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【おまけ】 プロトタイプ examination”C”
Bout
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Episode.1 Bout
――ガーディアンスクール、3-A教室。
夕菜「おはよ」
平男「ははは、おはよう。これであとは法名くんを待つだけだね」
夕菜「え? あいつ、まだ来てないの?」
無我の席を見てみる。――無人。しかも机に鞄がかけていない。
平男「そうだね。いつもなら早くに来て机で寝ているのにね」
夕菜「ちょっとぉ。大将のあいつが来ないんじゃ、私たち失格になっちゃうんじゃない?」
「なんだかんだ言って、結局は楽しみにしてたんじゃないか」 例の如く、幻斗がひやかしにくる。
平男「そうだ、この際桐生くんに出てもらおうよ」
幻斗「仕方ねぇな。俺はいいが、そちらさんは?」
夕菜「せっかくで悪いんだけど、昨日にメンバー表を提出してんのよ。変更はもう無理」
幻斗「変装かぁ。あんま、得意じゃないんだな」
平男「いっそ桐生くんに、フォースで作った法名くんの人形をコーティングしちゃおうか?」
夕菜「なに、無理にでも出場する相談してんのよっ!」
チャイムが鳴り響く。
平男「どうしよう。もう別館の方に移動しないと……」
そのとき、廊下をあわただしく走る音が聞こえてくる。勢いよく、教室の引き戸が開く。
無我「ま、間に合ったか?」 息を切らせながら、無我が現れる。
平男「ギリギリセーフだね」
夕菜「セーフじゃないわよ。早く別館に急がないと」
無我「あ、ああ」 無我はまだ息を切らしている。
幻斗「! 待て、無我」
無我「なんだ幻斗?」
夕菜「ちょっと、時間がないのよ? わかってる?」
平男「ははは。僕らは先に行ってるね」 夕菜と平男は階段を降りていった。
幻斗「――お前、寝てないだろ?」
無我「……ああ」
幻斗「また、任務か。おまえ、本当に大丈夫か?」
無我「心配するな。こんなイベントくらい、どうってことない」
幻斗「そうか……。なら俺は何も言わない」
無我「ま、中継映像を楽しみにしてろ」
無我は別館へと向かっていった。
――ガーディアンスクール、別館。仮想空間装置室。
夕菜「すいません、遅れました」
引き戸を開け、夕菜と平男が入ってくる。他の組の代表者たちはもう揃っている。
総真「いや、それはいいんだが……、もう一人、無我はどうした?」
平男「法名くんはすぐにくると思いますよ」
そういってる間に無我が入ってくる。
無我「やっぱ、俺が最後か」
総真「無我、席につけ。じゃあ、ルールを説明するぞ」
このBoutは仮想空間装置を使い、仮想空間内で行われる。仮想空間に入ると、それぞれにライフが1.000pt与えられる。当然、このライフが0になった者が負けとなる。対戦は四組がリーグ形式で戦う。まずはA組 対 D組、B組 対 C組の対戦を行い、その後A 対 B、C 対 D、A 対 C、B 対 Dと対戦していく。優勝は各試合で得た勝ち点が多い組となる。勝ち点は、ライフを0にして勝てば3pt、その他審判の判定等で勝った場合は2pt、引き分けは両者に1ptが与えられる。
総真「以上だ。なにか質問は?」
……ないようで。
総真「何人かは、とっとと始めろって顔をしてるな。よし、始めるぞ。A組先鋒、舞川 夕菜」
夕菜「はい」 呼ばれた夕菜は、部屋のスクリーンの前のヘルメットのようなものが置かれている机の前に座る。
総真「D組先鋒、真壱 遥(まいち はるか)」
遥「はい」 真壱と呼ばれた女子生徒が前に出る。
二人は机に置かれたヘルメット――仮想空間装置を装着する。すると、何も映し出されていなかったスクリーンに二人の姿が映し出される。
総真「二人とも、準備はいいか?」
遥「こちらは問題ないわ」
夕菜「私も準備OK」
総真「よし。A組 対 D組、先鋒戦、始めっ」
最初にフォースを展開したのは遥だった。右手に大弓、左手には矢を作り出す。
夕菜「弓矢? 間合いをとって戦うタイプってこと?」
遥「あなたはフォースを展開しないの?」
夕菜(……結局、いい武器は思いつかなかったか)「いくよ」 右手が光出す。そして形を変えていく。
夕菜が作り出したのは、変哲のないただの剣だ。
遥「剣? ……すこしガッカリね、そんなありきたりの武器」
夕菜「こういうのが一番こわいっての、思い知らせてあげるわよっ」
剣を構えた夕菜が間合いを詰める。
夕菜(これで後ろにひくはず。その隙を――)
遥は左手の矢を消して、新たにダーツの矢のような小さな矢を三本作り出す。そして、左手を振り、矢を飛ばす。
夕菜「! 反撃してきた? くっ」 体制を変え、攻撃を回避する。だがそれは攻撃を取りやめる行為となる。
その隙を遥は見逃さない。すでに遥の左手は弓の矢を作りだし、その弦を弾いていた。
遥「そんな囮を本気になってかわすから、こうなるのよ」
夕菜は放たれた矢を回避できない。
[夕菜、ダメージ 92(908/1000)]
夕菜は体を反転させ、直撃を回避する。背中の部分、矢がかすめていった後に赤い光のスジがあらわれ、ゆっくりと消えていく。そして、夕菜のダメージ表示が減り出した。
遥「あの体制から回避したっていうの?」
夕菜「あんまり、なめないでよね。反撃、いくよ」
体制を立て直した夕菜は、再度遥に切りかかる。しかし、夕菜と遥の距離は今、遥の間合い。弓を撃つのにちょうどいいくらいに離れている。
遥「その距離でなにが出来るというの? そちらが近づく前に射抜いてあげる」 矢先を夕菜に向け、弦を引く。
夕菜「こういうのはどうかしら?」 直進から左サイドに飛び、足をつくとすぐに右へ飛ぶ。その繰り返しで、ジグザグに移動しながら間合いを詰めていく。
遥「小賢しい真似を」 これでは攻撃が定まらない。
夕菜「なんとでもっ。これでダメージよ」 適度な距離になったところで、剣を振りかぶる。
額に赤いスジが走った。
[ダメージ 114。……夕菜(794/1000)]
夕菜「え?」
遥「私の武器が弓だからって、間合いを詰めれば勝ちっていう考えは甘すぎね」 振り上げられた右手には、矢が短く持ってあった。
夕菜「矢で、直接攻撃してきたの?」
