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May
5月15日(水) 模試①
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模試だ。より正確に言うなら、福大模試。
いくつか存在するテストの一つであり、普段の勉学積み重ねを大人数で競い合って、自らの指標とする大事な催し。
そんなテストが本日行われ、また教科数と実施時間の関係上、丸一日拘束されるということで朝から登校してみれば、俺の席の前二つは既に埋まっていた。
机に突っ伏したような体勢で、ダウナーな雰囲気をまき散らしながら。
「何だよ朝から、テンション低いな」
「……おう、おはよう翔真」
「……あっ、畔上くんおはよー」
声を掛ければ、息を合わせたように二人して緩慢な動きで身体を起こす。
それと同時に、返ってきた答えも似たようなものとなっていた。
「いや、なに……国語の記述がだるいなぁ、って思ってな」
「…………数学いやだ」
「相変わらず両極端な能力分布だよな、二人は」
でも、それが俺には羨ましい。
だって、裏を返せば得意としている部分には絶対的な自信を持っていると言っているようなものなのだから。
苦手教科ばかりに意識が向き、得意科目は眼中にもない。
そんな精神を俺も持てたら……。
「逆に翔真はどうなんだよ?」
「今日のテスト、行けそう……?」
「どうだろうな……取り敢えずはやれるだけやってきたけど…………」
傍から聞けば何の当たり障りもない解答ではあるが、それは紛れもない俺の本心である。
だから、そんな息の合った二人の質問に対しても、そう答えるほかなかった。
「――翔真くん、かなちゃん……あと、蔵敷くんもおはよう」
「うん、おはよう」
「おはよう、詩音」
「……おはよう」
そこに加わるは、いつものメンバーである四人目。
自席に通学バッグを置いた彼女は、所持品の整理をしつつこちらの会話に乗ってくる。
「それで、皆で何の話をしていたの?」
「今日のテストに対する意気込み、かな。詩音さんはどう?」
簡単に話をまとめつつ似たようなニュアンスで問いかけてみれば、その笑顔は固まり、額には冷や汗のような水滴が滲み始めた。
「あー…………うん、頑張る」
その一言で全てを察せそうな勢いではあるが、俺の記憶が正しければ詩音さんの成績はそれほど悪くなかったはず。
少なくとも、全教科で平均点を超える実力は持っている。
変に力まず、自分の力を出して欲しい。
そう願いながら、俺たちの戦いは始まった。
♦ ♦ ♦
テストの合間。僅かばかりの休憩時間。
そんなつかの間の空隙に、皆は一体どうしているのだろうか?
親友であるそらは、持つべき幼馴染と次の教科の復習だ。
お互いに得意分野と苦手分野が逆ということもあり、補完するように一方が他方を教えあっている。
また、詩音さんは自身の綺麗なノートを見返しながら、一人で集中していた。
学生としてそれは正しいあり方であり、また模倣すべき姿だ。
ならば、俺もそれに倣って勉学に励むべきだろう。
いつもの三人がそういう状況であるのだし。
――しかし、そうは問屋が卸さない。
なぜなら俺には、他にも話をするような友達がいるから……である。
机に集まり、終わったテストについて様々な意見を彼らは述べる。
曰く「あの問題が難しかった」、「翔真はどれくらい解けたか」、「すげぇ……やっぱ、天才だな」、「運動もできる上に勉強もだなんて、羨ましいぜ」。
そう言われる度に、俺は違和感に苛まれた。
確かに勉強においてもスポーツにおいても良い成績を頂いてはいるが、それは相応に努力したからだ。
もちろんそればかりではない。遊びもした。ゲームだってする。
けれど、全ては日々の積み重ねがあるから。
だから、軽々しく天才という言葉で締めくくって欲しくはない。むしろ真逆の存在だ。
それに、学年一位という重責はかなり重い。
無責任な期待ばかりがのしかかって逃げられず、前に進んでも今度は全国一位という苦悩しか待ってはいない。
退いても、進んでも、そこは地獄だ。
ただ、頑張っていただけだというのに。
