
失敗ばかりだったけれど、それでも大好きだった魔術師の仕事を続けられるのだ。
仕事も婚約者もなくしたエルウィンは、この国に未練などない。
実家のある田舎にだって、隣国の王都からの方が近いくらいだ。
隣国行きを承知したエルウィンに、グレンは美しく整った顔をふわりと綻ばせた。
「ありがとう。あなたを連れて帰れるなんて夢のようだ」
「そ、そんな…」
グレンの嬉しそうな表情に、エルウィンは思わず誤解しそうになってしまう。
彼が、エルウィン自身を連れて帰りたかったのだと。
だが誤解してはいけない。
多分彼は、自分の国の属性に合う魔術師を連れて帰ることに価値を見出しているのだ。
魔術師は、国にとって有益だから。
そしてグレンは、国に魔法伝令を飛ばした。
すぐに迎えに行くと返事が来て、エルウィンの古ぼけたアパートの前に信じられないくらい豪奢な魔法馬車が停まったのである。
「グ、グレン…?」
立派な身なりをした人々に傅かれているグレンに、エルウィンは恐る恐る声をかける。
「あなた…何者なの?」
大きなトランク2つに全ての荷物をまとめ、肩にもバッグを斜めがけしているエルウィンに、グレンが眩しいくらいの笑みを浮かべた。
「すみません、言い忘れていました。僕はグレンフリード・フェル・ロクセーヌ。ロクセーヌ王国の第二王子です」
「ご苦労。この方は僕の客人だ。国賓として丁重におもてなしするように」
「は。承知いたしました」
目の前の信じられない光景に、エルウィンはただ呆然として佇んでいた。
殿下?国賓?
一体、何の話だ。
グレンに隣国へ来ないかと誘われた時、エルウィンは一も二もなく頷いた。
失敗ばかりだったけれど、それでも大好きだった魔術師の仕事を続けられるのだ。
仕事も婚約者もなくしたエルウィンは、この国に未練などない。
実家のある田舎にだって、隣国の王都からの方が近いくらいだ。
隣国行きを承知したエルウィンに、グレンは美しく整った顔をふわりと綻ばせた。
「ありがとう。あなたを連れて帰れるなんて夢のようだ」
「そ、そんな…」
グレンの嬉しそうな表情に、エルウィンは思わず誤解しそうになってしまう。
彼が、エルウィン自身を連れて帰りたかったのだと。
だが誤解してはいけない。
多分彼は、自分の国の属性に合う魔術師を連れて帰ることに価値を見出しているのだ。
魔術師は、国にとって有益だから。
そしてグレンは、国に魔法伝令を飛ばした。
すぐに迎えに行くと返事が来て、エルウィンの古ぼけたアパートの前に信じられないくらい豪奢な魔法馬車が停まったのである。
「グ、グレン…?」
立派な身なりをした人々に傅かれているグレンに、エルウィンは恐る恐る声をかける。
「あなた…何者なの?」
大きなトランク2つに全ての荷物をまとめ、肩にもバッグを斜めがけしているエルウィンに、グレンが眩しいくらいの笑みを浮かべた。
「すみません、言い忘れていました。僕はグレンフリード・フェル・ロクセーヌ。ロクセーヌ王国の第二王子です」
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