――仮想空間装置室
「さすがだな。A組の彼女も決して弱くはないのだが」 仮想空間内を映し出すスクリーンに向かって彼は一人呟いていた。
彼の名は『氷室 神威(ひむろ かむい)』。今回のBoutではD組の大将を務めている。彼についての説明をするのならば、一言で済む。「天才」と。
平男「うーん、このままじゃ勝てないや。せめてアドバイスでも出来れば……」
総真「は? なにいってる、待機メンバーのアドバイスを禁じてなんかいないぞ?」
平男「でも、仮想空間に声が届かないよ?」
総真は装置の両サイドに置かれたマイクを指差す。
神威、平男「「!」」 二人はそれぞれ両サイドのマイクの前に立つ。
今、夕菜と遥はお互いの動向を探り合っていた。間合いは遠すぎず、近すぎずの距離。どちらかが仕掛けようとすれば、片方が自分の距離に移動できる。そう、今は互いに動くことが出来ないのだ。
夕菜(チャンスは一瞬。彼女が弓を構えたとき。一気に間合いを詰めて――)
遥「いつまでそうしているつもり? このまま判定になれば勝つのは私なのよ?」
夕菜「!」(そうだった。このままじゃ――、どうせ負けになるんだったらっ)
「挑発に乗っちゃダメだよ」 仮想空間内に、平男の声だけが響く。
夕菜「平男?」
平男「間合いにばっかこだわらないで。弓は遠距離に強いけど、点でしか攻撃できないって欠点もあるんだ。だから――」
夕菜「OKっ、もういいわ」
夕菜は遥の周りを回りながら距離を縮めていく。
遥「しょせん、現状を回避するためだけのアドバイスだったようね。さっきの二の舞よ」 弓を少し下にさげ、矢を強く握りしめる。
夕菜「……もらったぁ」 夕菜は接近戦に備えた遥に対し、夕菜は笑みを浮かべる。
神威「真壱っ、弓を捨てて回避の体勢をとるんだ」
夕菜は距離は詰めずに右手で剣を投げつける。剣は回転しながら遥に向かっていく。しかし遥はすでに弓を破棄していた。体勢を低くした遥の頭上を、剣は回転しながら飛来していく。
遥「まさか、剣を投げてくるなんて……」
夕菜「くぅ。アドバイスがなければダメージだったのにぃ」 投げて消えてしまった剣を作り直す。
夕菜の武器生成の隙をついて、遥が矢を射ってきた。
平男「舞川さん、なにしてるのっ」
夕菜「! しまった、距離をとられた」 飛来する矢を剣で叩き落す。
そして、遥に目を向ける。遥は弓を夕菜のかなり上方に向けている。
夕菜「なに? なんでそんなところを?」 上方に目を向けても何もない。
平男「なんのつもりかは知らないけど、攻撃をさせちゃダメだよ」
夕菜「言われなくてもわかってる」 瞬発的に前へと踏み込む。
遥の矢が上方に放たれる。
夕菜「的外れの攻撃をっ。本人ががら空きよ」 二人の距離は縮まっていく。
平男「! ダメだっ。後ろに飛び退いて」
夕菜「なにいってんの! これで」 夕菜の間合い。剣を両手で持っての横薙ぎが遥を狙う。
遥「仲間のアドバイスは聞くものね」 夕菜の剣を後方へ飛び退き回避する。
夕菜が二撃目に行こうとした時、夕菜の上方から無数の矢が降り注ぐ。
遥「さよなら、お・莫・迦・さん。――『アローレイン』」
夕菜「きゃあぁぁぁぁぁ」
夕菜の身体に無数の赤いスジが刻まれていく。圧倒的な数の矢は夕菜に大ダメージを与えていく。
[夕菜、TOTALダメージ 762(32/1000)]
夕菜(なによコレ? 一方的じゃない) 剣から手を離し、直立不動となる。
遥「勝負を捨てるの? ……当然ね。もう、勝負は見えてるものね」
夕菜(このまま負ける気なの? 冗談じゃないっ)「……こなくそぉぉぉ」 突然、炎が夕菜を包む。炎は降り注ぐ矢を燃やしていく。
遥「な、なに?」
平男「わっ、舞川さんが燃えている」
神威「炎の、エレメンタルフォース」
[* エレメンタルフォース=自然現象をフォースにて再現する能力。かなり高度なうえ、自分に相性の良い属性しか使用することが出来ない]
夕菜の炎は途切れることなく燃え続ける。
遥「やっかいな炎ね。フォースを無効化する効果を備えている。……でも、そんな勢いで出し続けていいのかしら?」 ゆっくりと距離を離していく。
夕菜「これ、どうすればいいのよ?」 燃え盛る炎をどうすればいいのか分からずにいる。
平男「何かをイメージして。炎を調整しないと――」
夕菜「しないと、どうなんのよっ?」
遥「単純なこと。今もあなたはフォースを消費し続けている、そしてフォースは無限の力じゃない、もう、わかるでしょ?」
夕菜「! イ、イメージ。炎を消すイメージを」
遥「いいのかしら? 残りのライフが少ない状態で、その絶対防御の炎を消して」 弓の狙いを定める。
夕菜「!」
平男「惑わされないで! どちらにしろ、フォースが切れたら攻撃が出来なくなって負けになるんだよ?」
夕菜「そうね……。なら、このまま仕掛ける」 炎に包まれたまま、剣を構える。当然、剣も炎に包まれていく。
神威「真壱、距離をとれ。彼女の炎はせいぜい二、三分が限度だ」
遥「それは聞けないわ。そんな勝ち方、面白くないもの」
夕菜「願ったりね」 夕菜が斬りかかる。
遥「その炎、貫いてみせてあげる」 正面から向かってくる夕菜に対し、矢を放つ。
夕菜「そんな攻撃にかまっていられないのよ!」 矢が夕菜に当たる。その瞬間、矢は燃え尽きて消える。そして、炎の剣が遥に赤いスジを残す。
[遥、ダメージ769(231/1000)]
遥「一撃で半分以上も!?」
夕菜「か、勝てる。これなら」
平男「早く追撃をっ。そのまま勝負を決めるんだ」
夕菜「分かってるっ」 振り下ろした剣をそのまま振り上げる。二撃目が遥を襲う。
遥「やらせないっ」 遥は目の前に光の球を作り出す。
神威「無属性フォース!? なにをする気だ?」
夕菜「いまの私にフォースは効かないっ」
遥「あなたには、ね」
遥の作り出した光球が爆発する。そして、爆発に飲まれた遥は後方へと吹き飛ばされた。
[遥、ダメージ112(119/1000)]
夕菜「自爆?」
平男「! しまった、距離を取られた」
夕菜「くぅ、セコイ手を」
遥「このまま逃げるんだったら笑われても仕方ないわね。けど、距離を取ったのは時間稼ぎが目的じゃないの」 吹き飛ばされた体勢から弓を構える。
そして、矢を構えた弓の弦を何度も捻っていく。
