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「なあ、流石に1回依頼達成の報告行って、金もらって新しい防具買わねえか?」
「賛成。武器は冒険者ギルドでもらったやつがあるから良いけど、防具はこれじゃ物足りない」
「お前ら慣れてないから攻撃当たってそう思うだけで、もっと先の攻撃力がヤバい奴が敵になってから買う方が安く済むぞ」
「そうそう。別に痛覚はほぼ無いようなもんだし、死にそうになったら逃げればいいって」
「俺等は何でも良いぞ」「任せる」
これは街の外でモンスターを倒して経験値とお金を稼ぐ、王道のプレイをするパーティーの1つである。
角ウサギやスライムを倒しているパーティーは他にも見られ、皆武器と防具の装備差が激しいプレイヤーばかりだ。
これまでこういったVRMMOをやってこなかったプレイヤーは、敵は倒せるが体力が持たず、街の近くで倒しては街に帰って回復をするというのを繰り返していた。
「じゃあ街の近くで戦わせてくれよ。そしたらすぐ回復して戦えるのに」
「そうだよ。それができないなら装備は必須」
序盤では特にプレイヤースキルに差があると、パーティーとして動くことは難しくなる。
街中に入ると自然回復が行われ、レベルも低い今はすぐに全回復する。
このシステムを使ってお金をケチって回復アイテム無しでモンスターの討伐をするのはよくあることだ。
そういうわけで、自然とプレイヤー達の実力を街との距離で測れることになる。
プレイヤースキルのある者は街から離れた場所に行くことが出来るので、強いモンスターと戦うか、数多くの弱いモンスターを倒せる。
逆に慣れていないプレイヤーは街の近くで戦って、ダメージを受けたらすぐ街の中に入り回復をする。多くのモンスターを相手にできないので、初心者にとって環境としてはとても良いのである。
「でもなぁ、敵少ねえし経験値も美味しくねえ
。効率考えたら限界まで外側出れたらアツいんだよ」
「ただ、出過ぎたらさっき見た人みたいに大量の角ウサギに襲われたりするからな。周りに人も少ないし、モンスタートレインしてる人見たらMPK注意」
モンスタートレインとは、大量のモンスターを引き付けることを指し、そのモンスター達を押し付けてプレイヤーを倒すことをMPKと言う。
「でもパーティーはこの6人で組むって決めたんだし、俺等が慣れるまでは手伝ってくれよ」
「まぁしゃあねえか」
結局リーダーらしき者が折れ、6人は街に戻っていった。
MPKの話が出たように、自分達以外のプレイヤーからモンスターを擦り付けられることを考えると、無理はできないという判断だったのだろう。
場所が変わって、これも街の外でモンスターを狩るパーティー。
ただし、先程のような実力がバラバラのパーティーではなく、最前線攻略をしている者たちのパーティーである。
「そろそろレベル上がるか?」
「分かんない。このゲーム経験値のゲージないし」
「武器も装備してなかったらステータス画面のスキルに表示されないし、何よりもステータスの仕組みが謎なのがヤバい」
「確かにステータスポイントが無いのは不便だが、ある意味振り分けに悩まなくて良いのは俺好みだ」
誰もモンスターの攻撃を受けた形跡はなく、パーティー全体での動きが揃っている。
話しながらも連携して格上のモンスターたちを倒す様は、もはや芸術のようだ。
「そういえばユーマさんもやってるだろうけど、流石に会えなかったな」
「運が良ければユーマならここらへんで狩っててもおかしくない」
「いや、あいつそういうのに疲れたから辞めたんだろ。俺らが街に戻った時会えるかどうかって感じじゃね?」
「おい、横からデカいの来たぞ」
「あれは流石に今は無理だね」
「クリティカル出してノーダメージでしょ」
このパーティーの面々でも今は倒すことのできない敵が現れ、相手の攻撃をギリギリでかわしながら、敵のテリトリーの外まで出てきた。
「丁度いいし街に戻って依頼の達成と、素材と装備の交換を済ませよう」
「まだ強い防具は作れてないんじゃない?」
「今は防御力よりも敏捷の+値が重要そう」
「それよりも攻撃力上がる装備が良いでしょ。もうしばらくは避けれる気がする」
他のプレイヤー達よりもレベルは少し高いものの、敵よりもステータスが劣っているにも関わらず戦えているのは、彼らのプレイヤースキルがあってこそである。
