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……?
掃除ロボットは、今度は反対側に首を傾げた。胸のライトは点滅したままだ。さっき無理な力を加えられたせいで、不具合が起きたのだろうか。掃除ロボットの困惑など気づかないように、男はその目をすっと眇めた。
「おい、聞こえているのか?」
「はい。聞こえています。大丈夫です」
「いい加減その手を離せよ!」
男に腕を取られたままの白いパンツの男が、焦れたように声を張り上げた。
「あんた、頭がおかしいよ! 単なるロボットだろ! しかもこんないつ壊れてもおかしくないようなオンボロっ、……痛ててっ」
男に腕の拘束を強くされて、白いパンツの男は目に涙を滲ませた。
「立派な傷害罪だ。どうする、センターに通報するか?」
「ああ!? 冗談だろう?」
男の言葉に、白いパンツの男はぎょっとしたように身体を強ばらせた。
「それには及びません。――失礼します」
掃除ロボットは、専用のキットからきれいなタオルと染み取りスプレーを取り出すと、白いパンツについたコーヒーの汚れを丁寧にタオルに移し取った。やがて染みが目立たなくなると、掃除ロボットはほっとした。
「申し訳ありませんでした。私に関する苦情でしたら、先ほども申し上げたとおり……」
「さっきからうるせえよ!」
白いパンツの男は掃除ロボットを突き飛ばすと、逃げるように駆け出した。
「あのままいかせてよかったのか。ああいう手合いは放っておくと何度でもするぞ」
「はい。大丈夫です」
さっきの人間に限らず、これまでにもこういうことは何度もあった。どうやら一部の人間の中には、自分のような存在を目にするだけで不快に感じることがあるらしい。
「そうか」
男は足下に置いておいた荷物を掴むと、そのまま立ち去ろうとした。
「あ、あの」
男が立ち止まり、振り返る。その目がまっすぐに掃除ロボットを見た。
「ありがとうございました」
胸のライトがぴろぴろと点滅する。男は掃除ロボットの胸のライトに視線をやると、
「別に助けたわけじゃない」
顔を背け、今度こそ立ち止まらずに去ってしまった。男の姿が見えなくなるまで、掃除ロボットはその場にじっと立っていた。
掃除ロボットは、今度は反対側に首を傾げた。胸のライトは点滅したままだ。さっき無理な力を加えられたせいで、不具合が起きたのだろうか。掃除ロボットの困惑など気づかないように、男はその目をすっと眇めた。
「おい、聞こえているのか?」
「はい。聞こえています。大丈夫です」
「いい加減その手を離せよ!」
男に腕を取られたままの白いパンツの男が、焦れたように声を張り上げた。
「あんた、頭がおかしいよ! 単なるロボットだろ! しかもこんないつ壊れてもおかしくないようなオンボロっ、……痛ててっ」
男に腕の拘束を強くされて、白いパンツの男は目に涙を滲ませた。
「立派な傷害罪だ。どうする、センターに通報するか?」
「ああ!? 冗談だろう?」
男の言葉に、白いパンツの男はぎょっとしたように身体を強ばらせた。
「それには及びません。――失礼します」
掃除ロボットは、専用のキットからきれいなタオルと染み取りスプレーを取り出すと、白いパンツについたコーヒーの汚れを丁寧にタオルに移し取った。やがて染みが目立たなくなると、掃除ロボットはほっとした。
「申し訳ありませんでした。私に関する苦情でしたら、先ほども申し上げたとおり……」
「さっきからうるせえよ!」
白いパンツの男は掃除ロボットを突き飛ばすと、逃げるように駆け出した。
「あのままいかせてよかったのか。ああいう手合いは放っておくと何度でもするぞ」
「はい。大丈夫です」
さっきの人間に限らず、これまでにもこういうことは何度もあった。どうやら一部の人間の中には、自分のような存在を目にするだけで不快に感じることがあるらしい。
「そうか」
男は足下に置いておいた荷物を掴むと、そのまま立ち去ろうとした。
「あ、あの」
男が立ち止まり、振り返る。その目がまっすぐに掃除ロボットを見た。
「ありがとうございました」
胸のライトがぴろぴろと点滅する。男は掃除ロボットの胸のライトに視線をやると、
「別に助けたわけじゃない」
顔を背け、今度こそ立ち止まらずに去ってしまった。男の姿が見えなくなるまで、掃除ロボットはその場にじっと立っていた。
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