遥「『スパイラルアロー』」 放たれた矢は回転しながら夕菜を襲う。
夕菜「どんな技でこようと、私の炎が焼き尽くす」
遥は身体を反転させ、着地する。
遥「今の私の最強技よ。燃やせるものなら燃やしてみなさい!」
スパイラルアローと夕菜の炎がぶつかり合い、火の粉を飛ばす。
遥「貫けぇぇぇ」
夕菜「燃え尽きろぉぉぉ」
矢じりが炎の中に隠れる。
遥「! 決まったっ」
夕菜「うおぉぉぉぉぉぉぉ」 炎の勢いが爆発的に上がる。
スパイラルアローは燃え尽きはしなかったものの、炎の勢いに粉砕される。
遥「! 貫け、なかった」
夕菜「これで、終わりよ」 夕菜が遥の方に向かう。
神威「……そろそろだな」
剣を振り上げたとき、夕菜の炎が消えた。そして、振り下ろす間、徐々に剣が消えていく。
夕菜「フォースが、消えていく」
神威「なにをしてる真壱っ、早く攻撃しろっ」
遥「……」 遥は動こうとしない。
夕菜「くぅ。なにか、なにか出てよっ」 夕菜はフォースウェポンを作り出そうとしているが、反応はない。
平男「完全な、フォース切れだよ」
総真「……うん、そこまでだ。勝者、D組、真壱 遥」
仮想空間装置のバイザーが上がり、二人は現実へと戻ってくる。すぐさま神威が遥に駆け寄った。
神威「なぜ彼女のライフを奪わなかった?」
先ほどの試合でD組は2ptを得た。しかしそれは遥がとどめをささなかったからである。遥がとどめをさせば、本来3pt得ていたのだから。
遥は装置を外し、席を立つ。そして、神威に対し言い放つ。
遥「あの試合、完全に私の負けよ」 振り返らずに自分の席へ。
一方、夕菜はまだ、仮想空間装置をつけたままでいる。
平男「ははは。ま、仕方ないよ。能力が目覚めただけ儲けものだったと思って――」
夕菜「平男」
平男「ん? なに?」
夕菜「こんなこと言える立場じゃないけど……、勝ってね」
平男「うん、任された」
「ひどいなぁ、夕菜ちゃん。友人に対して負けろって言うの?」 美紅が近づいてきた。
夕菜は一息をついて装置を外す。
夕菜「今は敵同士、でしょ?」 微笑ながら美紅に言った。
美紅「そうだったね。……平田くんだっけ? 私、そんな簡単にはやられないよ?」
平男「ははは、楽しみだね」 夕菜が外した装置を身につける。
夕菜「マイクには私が立つわ」 夕菜はマイクの方に移動する。
神威「こちらは僕が引き続いて立たせてもらう。いいな、真壱?」
遥「勝手にして」
美紅「じゃあ、始めましょうか」 美紅も装置を身につける。
総真「よし、準備はいいようだな。副将戦、A組、平田 信男 対 D組、五十嵐 美紅」
仮想空間内の二人が身構える。
総真「始めっ」
号令と共に動いたのは平男だった。
平男「速攻でいくよ」
平男はナイフを作り出す。そして、野球のアンダースローのように、地を這ってナイフを振りかぶる。そのまま、ナイフの刃を飛ばすトリガーを押す。ナイフの刃は美紅に向かって飛んでいく。
美紅「! ……糸?」 美紅は刃と握り手をつないでいる細い糸を見落とさなかった。
平男「そう。このピアノ線の意味はすぐにわかると思うよ」
美紅「それが仇になるってことね」 美紅はフォースウェポンで杖を作り出した。その杖を回転させ、身構える。
刃が美紅を襲う。美紅は上体を軽くそらして回避する。
平男「あまいよ」 握り手を釣り竿のように引き上げる。
美紅「そうでもないみたいですよ」 杖でピアノ線の部分を引っ掛ける。ピアノ線は杖に巻きつき、杖と刃がぶつかり合って音を立てる。
平男「ははは。簡単にはいかないか」 杖に絡まって使い物にならなくなったナイフを消して、新しいナイフを作り出す。
美紅「今度はこちらからいきます」
平男「あ、いっとくけど、それが殴打目的の杖とは思ってないから。なにかの媒体ってとこでしょ?」
美紅「そのとおり。――そして、これがその能力です」 杖の先端が白く光輝く。
夕菜「! あれは、無属性のフォース」
平男「ははは。さっきの試合で真壱さんが使ったやつだね」
美紅「そうですね。……ただ私の場合、適応する属性が無属性だったってことなんですけどね」
杖を振ると、光が球状になって平男に襲い掛かる。
平男「ただ飛ばすだけなの?」 かなりの速度で光球は飛来してくるのだが、平男はなんなく回避する。
平男「……返ってこないよね?」 光の球が飛び去った方向へ振り返る。
美紅「大丈夫。あれは当たれば爆発するだけで、そんな効果はないです。でも、単発ではもう撃ちませんから」 今度は杖を一振りすると、多数の光球が放たれる。さらにそれを連続で振る。
平男「わわわ、連続で来た」
美紅の放つ光球は平男の足元や背後で次々爆発していく。
平男「まずいかな? このままじゃダメ-ジだね。――! 五十嵐さんがいない!?」
夕菜「平男、美紅はあんたの背後よ」
美紅の杖から、白い光が放たれる。その光は平男の背中に直撃した。
[平男、ダメージ291(709/1000)]
神威「五十嵐、ナイフがくるぞ」
直撃を受け、前方に吹き飛ばされながらも平男はナイフの刃を飛ばしていた。
美紅「うそ? あの体勢から私を狙ったというの?」
反応の遅れた美紅の頬をナイフがかすめる。
[美紅、ダメージ69(931/1000)]
平男「あたたた。うーん、やられちゃったなぁ」 顔面から倒れこんだ平男が起き上がり、構えを取り直す。
美紅「そのナイフ、少しやっかいですね」
平男「そう? なら、僕も連続でいっちゃおうかな」 右手にスプリングナイフを、そして、左手には投げナイフを三本作り出す。
三本のナイフを美紅に投げつける。
美紅「投げナイフのけん制から、あの刃が飛ぶナイフでの攻撃。――読めてます」 光球による、投げナイフへの迎撃。光球の爆発により、三本のナイフが弾き飛ばされ、スプリングナイフに備え、杖を身構える。
神威「違う、三段攻撃だ。彼が直接来るぞ」
杖にナイフの糸が巻き付いていく。
平男「がら空き、だね」 平男の持つピアノ線の延びた握り手から新たな刃が現われる。
無防備の美紅にナイフが襲う。
美紅「シールドっ」 美紅は平男と美紅の間に無属性フォースの盾を作り出す。
すると平男は真横にナイフの刃を飛ばした。盾を回り込んで、後方から刃が襲う。
美紅「そんなの、ここならっ」 美紅は平男の後方に回り込む。
平男の攻撃は平男自身に返ってくる。