「じゃあ今回の休憩時間はあまり取れないと思っていてくれ。すぐに他の場所を探索しなければならない」
「ここは一気に難易度上がったし外れだったもんね」
「結局全部回るんだし、最初に外れ引いたのは良かったっしょ」
レベル上げに使うことができなかった場所を離れ、すぐに次の予定を立てる様は、まさしく最前線攻略組の姿だった。
「かわいいなぁ」
「チュンチュンッ」
小さな鳥の魔獣を愛でている少女は、職人ギルドの調合部屋で暇を潰している錬金術師だった。
「薬草取りに行こうかなぁ」
「チュン?」
本来であれば職人ギルドから格安で買える薬草が、今品切れになっており暇になっていた。
「周りの人も薬草取りに行ったし、私もついていけばよかった」
彼女は最初魔獣ギルドに登録したので、職人ギルドからは錬金に必要な道具を最低限のものしか受け取ることができなかった。
そのため、他の錬金術師プレイヤーよりも調合に長い時間がかかり、今は何をするでもなく調合部屋を独り占めしているのである。
「薬草が補充されましたので、購入する方は最初に説明された場所からお願いします」
「やった!」
丁度誰も居らず、常識の範囲内で多くの薬草を買い込む。
「戦うなんて私は出来ないけど、それ以外でも楽しめる!」
「その意気だな。楽しめるのが一番良い」
「!?」
「すまんな。急に大きい声で意気込むからつい喋りかけちまった。俺も販売のお姉さんに用があるんだ。素材の補充タイミングが良かった」
「こちらこそ、す、すいません。失礼します!」
「あ、ちょっと待て。自分が戦いたくないだけなら魔獣に戦わせると良いぞ。ものづくりでもレベルは上がるが、モンスター倒すほうが何倍も簡単だからな」
背中を向けて歩きだした少女は、男の言葉を聞いて考える。
チュートリアルではかろうじてスライムを倒せたが、自分から傷つける行為はしたくない。
ただ、攻撃を受けるのも同じくらい嫌かと言われたら、そこまでの抵抗感はない。
今聞いたアドバイスを受け、自分がこのゲームを最大限楽しむための方法が、少し見えてきた気がする。
「あ、ありがとうございます!」
「おう、楽しめよ」
恥ずかしさと緊張がない混ぜになった心を落ち着かせるため魔獣を撫でながら、今後のことに妄想をふくらませるのであった。
「はーい、おはよー。いや、今はこんにちはの時間かな? 今日は新作のコネファンやってくよ~!」
虚空に話しかける1人の女性プレイヤーがいる。
「カプセルベッドから見てる人はライブ配信楽しんでね。そうじゃない人はここから先はコメントできないよ、ゴメンねー」
3倍の速さで進むゲーム世界に追いつくには、同じゲーム世界から配信を見る必要がある。
現実世界でもライブ配信は普通に見ることができるが、実際のライブ配信は3倍速で進んでいくため、時間が進めば進むほど映像と本来のライブ配信の時間は離れていくのだ。
そのためゲーム世界外からのコメントが出来るのは実質最初の1分ほどになっている。
「チュートリアルは終わらせておいたから、早速職業を決めるんだけど、魔法使いは他の配信者の人がいっぱいやるだろうし、弓使いにしまーす」
ゲームをしながらライブ配信を見ることは出来ないが、ライブ配信を確認した後ゲームをすることは出来るため、厄介なファンはこの場に居合わせようとする。
こういった事はこれまでのゲームでもあり、BAN対象となっている。
「あの、一緒にパーティー組みませんか?」
男は偶然を装っているが、明らかにこの女性配信者のファンであり、行き過ぎた行動をとってしまっている。
「パーティーのお誘いは遠慮してるの、ゴメンね。うちは今後パーティー組むとしても友達とやろうと思ってるから」
男の要求を断りつつ、やんわりとパーティーは配信者同士で組むことを伝えているのだが、男はそのことに気づかない。
「僕は前衛をしようと思ってるし、弓使いとは相性いいと思うんだ。あとからあなたの友達とも組むのは大歓迎だし」
この女性配信者は弓使いになったものの、まだ冒険者ギルドに行っていないため、何の武器も持っていない。
それなのに弓使いと言ってしまっては、配信を見てからここに来たことの証明になってしまう。
「あ、ゴメンだけど今通報させてもらったから。もうすぐGM来ると思う」
