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しおりを挟む武藤は泣いていた。この世の終わりまでは考えていなかったが、元の世界に帰りたかったのは確かである。武藤の気持ちを知っていても、白木は武藤を返すつもりはないようだ。
茶を用意された。熱かった。冷えた室内で飲む茶は体を温め、落ち着かせていく。窓があることにようやく武藤は気がついた。窓ガラスでなく、格子の窓だ。そこから虫でも入ってくるかと思いきや、なにも入ってこない。冷たい空気がそこから漏れていく。
白木は茶を飲んで、ぼんやりしていた。そういえば、彼は昔からこうしていた。武藤は勉強していたときも、バケモノの声におびえていたときも、そうして、今のこのときも。
「おまえは退屈しないのか?」
「退屈をしている。話し相手になってくれないか?」
「なぜ?」
白木がニヤリと笑う。それが以前の白木とは変わっていないように思えた。それが安心する。白木はゆっくりと武藤の近くによる。白木の服が見えた。白い服、着物だ。それをゆったりと重ね着をしている。自分は肌寒いのか、と武藤は考えていた。白木が来るとなぜかわからないが、武藤はソワソワする。
白木が隣に座る。白木の手、冷たい手が武藤の髪をなぞるように触る。他人に触れることで背筋にゾクゾクとした、変な気持ちになる。まだ異物であることを武藤は気がついた。
白い手がサイドの毛をもてあそぶように、くるくると指に絡めていく。最近、洗ったばかりのように、髪質はよく光沢がある。そうして、されるがまま武藤はしばらく黙っていた。
「なんだ。こそばゆいか?」
「こそばゆい。やめろ。髪が痛む」
「ああ、そうか。じゃあ、いいや」
時間ならば、たっぷりあるからなと白木がつぶやく。武藤は一番、聞きたくなかった言葉である。時間はまだまだたっぷりある。それは白木が武藤に時間をかけて体でいうことを聞かせるということだろう。
「寝るか?」
「おっ、やる気になったか?」
「そうすれば帰れるんだろう?」
「それはどうかな」
さっさとやろうと武藤は言った。それに後悔することになると武藤は思わなかった。
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