平男「ありゃりゃ」 フォースを消して、すばやく振り向いた。
美紅「なにか、がっかりですね。……いいかげん、手を抜いて戦うのはやめてもらえませんか?」
夕菜「手加減? ちょっとなによ。あんた、手を抜いて戦ってわけ?」
美紅「おおかた、私程度って思っているんじゃないですか?」
平男「うーん。そんなつもりじゃなかったんだけどなぁ……。仕方がない。じゃあ、本気でいくけど、勝ちたいなら今のうちにライフをなくしたほうがいいよ?」
平男の右手の平に光の渦が現われる。しかし、渦が出続けるだけでフォースウェポンは形成されない。
神威「五十嵐、勝ちにいけ。……時間をかけて形成する能力は危険だ」
美紅「……そうですね。悪いけど、実戦で使えない能力を本気と認めるわけにはいきませんね」
平男「だから、攻撃していいよって。僕だって負ける気で言ってるわけじゃないんだから」
美紅「いきますよ」 杖から光球を放つ。
平男は身体を反らし、光球を回避する。
美紅(問題はあのフォースが直接攻撃か遠距離かってことなんだけど……、彼の攻撃は遠距離型。ならっ)
美紅は杖を構え、距離を詰める。杖は無属性のフォースに包まれ、攻撃力を高めている。
美紅が攻撃の間合いを詰め、杖で殴りかかる。振り下ろしを回避、二撃目の横薙ぎを後方に飛びのいて回避するが、その体勢では三撃目の突きは回避できない。
[平男、ダメージ198(511/1000)]
平男「そうそう」 突きをくらって背中から倒れるが、右での渦は止まらない。
美紅は攻撃の手を止めない。倒れた平男の腹部に目掛けて、杖を突く。
[平男、ダメージ175(336/1000)]
平男「ぐぅ」 腹部への強い衝撃に、平男はたまらず声を上げる。
美紅「もう一発」 美紅は再攻撃のため、杖を振り上げる。
次の瞬間、美紅は杖を振り上げた体勢から動かなくなってしまった。
平男「タイムアウト。はは、完成だよ」
胸元に金属の冷たい感覚が走る。
美紅「これって、まさか……」
平男「そう。これが僕の本当のフォース。……拳銃だよ」
神威「五十嵐、なにを躊躇している。銃をフォースウェポンにしているものはいくらでも居る」
平男「でも、これがそういう人たちのフォースとは違うってことはわかっているはずだよね、氷室君? ……銃の精製に時間がかかったのは内部部品を組み合わせてたため。これはそういう人たちの張り子とはわけが違うの。さぁ、どう出るのかな? 五十嵐さん」
美紅「……」(フォースの盾を作って弾丸の威力を弱め、反撃で決める。仮にライフが残っても距離をとれば) 杖を握る手に力が入る。
平男「――相打ち覚悟? うん、僕もそれがいいと思うよ」
美紅は胸元の突きつけられた拳銃から離れる。ここからは時間が勝負。美紅は自分と平男の間に盾を展開する。そして、杖を振り下ろした。
空気を裂くような轟音が轟く。弾丸を受け、目の前でフォースの盾の破片が飛び散っていく。そして、その弾丸は美紅の胸元を貫いた。
[美紅、ダメージ1202(0/1000)]
美紅「そ、そんな……、半分程度、威力をかき消してるはずなのに」
平男「うん、多分消されちゃってるね。2000はいくと思ってたもん」
総真「勝者、A組 平田 信男」
装置のバイザーが上がり、二人は現実世界へ。
夕菜「よくやった、平男。これで1ptリード」
美紅「負けた私に慰めはないの?」
夕菜「今は敵、でしょ?」
美紅「厳しいなぁ」 美紅は装置を外し、自分の席へと向かう。
平男「よいしょっ、あとは法名君だね」
神威が装置の前に座る。
神威「こちらの準備はいい。そっちは?」
神威の声に無我のいる方を見てみると、無我はうつむいて座っていた。
夕菜「ちょっと、あんたの番よ」
反応なし。
夕菜「無我っ、聞いてるの?」 夕菜が無我の席に近づく。
夕菜「! ……寝ている」 そばにいると聞こえてくる吐息。
平男「はい?」
夕菜「ちょっとぉ、起きなさいよっ」 思いっきり無我の身体を揺らす。
無我「……やめろ、気持ち悪い」 頭を抑えながら、無我が立ち上がる。
夕菜「起きた? 起きたんなら、行きなさいよ」
無我「ん? ――ああ、俺の番か」 ゆっくりと装置の方へと歩いていく。
夕菜「……あいつ、大丈夫なの?」
無我が席に着き、装置を装着する。そして、バイザーを下ろし電源を入れる。
神威「!」 無我が電源を入れたのに気づき、慌てて装置の電源を入れる。
総真「お、おい? ……ったく、勝手なことを」
仮想空間に無我と神威が現れる。
総真「おーい、準備はいいか?」
神威「こちらは準備出来てます」
無我「……」 無我の返事はない。
総真「無我? 準備いいか? ……まあいい、始めるぞ。大将戦、A組 法名――」
誰もがその目を疑った。一瞬だった。無我を意識していなかったのは開始の号令が耳に入ってくるその時だけ。しかし、無我の斬糸は神威の首に赤いスジを残していた。
[神威、ダメージ―――――]
ダメージ表示が高速で変化していく。その表示桁は三桁、四桁、五桁へと。
総真「あのバカっ」 総真は仮想空間装置を操作して、二人を仮想空間から強制的に離脱させる。
バイザーが上がり、装置が着脱可能な状態になるが、二人とも動かない。
総真(ちぃ、60000を超えるダメージだ、ショックがでかいか)「氷室っ、大丈夫か?」 総真は神威に駆け寄った。
神威の目の前に手をちらつかせ、瞳の反応を見る。神威の目は総真の手の動きを追う。
総真(……たいしたものだ。現実なら確実に死んでいるダメージを受けたのに)
総真「この勝負、A組の反則負けを宣言する」
夕菜「ちょ、ちょっとぉ。なんで反則なのよ?」
総真「開始号令前の奇襲攻撃だ。……さらに言うなれば、体調の管理不足だな。舞川、平田、無我を保健室まで運んでやれ。完全に意識を失ってる」
夕菜「は? 意識を失った?」
総真「無我に近づいて見ればわかる」
夕菜と平男が無我に近づく。
平男「……あらら、寝ちゃってるよ」
夕菜「こ・い・つ・はぁ」
平男「ははは。きっと昨日寝てないんだよ」
夕菜「昨日?」(そういえばこいつ、昨日の夜から居なかったけど……、いったいどこに行ってたんだろう)
総真「いつまでそいつを椅子で寝かす気だ? 早く運んでやれ」
無我が運ばれた後も、神威はその場から動こうとはしなかった。
神威(……僕が、動くことさえ出来なかったのか?)