「な、なんで!」
《このゲームの利用規約違反に該当する行為を確認しましたので、アカウントを停止させていただきます》
こうして大勢の目の前で一人の男が姿を消した。
「ちょっとスタートから不安なことがあったけど、そのまま続けまーす。みんなはコネファンやっててもこんなことしないよーに気をつけてねー」
そう言うと、野次馬のような人たちも散っていき、流れの速かったコメントもいつも通りに戻るのだった。
「賛成。武器は冒険者ギルドでもらったやつがあるから良いけど、防具はこれじゃ物足りない」
「お前ら慣れてないから攻撃当たってそう思うだけで、もっと先の攻撃力がヤバい奴が敵になってから買う方が安く済むぞ」
「そうそう。別に痛覚はほぼ無いようなもんだし、死にそうになったら逃げればいいって」
「俺等は何でも良いぞ」「任せる」
これは街の外でモンスターを倒して経験値とお金を稼ぐ、王道のプレイをするパーティーの1つである。
角ウサギやスライムを倒しているパーティーは他にも見られ、皆武器と防具の装備差が激しいプレイヤーばかりだ。
これまでこういったVRMMOをやってこなかったプレイヤーは、敵は倒せるが体力が持たず、街の近くで倒しては街に帰って回復をするというのを繰り返していた。
「じゃあ街の近くで戦わせてくれよ。そしたらすぐ回復して戦えるのに」
「そうだよ。それができないなら装備は必須」
序盤では特にプレイヤースキルに差があると、パーティーとして動くことは難しくなる。
街中に入ると自然回復が行われ、レベルも低い今はすぐに全回復する。
このシステムを使ってお金をケチって回復アイテム無しでモンスターの討伐をするのはよくあることだ。
そういうわけで、自然とプレイヤー達の実力を街との距離で測れることになる。
プレイヤースキルのある者は街から離れた場所に行くことが出来るので、強いモンスターと戦うか、数多くの弱いモンスターを倒せる。
逆に慣れていないプレイヤーは街の近くで戦って、ダメージを受けたらすぐ街の中に入り回復をする。多くのモンスターを相手にできないので、初心者にとって環境としてはとても良いのである。
「でもなぁ、敵少ねえし経験値も美味しくねえ
。効率考えたら限界まで外側出れたらアツいんだよ」
「ただ、出過ぎたらさっき見た人みたいに大量の角ウサギに襲われたりするからな。周りに人も少ないし、モンスタートレインしてる人見たらMPK注意」
モンスタートレインとは、大量のモンスターを引き付けることを指し、そのモンスター達を押し付けてプレイヤーを倒すことをMPKと言う。
「でもパーティーはこの6人で組むって決めたんだし、俺等が慣れるまでは手伝ってくれよ」
「まぁしゃあねえか」
結局リーダーらしき者が折れ、6人は街に戻っていった。
MPKの話が出たように、自分達以外のプレイヤーからモンスターを擦り付けられることを考えると、無理はできないという判断だったのだろう。
場所が変わって、これも街の外でモンスターを狩るパーティー。
ただし、先程のような実力がバラバラのパーティーではなく、最前線攻略をしている者たちのパーティーである。
「そろそろレベル上がるか?」
「分かんない。このゲーム経験値のゲージないし」
「武器も装備してなかったらステータス画面のスキルに表示されないし、何よりもステータスの仕組みが謎なのがヤバい」
「確かにステータスポイントが無いのは不便だが、ある意味振り分けに悩まなくて良いのは俺好みだ」
誰もモンスターの攻撃を受けた形跡はなく、パーティー全体での動きが揃っている。
話しながらも連携して格上のモンスターたちを倒す様は、もはや芸術のようだ。
「そういえばユーマさんもやってるだろうけど、流石に会えなかったな」
「運が良ければユーマならここらへんで狩っててもおかしくない」
「いや、あいつそういうのに疲れたから辞めたんだろ。俺らが街に戻った時会えるかどうかって感じじゃね?」
「おい、横からデカいの来たぞ」
「あれは流石に今は無理だね」
「クリティカル出してノーダメージでしょ」
このパーティーの面々でも今は倒すことのできない敵が現れ、相手の攻撃をギリギリでかわしながら、敵のテリトリーの外まで出てきた。
「丁度いいし街に戻って依頼の達成と、素材と装備の交換を済ませよう」
