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「――……さん。……衛さん」
せっかく気持ちよくなっていたのにと、日下は重たい瞼を開けた。
「こんなところで寝ないで、寝るならちゃんとベッドで寝な」
揺り起こそうとした徹に小さく腹を立て、避けようとしたつもりが反対にそのまま徹にもたれかかる格好になった。
「衛さん、大丈夫?」
徹の内面を映し出したようだと、いつも好ましく感じていた彼の男らしい顔が目の前にあって、日下はにこっとした。
「え、衛さん……っ? どうしたの……っ?」
なぜか焦ったように徹がおたおたする。普段はあまり見ることのない徹の動揺した姿さえ、日下の目にはかわいく映った。
「やだ。お前が連れていって」
驚いたように目を瞠る徹の首に腕を回し、引き寄せるようにキスをした。徹の舌に触れたとたん、じわりと熱い幸福な何かがあふれた。そうだ、ずっとこうしたかったのだと、パズルの最後のピースがはまるようにぴったりとくる。
顔を背けた徹の目元が朱く染まっている。その頬を挟み込むように引き寄せ、キスをした。
「あ……っ、衛さん……っ」
戸惑うように、濡れた瞳で自分を見る徹にぞくぞくするほど興奮した。
「……嫌?」
次の瞬間、波に浚われるほどに強く、徹に抱きしめられていた。体勢がくるりと変わり、日下が徹を見下ろす格好になる。
「衛さん……」
「暑い……」
アルコールを飲んでいたせいで、身体が燃えるように暑かった。日下は徹の腹に手をつくと、身体を離し、着ていたTシャツを脱ぎ捨てた。頭がふわふわして気持ちがいい。目を閉じて鼻歌を口ずさみながら、ダンスをするみたいにゆらゆらと腰を揺らす。
「衛さん、好きだ」
徹の手が大切なものに触れるみたいに、そっと日下の頬に触れた。まるで一時も目が離せないように、ぼうっとのぼせたような瞳をしている。日下は猫が甘えるような仕草で頬を擦りつけると、徹の手のひらにくちづけ、甘噛みした。
「衛さん……」
徹が切なげに目を細める。
舌を絡めるようにキスをする。口蓋をくすぐられ、甘い声が出た。そのときだ。
「あっ」
「衛さん……っ」
体勢を崩し、ソファから落ち掛けた日下を、とっさに徹が支える。その必死な顔に、日下の胸に愛しさにも似た感情が沸いた。
「お前かわいいのな。――んっ、あん……っ」
徹の手が日下の髪に触れ、かき乱すように口づけた。うなじに触れた唇の感触が、火傷するように熱い。
「あ……っ、衛さん……っ」
あとでこのときの自分を思い出したら、自分で自分を殺してやりたいほど後悔したに違いない。しかし多くの酔っぱらいの例に漏れず、日下は通常の判断力を失っていた。そんな状態でまともな思考などできるはずがない。
徹の胸に倒れ込み、くすくす笑った。なんだかものすごく楽しい。徹とするキスはとろけるほどに甘くて、いつまでもしていたくなる。
「気持ちいー……」
「え、衛さん……?」
徹の胸に頭を預けたまま、日下はうっとりと目を閉じた。自分を受け止めてくれるこの腕は、たとえ何があっても大丈夫だという絶対的な安心感を日下に与えてくれた。
せっかく気持ちよくなっていたのにと、日下は重たい瞼を開けた。
「こんなところで寝ないで、寝るならちゃんとベッドで寝な」
揺り起こそうとした徹に小さく腹を立て、避けようとしたつもりが反対にそのまま徹にもたれかかる格好になった。
「衛さん、大丈夫?」
徹の内面を映し出したようだと、いつも好ましく感じていた彼の男らしい顔が目の前にあって、日下はにこっとした。
「え、衛さん……っ? どうしたの……っ?」
なぜか焦ったように徹がおたおたする。普段はあまり見ることのない徹の動揺した姿さえ、日下の目にはかわいく映った。
「やだ。お前が連れていって」
驚いたように目を瞠る徹の首に腕を回し、引き寄せるようにキスをした。徹の舌に触れたとたん、じわりと熱い幸福な何かがあふれた。そうだ、ずっとこうしたかったのだと、パズルの最後のピースがはまるようにぴったりとくる。
顔を背けた徹の目元が朱く染まっている。その頬を挟み込むように引き寄せ、キスをした。
「あ……っ、衛さん……っ」
戸惑うように、濡れた瞳で自分を見る徹にぞくぞくするほど興奮した。
「……嫌?」
次の瞬間、波に浚われるほどに強く、徹に抱きしめられていた。体勢がくるりと変わり、日下が徹を見下ろす格好になる。
「衛さん……」
「暑い……」
アルコールを飲んでいたせいで、身体が燃えるように暑かった。日下は徹の腹に手をつくと、身体を離し、着ていたTシャツを脱ぎ捨てた。頭がふわふわして気持ちがいい。目を閉じて鼻歌を口ずさみながら、ダンスをするみたいにゆらゆらと腰を揺らす。
「衛さん、好きだ」
徹の手が大切なものに触れるみたいに、そっと日下の頬に触れた。まるで一時も目が離せないように、ぼうっとのぼせたような瞳をしている。日下は猫が甘えるような仕草で頬を擦りつけると、徹の手のひらにくちづけ、甘噛みした。
「衛さん……」
徹が切なげに目を細める。
舌を絡めるようにキスをする。口蓋をくすぐられ、甘い声が出た。そのときだ。
「あっ」
「衛さん……っ」
体勢を崩し、ソファから落ち掛けた日下を、とっさに徹が支える。その必死な顔に、日下の胸に愛しさにも似た感情が沸いた。
「お前かわいいのな。――んっ、あん……っ」
徹の手が日下の髪に触れ、かき乱すように口づけた。うなじに触れた唇の感触が、火傷するように熱い。
「あ……っ、衛さん……っ」
あとでこのときの自分を思い出したら、自分で自分を殺してやりたいほど後悔したに違いない。しかし多くの酔っぱらいの例に漏れず、日下は通常の判断力を失っていた。そんな状態でまともな思考などできるはずがない。
徹の胸に倒れ込み、くすくす笑った。なんだかものすごく楽しい。徹とするキスはとろけるほどに甘くて、いつまでもしていたくなる。
「気持ちいー……」
「え、衛さん……?」
徹の胸に頭を預けたまま、日下はうっとりと目を閉じた。自分を受け止めてくれるこの腕は、たとえ何があっても大丈夫だという絶対的な安心感を日下に与えてくれた。
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