・Episode.2 「Encount」へ続く
――ガーディアンスクール、3-A教室。
夕菜「おはよ」
平男「ははは、おはよう。これであとは法名くんを待つだけだね」
夕菜「え? あいつ、まだ来てないの?」
無我の席を見てみる。――無人。しかも机に鞄がかけていない。
平男「そうだね。いつもなら早くに来て机で寝ているのにね」
夕菜「ちょっとぉ。大将のあいつが来ないんじゃ、私たち失格になっちゃうんじゃない?」
「なんだかんだ言って、結局は楽しみにしてたんじゃないか」 例の如く、幻斗がひやかしにくる。
平男「そうだ、この際桐生くんに出てもらおうよ」
幻斗「仕方ねぇな。俺はいいが、そちらさんは?」
夕菜「せっかくで悪いんだけど、昨日にメンバー表を提出してんのよ。変更はもう無理」
幻斗「変装かぁ。あんま、得意じゃないんだな」
平男「いっそ桐生くんに、フォースで作った法名くんの人形をコーティングしちゃおうか?」
夕菜「なに、無理にでも出場する相談してんのよっ!」
チャイムが鳴り響く。
平男「どうしよう。もう別館の方に移動しないと……」
そのとき、廊下をあわただしく走る音が聞こえてくる。勢いよく、教室の引き戸が開く。
無我「ま、間に合ったか?」 息を切らせながら、無我が現れる。
平男「ギリギリセーフだね」
夕菜「セーフじゃないわよ。早く別館に急がないと」
無我「あ、ああ」 無我はまだ息を切らしている。
幻斗「! 待て、無我」
無我「なんだ幻斗?」
夕菜「ちょっと、時間がないのよ? わかってる?」
平男「ははは。僕らは先に行ってるね」 夕菜と平男は階段を降りていった。
幻斗「――お前、寝てないだろ?」
無我「……ああ」
幻斗「また、任務か。おまえ、本当に大丈夫か?」
無我「心配するな。こんなイベントくらい、どうってことない」
幻斗「そうか……。なら俺は何も言わない」
無我「ま、中継映像を楽しみにしてろ」
無我は別館へと向かっていった。
――ガーディアンスクール、別館。仮想空間装置室。
夕菜「すいません、遅れました」
引き戸を開け、夕菜と平男が入ってくる。他の組の代表者たちはもう揃っている。
総真「いや、それはいいんだが……、もう一人、無我はどうした?」
平男「法名くんはすぐにくると思いますよ」
そういってる間に無我が入ってくる。
無我「やっぱ、俺が最後か」
総真「無我、席につけ。じゃあ、ルールを説明するぞ」
このBoutは仮想空間装置を使い、仮想空間内で行われる。仮想空間に入ると、それぞれにライフが1.000pt与えられる。当然、このライフが0になった者が負けとなる。対戦は四組がリーグ形式で戦う。まずはA組 対 D組、B組 対 C組の対戦を行い、その後A 対 B、C 対 D、A 対 C、B 対 Dと対戦していく。優勝は各試合で得た勝ち点が多い組となる。勝ち点は、ライフを0にして勝てば3pt、その他審判の判定等で勝った場合は2pt、引き分けは両者に1ptが与えられる。
総真「以上だ。なにか質問は?」
……ないようで。
総真「何人かは、とっとと始めろって顔をしてるな。よし、始めるぞ。A組先鋒、舞川 夕菜」
夕菜「はい」 呼ばれた夕菜は、部屋のスクリーンの前のヘルメットのようなものが置かれている机の前に座る。
総真「D組先鋒、真壱 遥(まいち はるか)」
遥「はい」 真壱と呼ばれた女子生徒が前に出る。
二人は机に置かれたヘルメット――仮想空間装置を装着する。すると、何も映し出されていなかったスクリーンに二人の姿が映し出される。
総真「二人とも、準備はいいか?」
遥「こちらは問題ないわ」
夕菜「私も準備OK」
総真「よし。A組 対 D組、先鋒戦、始めっ」
最初にフォースを展開したのは遥だった。右手に大弓、左手には矢を作り出す。
夕菜「弓矢? 間合いをとって戦うタイプってこと?」
遥「あなたはフォースを展開しないの?」
夕菜(……結局、いい武器は思いつかなかったか)「いくよ」 右手が光出す。そして形を変えていく。
夕菜が作り出したのは、変哲のないただの剣だ。
遥「剣? ……すこしガッカリね、そんなありきたりの武器」
夕菜「こういうのが一番こわいっての、思い知らせてあげるわよっ」
剣を構えた夕菜が間合いを詰める。
夕菜(これで後ろにひくはず。その隙を――)
遥は左手の矢を消して、新たにダーツの矢のような小さな矢を三本作り出す。そして、左手を振り、矢を飛ばす。
夕菜「! 反撃してきた? くっ」 体制を変え、攻撃を回避する。だがそれは攻撃を取りやめる行為となる。
その隙を遥は見逃さない。すでに遥の左手は弓の矢を作りだし、その弦を弾いていた。
遥「そんな囮を本気になってかわすから、こうなるのよ」
夕菜は放たれた矢を回避できない。
[夕菜、ダメージ 92(908/1000)]
夕菜は体を反転させ、直撃を回避する。背中の部分、矢がかすめていった後に赤い光のスジがあらわれ、ゆっくりと消えていく。そして、夕菜のダメージ表示が減り出した。
遥「あの体制から回避したっていうの?」
夕菜「あんまり、なめないでよね。反撃、いくよ」
体制を立て直した夕菜は、再度遥に切りかかる。しかし、夕菜と遥の距離は今、遥の間合い。弓を撃つのにちょうどいいくらいに離れている。
遥「その距離でなにが出来るというの? そちらが近づく前に射抜いてあげる」 矢先を夕菜に向け、弦を引く。
夕菜「こういうのはどうかしら?」 直進から左サイドに飛び、足をつくとすぐに右へ飛ぶ。その繰り返しで、ジグザグに移動しながら間合いを詰めていく。
遥「小賢しい真似を」 これでは攻撃が定まらない。
夕菜「なんとでもっ。これでダメージよ」 適度な距離になったところで、剣を振りかぶる。
額に赤いスジが走った。
[ダメージ 114。……夕菜(794/1000)]
夕菜「え?」
遥「私の武器が弓だからって、間合いを詰めれば勝ちっていう考えは甘すぎね」 振り上げられた右手には、矢が短く持ってあった。
夕菜「矢で、直接攻撃してきたの?」
――仮想空間装置室
「さすがだな。A組の彼女も決して弱くはないのだが」 仮想空間内を映し出すスクリーンに向かって彼は一人呟いていた。
彼の名は『氷室 神威(ひむろ かむい)』。今回のBoutではD組の大将を務めている。彼についての説明をするのならば、一言で済む。「天才」と。
