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緊張で身体を強ばらせながら、あの子はまっすぐな瞳をシュイに向け、「きょうから石さまのお世話のお手伝いをさせていただきますノアと申します。至らない点もあると思いますが、精一杯務めさせていただきたいと思いますのでどうぞよろしくお願いします」と震える声で告げた。ノアの暮らしていた村は貧しく、口減らしのため、子どもが奉公に出るのは当たり前のことらしかった。父親は猟師をしていますと告げた子どもの言葉に、シュイはいまは亡き幼なじみの少年を想った。
不器用ながらも懸命に自分の世話をしようとする子どもの姿に、故郷の惨状を知り、心がすっぽりと抜け落ちたように空っぽになっていたシュイは、少しずつ周囲のようすを見られるようになった。貴石は相変わらず生み出せないままだったが、何も知らず自分を石さまと崇める人々のため、何とか彼らの役に立ちたいと願った。そのときのシュイは愚かで、王都側の思惑など思いもよらなかった。
マーリーン公の命令によって、あの子が自分の目の前で無惨にも切り殺されたとき、シュイははじめて涙を一粒流した。シュイが貴石を生んだことを知った彼らは、亡くなった子どもの前で、狂喜せんばかりに喜んだ。
それからもたびたびシュイの元へ、まだ幼い子どもたちがどこからか連れてこられるようになった。彼らはたいてい身寄りがないような、貧しい子どもたちだった。彼らはなぜ自分たちが石さまの元に連れてこられるかわかっていなかった。あの子がはじめてシュイの前に連れてこられたときのように、純真な瞳をきらめかせて、石さまのために役にたとうと一生懸命だった。彼らが目の前で殺されたとき、シュイの心はばらばらに壊れ、一度死んだ。ただでさえほとんど泣くことのできなくなっていたシュイが、まったく貴石を生み出せなくなったのはそのときからだ。
できることならば、代わりに自分が死にたかった。自分がなぜまだ生きているのかわからなかった。自ら命を絶とうとしたシュイの前で、マーリーン公は冷淡な瞳を向け、こう告げた。
――あなたがその責務に耐え切れず、自らの命を絶とうとするならばそれもいいでしょう。ですが、お約束しましょう。もしあなたがこの国の民がどうなって構わないとおっしゃるのなら、私はこれまで亡くなった子どもの数以上にその屍を築きましょう。それでも構わないとおっしゃるのなら、好きになさりなさい。
まるで終わりのない悪夢のように、何も知らない子どもたちが次々と自分の元へ送り込まれてくる。純粋な目で自分を見つめる子どもたちを前に、シュイは絶望した。
この子どもたちは、自分がいなければきっとまだ生きていた……。
恥ずかしそうに笑うノアの笑顔を思い出すたび、どうしてもっと早くにあの子どもを突き放すことができなかったのだろうという後悔がシュイを苛む。それだけじゃない、自分がもっと早く王都側の思惑に気づいていたのなら、ヒースたちだってきっと死なずにすんだ。もし、自分があの村に捨てられなかったら。王都にきたときに自らの命を絶っていたなら、あの子たちはきっと死なずにすんだ。もしも、もしも……――。
不器用ながらも懸命に自分の世話をしようとする子どもの姿に、故郷の惨状を知り、心がすっぽりと抜け落ちたように空っぽになっていたシュイは、少しずつ周囲のようすを見られるようになった。貴石は相変わらず生み出せないままだったが、何も知らず自分を石さまと崇める人々のため、何とか彼らの役に立ちたいと願った。そのときのシュイは愚かで、王都側の思惑など思いもよらなかった。
マーリーン公の命令によって、あの子が自分の目の前で無惨にも切り殺されたとき、シュイははじめて涙を一粒流した。シュイが貴石を生んだことを知った彼らは、亡くなった子どもの前で、狂喜せんばかりに喜んだ。
それからもたびたびシュイの元へ、まだ幼い子どもたちがどこからか連れてこられるようになった。彼らはたいてい身寄りがないような、貧しい子どもたちだった。彼らはなぜ自分たちが石さまの元に連れてこられるかわかっていなかった。あの子がはじめてシュイの前に連れてこられたときのように、純真な瞳をきらめかせて、石さまのために役にたとうと一生懸命だった。彼らが目の前で殺されたとき、シュイの心はばらばらに壊れ、一度死んだ。ただでさえほとんど泣くことのできなくなっていたシュイが、まったく貴石を生み出せなくなったのはそのときからだ。
できることならば、代わりに自分が死にたかった。自分がなぜまだ生きているのかわからなかった。自ら命を絶とうとしたシュイの前で、マーリーン公は冷淡な瞳を向け、こう告げた。
――あなたがその責務に耐え切れず、自らの命を絶とうとするならばそれもいいでしょう。ですが、お約束しましょう。もしあなたがこの国の民がどうなって構わないとおっしゃるのなら、私はこれまで亡くなった子どもの数以上にその屍を築きましょう。それでも構わないとおっしゃるのなら、好きになさりなさい。
まるで終わりのない悪夢のように、何も知らない子どもたちが次々と自分の元へ送り込まれてくる。純粋な目で自分を見つめる子どもたちを前に、シュイは絶望した。
この子どもたちは、自分がいなければきっとまだ生きていた……。
恥ずかしそうに笑うノアの笑顔を思い出すたび、どうしてもっと早くにあの子どもを突き放すことができなかったのだろうという後悔がシュイを苛む。それだけじゃない、自分がもっと早く王都側の思惑に気づいていたのなら、ヒースたちだってきっと死なずにすんだ。もし、自分があの村に捨てられなかったら。王都にきたときに自らの命を絶っていたなら、あの子たちはきっと死なずにすんだ。もしも、もしも……――。
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