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しおりを挟む真澄ちゃんがいた。学科にあてがわれた棟のラウンジにいた。教授となにか話している。教授は楽しげな雰囲気でにこやかな顔をしていた。静かなラウンジに真澄ちゃんの声と教授の声が響いていた。勉強スペースに僕がいた。借りてきたパソコンでレポートと作成しつつ、ネットを検索していた。レポートの材料にネットの情報も集めていたからだ。
「あら、拓磨ちゃん」
「真澄ちゃんだ」
教授が普段いる部屋に入った後、部屋から出た真澄ちゃんがいた。金髪に染めた髪がゆらゆらと揺れていた。
ヒールの高いブーツをはいている。
「拓磨ちゃん。あんたどうしたの」
「なにが。よくわからないけど」
「そっか。自覚がないか」
「真澄ちゃん、なにがいいたいのかよくわからない」
「まあ。幸せな顔じゃないわね」
「はあ」
「なによ。自分の顔を気にしないの。スマイルくらいできるわよね」
「陰気な顔をしているんだね」
「そうよ」
真澄ちゃんはにっこりと笑う。きれいな笑顔が気持ちいいと思わせるところは感心する。真澄ちゃんは僕がいるテーブルの席に座る。テーブルにつくと顔を寄せてきた。
「どうよ。ラブは」
「別に」
「あら。意外ね、順調ではないの」
「意外でもなんでもない」
「まあ。あんたは奥手だから、相手もじれるわね」
「そんなじゃないよ。相手は付き合っている人いるし」
「叶わない恋ね。略奪愛っていうのかしら」
真澄ちゃんは楽しげな言い方に僕はムッとした。
「告白する。振られるけど」
「ふーん」
「まあ、そういう反応はちょっとだけ傷つくけどやるよ。真澄ちゃんは?」
「聞きたい?」
うふふと笑う真澄ちゃんに対して僕は「興味がない」と言ったが、真澄ちゃんは話し始めていた。気になっている彼とデートに誘われたらしい。気になる彼は梨田さんかと僕は思っていた。
周りの視線が気になって僕は「静かに」と言った。真澄ちゃんはふうんと言った。
僕はノートパソコンでレポートを書いていた。人がいなくなる時間帯になった。気が付けば真澄ちゃんは勉強をしていた。お互い無言を貫いていた。
「なにか、あった」
「なにもないよ」
「小説のネタにしないからさ」
「しつこい」
真澄ちゃんは頬を膨らました。そうしてお昼休みになった。真澄ちゃんは立ち上がり「ランチにするわよ」と言われた。
お弁当を持参した生徒達が集まってきた。真澄ちゃんはそう言って僕を待っていた。
ノートパソコンを返して、真澄ちゃんは歩きながらはあとため息をついた。教授は歩いている。たくさんの大学生が笑いながら話している。真澄ちゃんは憂鬱そうに見ていた。
「本当はね。私から誘ったの」
いきなりのことで僕が不思議そうにしていると付け加えるように、気になっている人の話と言った。僕は短くああとつぶやいた。
「ランチはどうする」
「食堂」
「真澄ちゃんじゃん。どうした」
いきなり女子に捕まった真澄ちゃんはじゃあねと手を振った。僕も手を振る。
夜にキスされたことが真澄ちゃんによって緩和されたことは確かだ。誰かにいうことにより、少しだけ自分が落ち着いた。
苦しいのは僕だけじゃない。だけど僕が苦しいのは確か。暖房が利いた部屋から野外に出る。寒さに体を震わしている僕に、風が吹き付ける。わかってねえと夜に言われた。
わかっていない僕にはなにに対して夜がわかっているのかわからなかった。夜がわかっているのは、きっと夜の気持ちで僕の気持ちではないことは確かだ。
「あのコンビニ店員さんかっこよかったね」
「うん。誰かと付き合っているのかな」
「いるのかな」
夜だなとわかった。僕はなんとなく夜の顔を見るためにコンビニへ足を運ぶことができなかった。夜に対する気持ちを知っているのは僕なんだけど、それでも今伝えるのは反則だとわかっていた。
空を見上げた。紅葉した小楢の木の葉がちらちらと落ちていく。風がそれを吹き上げて、女子のスカートをめくらせている。きゃーとビル風にあおられていた。
食堂に向かうととんとんと背中をたたかれた。梨田さんだった。
「飯か」
「はい」
「一緒に食おう」
「はい」
そう言われたからうなずいた。警戒はしているつもりだ。僕の警戒を見ても梨田さんは気にしていないようだった。梨田さんは授業の話をした。
「どうだ。高木先生。講義眠いだろう」
「ええ。まあ。あの人、休み時間ギリギリまで話すんですよ」
「次の授業は遅刻するなよ」
「さすがにそこは教授だって気をつけますから大丈夫です」
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