平男「うーん、このままじゃ勝てないや。せめてアドバイスでも出来れば……」
総真「は? なにいってる、待機メンバーのアドバイスを禁じてなんかいないぞ?」
平男「でも、仮想空間に声が届かないよ?」
総真は装置の両サイドに置かれたマイクを指差す。
神威、平男「「!」」 二人はそれぞれ両サイドのマイクの前に立つ。
今、夕菜と遥はお互いの動向を探り合っていた。間合いは遠すぎず、近すぎずの距離。どちらかが仕掛けようとすれば、片方が自分の距離に移動できる。そう、今は互いに動くことが出来ないのだ。
夕菜(チャンスは一瞬。彼女が弓を構えたとき。一気に間合いを詰めて――)
遥「いつまでそうしているつもり? このまま判定になれば勝つのは私なのよ?」
夕菜「!」(そうだった。このままじゃ――、どうせ負けになるんだったらっ)
「挑発に乗っちゃダメだよ」 仮想空間内に、平男の声だけが響く。
夕菜「平男?」
平男「間合いにばっかこだわらないで。弓は遠距離に強いけど、点でしか攻撃できないって欠点もあるんだ。だから――」
夕菜「OKっ、もういいわ」
夕菜は遥の周りを回りながら距離を縮めていく。
遥「しょせん、現状を回避するためだけのアドバイスだったようね。さっきの二の舞よ」 弓を少し下にさげ、矢を強く握りしめる。
夕菜「……もらったぁ」 夕菜は接近戦に備えた遥に対し、夕菜は笑みを浮かべる。
神威「真壱っ、弓を捨てて回避の体勢をとるんだ」
夕菜は距離は詰めずに右手で剣を投げつける。剣は回転しながら遥に向かっていく。しかし遥はすでに弓を破棄していた。体勢を低くした遥の頭上を、剣は回転しながら飛来していく。
遥「まさか、剣を投げてくるなんて……」
夕菜「くぅ。アドバイスがなければダメージだったのにぃ」 投げて消えてしまった剣を作り直す。
夕菜の武器生成の隙をついて、遥が矢を射ってきた。
平男「舞川さん、なにしてるのっ」
夕菜「! しまった、距離をとられた」 飛来する矢を剣で叩き落す。
そして、遥に目を向ける。遥は弓を夕菜のかなり上方に向けている。
夕菜「なに? なんでそんなところを?」 上方に目を向けても何もない。
平男「なんのつもりかは知らないけど、攻撃をさせちゃダメだよ」
夕菜「言われなくてもわかってる」 瞬発的に前へと踏み込む。
遥の矢が上方に放たれる。
夕菜「的外れの攻撃をっ。本人ががら空きよ」 二人の距離は縮まっていく。
平男「! ダメだっ。後ろに飛び退いて」
夕菜「なにいってんの! これで」 夕菜の間合い。剣を両手で持っての横薙ぎが遥を狙う。
遥「仲間のアドバイスは聞くものね」 夕菜の剣を後方へ飛び退き回避する。
夕菜が二撃目に行こうとした時、夕菜の上方から無数の矢が降り注ぐ。
遥「さよなら、お・莫・迦・さん。――『アローレイン』」
夕菜「きゃあぁぁぁぁぁ」
夕菜の身体に無数の赤いスジが刻まれていく。圧倒的な数の矢は夕菜に大ダメージを与えていく。
[夕菜、TOTALダメージ 762(32/1000)]
夕菜(なによコレ? 一方的じゃない) 剣から手を離し、直立不動となる。
遥「勝負を捨てるの? ……当然ね。もう、勝負は見えてるものね」
夕菜(このまま負ける気なの? 冗談じゃないっ)「……こなくそぉぉぉ」 突然、炎が夕菜を包む。炎は降り注ぐ矢を燃やしていく。
遥「な、なに?」
平男「わっ、舞川さんが燃えている」
神威「炎の、エレメンタルフォース」
[* エレメンタルフォース=自然現象をフォースにて再現する能力。かなり高度なうえ、自分に相性の良い属性しか使用することが出来ない]
夕菜の炎は途切れることなく燃え続ける。
遥「やっかいな炎ね。フォースを無効化する効果を備えている。……でも、そんな勢いで出し続けていいのかしら?」 ゆっくりと距離を離していく。
夕菜「これ、どうすればいいのよ?」 燃え盛る炎をどうすればいいのか分からずにいる。
平男「何かをイメージして。炎を調整しないと――」
夕菜「しないと、どうなんのよっ?」
遥「単純なこと。今もあなたはフォースを消費し続けている、そしてフォースは無限の力じゃない、もう、わかるでしょ?」
夕菜「! イ、イメージ。炎を消すイメージを」
遥「いいのかしら? 残りのライフが少ない状態で、その絶対防御の炎を消して」 弓の狙いを定める。
夕菜「!」
平男「惑わされないで! どちらにしろ、フォースが切れたら攻撃が出来なくなって負けになるんだよ?」
夕菜「そうね……。なら、このまま仕掛ける」 炎に包まれたまま、剣を構える。当然、剣も炎に包まれていく。
神威「真壱、距離をとれ。彼女の炎はせいぜい二、三分が限度だ」
遥「それは聞けないわ。そんな勝ち方、面白くないもの」
夕菜「願ったりね」 夕菜が斬りかかる。
遥「その炎、貫いてみせてあげる」 正面から向かってくる夕菜に対し、矢を放つ。
夕菜「そんな攻撃にかまっていられないのよ!」 矢が夕菜に当たる。その瞬間、矢は燃え尽きて消える。そして、炎の剣が遥に赤いスジを残す。
[遥、ダメージ769(231/1000)]
遥「一撃で半分以上も!?」
夕菜「か、勝てる。これなら」
平男「早く追撃をっ。そのまま勝負を決めるんだ」
夕菜「分かってるっ」 振り下ろした剣をそのまま振り上げる。二撃目が遥を襲う。
遥「やらせないっ」 遥は目の前に光の球を作り出す。
神威「無属性フォース!? なにをする気だ?」
夕菜「いまの私にフォースは効かないっ」
遥「あなたには、ね」
遥の作り出した光球が爆発する。そして、爆発に飲まれた遥は後方へと吹き飛ばされた。
[遥、ダメージ112(119/1000)]
夕菜「自爆?」
平男「! しまった、距離を取られた」
夕菜「くぅ、セコイ手を」
遥「このまま逃げるんだったら笑われても仕方ないわね。けど、距離を取ったのは時間稼ぎが目的じゃないの」 吹き飛ばされた体勢から弓を構える。
そして、矢を構えた弓の弦を何度も捻っていく。
遥「『スパイラルアロー』」 放たれた矢は回転しながら夕菜を襲う。
夕菜「どんな技でこようと、私の炎が焼き尽くす」
遥は身体を反転させ、着地する。
遥「今の私の最強技よ。燃やせるものなら燃やしてみなさい!」
スパイラルアローと夕菜の炎がぶつかり合い、火の粉を飛ばす。