「――始めっ!」
そうしてまた、試験は始まる。
必死に頭を巡らせながら。
いくつか存在するテストの一つであり、普段の勉学積み重ねを大人数で競い合って、自らの指標とする大事な催し。
そんなテストが本日行われ、また教科数と実施時間の関係上、丸一日拘束されるということで朝から登校してみれば、俺の席の前二つは既に埋まっていた。
机に突っ伏したような体勢で、ダウナーな雰囲気をまき散らしながら。
「何だよ朝から、テンション低いな」
「……おう、おはよう翔真」
「……あっ、畔上くんおはよー」
声を掛ければ、息を合わせたように二人して緩慢な動きで身体を起こす。
それと同時に、返ってきた答えも似たようなものとなっていた。
「いや、なに……国語の記述がだるいなぁ、って思ってな」
「…………数学いやだ」
「相変わらず両極端な能力分布だよな、二人は」
でも、それが俺には羨ましい。
だって、裏を返せば得意としている部分には絶対的な自信を持っていると言っているようなものなのだから。
苦手教科ばかりに意識が向き、得意科目は眼中にもない。
そんな精神を俺も持てたら……。
「逆に翔真はどうなんだよ?」
「今日のテスト、行けそう……?」
「どうだろうな……取り敢えずはやれるだけやってきたけど…………」
傍から聞けば何の当たり障りもない解答ではあるが、それは紛れもない俺の本心である。
だから、そんな息の合った二人の質問に対しても、そう答えるほかなかった。
「――翔真くん、かなちゃん……あと、蔵敷くんもおはよう」
「うん、おはよう」
「おはよう、詩音」
「……おはよう」
そこに加わるは、いつものメンバーである四人目。
自席に通学バッグを置いた彼女は、所持品の整理をしつつこちらの会話に乗ってくる。
「それで、皆で何の話をしていたの?」
「今日のテストに対する意気込み、かな。詩音さんはどう?」
簡単に話をまとめつつ似たようなニュアンスで問いかけてみれば、その笑顔は固まり、額には冷や汗のような水滴が滲み始めた。
「あー…………うん、頑張る」
その一言で全てを察せそうな勢いではあるが、俺の記憶が正しければ詩音さんの成績はそれほど悪くなかったはず。
少なくとも、全教科で平均点を超える実力は持っている。
変に力まず、自分の力を出して欲しい。
そう願いながら、俺たちの戦いは始まった。
♦ ♦ ♦
テストの合間。僅かばかりの休憩時間。
そんなつかの間の空隙に、皆は一体どうしているのだろうか?
親友であるそらは、持つべき幼馴染と次の教科の復習だ。
お互いに得意分野と苦手分野が逆ということもあり、補完するように一方が他方を教えあっている。
また、詩音さんは自身の綺麗なノートを見返しながら、一人で集中していた。
学生としてそれは正しいあり方であり、また模倣すべき姿だ。
ならば、俺もそれに倣って勉学に励むべきだろう。
いつもの三人がそういう状況であるのだし。
――しかし、そうは問屋が卸さない。
なぜなら俺には、他にも話をするような友達がいるから……である。
机に集まり、終わったテストについて様々な意見を彼らは述べる。
曰く「あの問題が難しかった」、「翔真はどれくらい解けたか」、「すげぇ……やっぱ、天才だな」、「運動もできる上に勉強もだなんて、羨ましいぜ」。
そう言われる度に、俺は違和感に苛まれた。
確かに勉強においてもスポーツにおいても良い成績を頂いてはいるが、それは相応に努力したからだ。
もちろんそればかりではない。遊びもした。ゲームだってする。
けれど、全ては日々の積み重ねがあるから。
だから、軽々しく天才という言葉で締めくくって欲しくはない。むしろ真逆の存在だ。
それに、学年一位という重責はかなり重い。
無責任な期待ばかりがのしかかって逃げられず、前に進んでも今度は全国一位という苦悩しか待ってはいない。
退いても、進んでも、そこは地獄だ。
ただ、頑張っていただけだというのに。
「――始めっ!」
そうしてまた、試験は始まる。
必死に頭を巡らせながら。
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