遥「貫けぇぇぇ」
夕菜「燃え尽きろぉぉぉ」
矢じりが炎の中に隠れる。
遥「! 決まったっ」
夕菜「うおぉぉぉぉぉぉぉ」 炎の勢いが爆発的に上がる。
スパイラルアローは燃え尽きはしなかったものの、炎の勢いに粉砕される。
遥「! 貫け、なかった」
夕菜「これで、終わりよ」 夕菜が遥の方に向かう。
神威「……そろそろだな」
剣を振り上げたとき、夕菜の炎が消えた。そして、振り下ろす間、徐々に剣が消えていく。
夕菜「フォースが、消えていく」
神威「なにをしてる真壱っ、早く攻撃しろっ」
遥「……」 遥は動こうとしない。
夕菜「くぅ。なにか、なにか出てよっ」 夕菜はフォースウェポンを作り出そうとしているが、反応はない。
平男「完全な、フォース切れだよ」
総真「……うん、そこまでだ。勝者、D組、真壱 遥」
仮想空間装置のバイザーが上がり、二人は現実へと戻ってくる。すぐさま神威が遥に駆け寄った。
神威「なぜ彼女のライフを奪わなかった?」
先ほどの試合でD組は2ptを得た。しかしそれは遥がとどめをささなかったからである。遥がとどめをさせば、本来3pt得ていたのだから。
遥は装置を外し、席を立つ。そして、神威に対し言い放つ。
遥「あの試合、完全に私の負けよ」 振り返らずに自分の席へ。
一方、夕菜はまだ、仮想空間装置をつけたままでいる。
平男「ははは。ま、仕方ないよ。能力が目覚めただけ儲けものだったと思って――」
夕菜「平男」
平男「ん? なに?」
夕菜「こんなこと言える立場じゃないけど……、勝ってね」
平男「うん、任された」
「ひどいなぁ、夕菜ちゃん。友人に対して負けろって言うの?」 美紅が近づいてきた。
夕菜は一息をついて装置を外す。
夕菜「今は敵同士、でしょ?」 微笑ながら美紅に言った。
美紅「そうだったね。……平田くんだっけ? 私、そんな簡単にはやられないよ?」
平男「ははは、楽しみだね」 夕菜が外した装置を身につける。
夕菜「マイクには私が立つわ」 夕菜はマイクの方に移動する。
神威「こちらは僕が引き続いて立たせてもらう。いいな、真壱?」
遥「勝手にして」
美紅「じゃあ、始めましょうか」 美紅も装置を身につける。
総真「よし、準備はいいようだな。副将戦、A組、平田 信男 対 D組、五十嵐 美紅」
仮想空間内の二人が身構える。
総真「始めっ」
号令と共に動いたのは平男だった。
平男「速攻でいくよ」
平男はナイフを作り出す。そして、野球のアンダースローのように、地を這ってナイフを振りかぶる。そのまま、ナイフの刃を飛ばすトリガーを押す。ナイフの刃は美紅に向かって飛んでいく。
美紅「! ……糸?」 美紅は刃と握り手をつないでいる細い糸を見落とさなかった。
平男「そう。このピアノ線の意味はすぐにわかると思うよ」
美紅「それが仇になるってことね」 美紅はフォースウェポンで杖を作り出した。その杖を回転させ、身構える。
刃が美紅を襲う。美紅は上体を軽くそらして回避する。
平男「あまいよ」 握り手を釣り竿のように引き上げる。
美紅「そうでもないみたいですよ」 杖でピアノ線の部分を引っ掛ける。ピアノ線は杖に巻きつき、杖と刃がぶつかり合って音を立てる。
平男「ははは。簡単にはいかないか」 杖に絡まって使い物にならなくなったナイフを消して、新しいナイフを作り出す。
美紅「今度はこちらからいきます」
平男「あ、いっとくけど、それが殴打目的の杖とは思ってないから。なにかの媒体ってとこでしょ?」
美紅「そのとおり。――そして、これがその能力です」 杖の先端が白く光輝く。
夕菜「! あれは、無属性のフォース」
平男「ははは。さっきの試合で真壱さんが使ったやつだね」
美紅「そうですね。……ただ私の場合、適応する属性が無属性だったってことなんですけどね」
杖を振ると、光が球状になって平男に襲い掛かる。
平男「ただ飛ばすだけなの?」 かなりの速度で光球は飛来してくるのだが、平男はなんなく回避する。
平男「……返ってこないよね?」 光の球が飛び去った方向へ振り返る。
美紅「大丈夫。あれは当たれば爆発するだけで、そんな効果はないです。でも、単発ではもう撃ちませんから」 今度は杖を一振りすると、多数の光球が放たれる。さらにそれを連続で振る。
平男「わわわ、連続で来た」
美紅の放つ光球は平男の足元や背後で次々爆発していく。
平男「まずいかな? このままじゃダメ-ジだね。――! 五十嵐さんがいない!?」
夕菜「平男、美紅はあんたの背後よ」
美紅の杖から、白い光が放たれる。その光は平男の背中に直撃した。
[平男、ダメージ291(709/1000)]
神威「五十嵐、ナイフがくるぞ」
直撃を受け、前方に吹き飛ばされながらも平男はナイフの刃を飛ばしていた。
美紅「うそ? あの体勢から私を狙ったというの?」
反応の遅れた美紅の頬をナイフがかすめる。
[美紅、ダメージ69(931/1000)]
平男「あたたた。うーん、やられちゃったなぁ」 顔面から倒れこんだ平男が起き上がり、構えを取り直す。
美紅「そのナイフ、少しやっかいですね」
平男「そう? なら、僕も連続でいっちゃおうかな」 右手にスプリングナイフを、そして、左手には投げナイフを三本作り出す。
三本のナイフを美紅に投げつける。
美紅「投げナイフのけん制から、あの刃が飛ぶナイフでの攻撃。――読めてます」 光球による、投げナイフへの迎撃。光球の爆発により、三本のナイフが弾き飛ばされ、スプリングナイフに備え、杖を身構える。
神威「違う、三段攻撃だ。彼が直接来るぞ」
杖にナイフの糸が巻き付いていく。
平男「がら空き、だね」 平男の持つピアノ線の延びた握り手から新たな刃が現われる。
無防備の美紅にナイフが襲う。
美紅「シールドっ」 美紅は平男と美紅の間に無属性フォースの盾を作り出す。
すると平男は真横にナイフの刃を飛ばした。盾を回り込んで、後方から刃が襲う。
美紅「そんなの、ここならっ」 美紅は平男の後方に回り込む。
平男の攻撃は平男自身に返ってくる。
平男「ありゃりゃ」 フォースを消して、すばやく振り向いた。
美紅「なにか、がっかりですね。……いいかげん、手を抜いて戦うのはやめてもらえませんか?」
夕菜「手加減? ちょっとなによ。あんた、手を抜いて戦ってわけ?」
美紅「おおかた、私程度って思っているんじゃないですか?」
平男「うーん。そんなつもりじゃなかったんだけどなぁ……。仕方がない。じゃあ、本気でいくけど、勝ちたいなら今のうちにライフをなくしたほうがいいよ?」
平男の右手の平に光の渦が現われる。しかし、渦が出続けるだけでフォースウェポンは形成されない。
神威「五十嵐、勝ちにいけ。……時間をかけて形成する能力は危険だ」
美紅「……そうですね。悪いけど、実戦で使えない能力を本気と認めるわけにはいきませんね」
平男「だから、攻撃していいよって。僕だって負ける気で言ってるわけじゃないんだから」
美紅「いきますよ」 杖から光球を放つ。
平男は身体を反らし、光球を回避する。
美紅(問題はあのフォースが直接攻撃か遠距離かってことなんだけど……、彼の攻撃は遠距離型。ならっ)
美紅は杖を構え、距離を詰める。杖は無属性のフォースに包まれ、攻撃力を高めている。
美紅が攻撃の間合いを詰め、杖で殴りかかる。振り下ろしを回避、二撃目の横薙ぎを後方に飛びのいて回避するが、その体勢では三撃目の突きは回避できない。
[平男、ダメージ198(511/1000)]
平男「そうそう」 突きをくらって背中から倒れるが、右での渦は止まらない。
美紅は攻撃の手を止めない。倒れた平男の腹部に目掛けて、杖を突く。
[平男、ダメージ175(336/1000)]
平男「ぐぅ」 腹部への強い衝撃に、平男はたまらず声を上げる。
美紅「もう一発」 美紅は再攻撃のため、杖を振り上げる。
次の瞬間、美紅は杖を振り上げた体勢から動かなくなってしまった。
平男「タイムアウト。はは、完成だよ」
胸元に金属の冷たい感覚が走る。
美紅「これって、まさか……」
平男「そう。これが僕の本当のフォース。……拳銃だよ」
神威「五十嵐、なにを躊躇している。銃をフォースウェポンにしているものはいくらでも居る」
平男「でも、これがそういう人たちのフォースとは違うってことはわかっているはずだよね、氷室君? ……銃の精製に時間がかかったのは内部部品を組み合わせてたため。これはそういう人たちの張り子とはわけが違うの。さぁ、どう出るのかな? 五十嵐さん」
美紅「……」(フォースの盾を作って弾丸の威力を弱め、反撃で決める。仮にライフが残っても距離をとれば) 杖を握る手に力が入る。
平男「――相打ち覚悟? うん、僕もそれがいいと思うよ」
美紅は胸元の突きつけられた拳銃から離れる。ここからは時間が勝負。美紅は自分と平男の間に盾を展開する。そして、杖を振り下ろした。
空気を裂くような轟音が轟く。弾丸を受け、目の前でフォースの盾の破片が飛び散っていく。そして、その弾丸は美紅の胸元を貫いた。
[美紅、ダメージ1202(0/1000)]
美紅「そ、そんな……、半分程度、威力をかき消してるはずなのに」
平男「うん、多分消されちゃってるね。2000はいくと思ってたもん」
総真「勝者、A組 平田 信男」
装置のバイザーが上がり、二人は現実世界へ。
夕菜「よくやった、平男。これで1ptリード」
美紅「負けた私に慰めはないの?」
夕菜「今は敵、でしょ?」
美紅「厳しいなぁ」 美紅は装置を外し、自分の席へと向かう。
平男「よいしょっ、あとは法名君だね」
神威が装置の前に座る。
神威「こちらの準備はいい。そっちは?」
神威の声に無我のいる方を見てみると、無我はうつむいて座っていた。
夕菜「ちょっと、あんたの番よ」
反応なし。
夕菜「無我っ、聞いてるの?」 夕菜が無我の席に近づく。
夕菜「! ……寝ている」 そばにいると聞こえてくる吐息。
平男「はい?」
夕菜「ちょっとぉ、起きなさいよっ」 思いっきり無我の身体を揺らす。
無我「……やめろ、気持ち悪い」 頭を抑えながら、無我が立ち上がる。
夕菜「起きた? 起きたんなら、行きなさいよ」
無我「ん? ――ああ、俺の番か」 ゆっくりと装置の方へと歩いていく。
夕菜「……あいつ、大丈夫なの?」
無我が席に着き、装置を装着する。そして、バイザーを下ろし電源を入れる。
神威「!」 無我が電源を入れたのに気づき、慌てて装置の電源を入れる。
総真「お、おい? ……ったく、勝手なことを」
仮想空間に無我と神威が現れる。
総真「おーい、準備はいいか?」
神威「こちらは準備出来てます」
無我「……」 無我の返事はない。
総真「無我? 準備いいか? ……まあいい、始めるぞ。大将戦、A組 法名――」
誰もがその目を疑った。一瞬だった。無我を意識していなかったのは開始の号令が耳に入ってくるその時だけ。しかし、無我の斬糸は神威の首に赤いスジを残していた。
[神威、ダメージ―――――]
ダメージ表示が高速で変化していく。その表示桁は三桁、四桁、五桁へと。
総真「あのバカっ」 総真は仮想空間装置を操作して、二人を仮想空間から強制的に離脱させる。
バイザーが上がり、装置が着脱可能な状態になるが、二人とも動かない。
総真(ちぃ、60000を超えるダメージだ、ショックがでかいか)「氷室っ、大丈夫か?」 総真は神威に駆け寄った。
神威の目の前に手をちらつかせ、瞳の反応を見る。神威の目は総真の手の動きを追う。
総真(……たいしたものだ。現実なら確実に死んでいるダメージを受けたのに)
総真「この勝負、A組の反則負けを宣言する」
夕菜「ちょ、ちょっとぉ。なんで反則なのよ?」
総真「開始号令前の奇襲攻撃だ。……さらに言うなれば、体調の管理不足だな。舞川、平田、無我を保健室まで運んでやれ。完全に意識を失ってる」
夕菜「は? 意識を失った?」
総真「無我に近づいて見ればわかる」
夕菜と平男が無我に近づく。
平男「……あらら、寝ちゃってるよ」
夕菜「こ・い・つ・はぁ」
平男「ははは。きっと昨日寝てないんだよ」
夕菜「昨日?」(そういえばこいつ、昨日の夜から居なかったけど……、いったいどこに行ってたんだろう)
総真「いつまでそいつを椅子で寝かす気だ? 早く運んでやれ」
無我が運ばれた後も、神威はその場から動こうとはしなかった。
神威(……僕が、動くことさえ出来なかったのか?)
・Episode.2 「Encount」へ続く
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