「まだ強い防具は作れてないんじゃない?」
「今は防御力よりも敏捷の+値が重要そう」
「それよりも攻撃力上がる装備が良いでしょ。もうしばらくは避けれる気がする」
他のプレイヤー達よりもレベルは少し高いものの、敵よりもステータスが劣っているにも関わらず戦えているのは、彼らのプレイヤースキルがあってこそである。
「じゃあ今回の休憩時間はあまり取れないと思っていてくれ。すぐに他の場所を探索しなければならない」
「ここは一気に難易度上がったし外れだったもんね」
「結局全部回るんだし、最初に外れ引いたのは良かったっしょ」
レベル上げに使うことができなかった場所を離れ、すぐに次の予定を立てる様は、まさしく最前線攻略組の姿だった。
「かわいいなぁ」
「チュンチュンッ」
小さな鳥の魔獣を愛でている少女は、職人ギルドの調合部屋で暇を潰している錬金術師だった。
「薬草取りに行こうかなぁ」
「チュン?」
本来であれば職人ギルドから格安で買える薬草が、今品切れになっており暇になっていた。
「周りの人も薬草取りに行ったし、私もついていけばよかった」
彼女は最初魔獣ギルドに登録したので、職人ギルドからは錬金に必要な道具を最低限のものしか受け取ることができなかった。
そのため、他の錬金術師プレイヤーよりも調合に長い時間がかかり、今は何をするでもなく調合部屋を独り占めしているのである。
「薬草が補充されましたので、購入する方は最初に説明された場所からお願いします」
「やった!」
丁度誰も居らず、常識の範囲内で多くの薬草を買い込む。
「戦うなんて私は出来ないけど、それ以外でも楽しめる!」
「その意気だな。楽しめるのが一番良い」
「!?」
「すまんな。急に大きい声で意気込むからつい喋りかけちまった。俺も販売のお姉さんに用があるんだ。素材の補充タイミングが良かった」
「こちらこそ、す、すいません。失礼します!」
「あ、ちょっと待て。自分が戦いたくないだけなら魔獣に戦わせると良いぞ。ものづくりでもレベルは上がるが、モンスター倒すほうが何倍も簡単だからな」
背中を向けて歩きだした少女は、男の言葉を聞いて考える。
チュートリアルではかろうじてスライムを倒せたが、自分から傷つける行為はしたくない。
ただ、攻撃を受けるのも同じくらい嫌かと言われたら、そこまでの抵抗感はない。
今聞いたアドバイスを受け、自分がこのゲームを最大限楽しむための方法が、少し見えてきた気がする。
「あ、ありがとうございます!」
「おう、楽しめよ」
恥ずかしさと緊張がない混ぜになった心を落ち着かせるため魔獣を撫でながら、今後のことに妄想をふくらませるのであった。
「はーい、おはよー。いや、今はこんにちはの時間かな? 今日は新作のコネファンやってくよ~!」
虚空に話しかける1人の女性プレイヤーがいる。
「カプセルベッドから見てる人はライブ配信楽しんでね。そうじゃない人はここから先はコメントできないよ、ゴメンねー」
3倍の速さで進むゲーム世界に追いつくには、同じゲーム世界から配信を見る必要がある。
現実世界でもライブ配信は普通に見ることができるが、実際のライブ配信は3倍速で進んでいくため、時間が進めば進むほど映像と本来のライブ配信の時間は離れていくのだ。
そのためゲーム世界外からのコメントが出来るのは実質最初の1分ほどになっている。
「チュートリアルは終わらせておいたから、早速職業を決めるんだけど、魔法使いは他の配信者の人がいっぱいやるだろうし、弓使いにしまーす」
ゲームをしながらライブ配信を見ることは出来ないが、ライブ配信を確認した後ゲームをすることは出来るため、厄介なファンはこの場に居合わせようとする。
こういった事はこれまでのゲームでもあり、BAN対象となっている。
「あの、一緒にパーティー組みませんか?」
男は偶然を装っているが、明らかにこの女性配信者のファンであり、行き過ぎた行動をとってしまっている。
「パーティーのお誘いは遠慮してるの、ゴメンね。うちは今後パーティー組むとしても友達とやろうと思ってるから」
男の要求を断りつつ、やんわりとパーティーは配信者同士で組むことを伝えているのだが、男はそのことに気づかない。
「僕は前衛をしようと思ってるし、弓使いとは相性いいと思うんだ。あとからあなたの友達とも組むのは大歓迎だし」
この女性配信者は弓使いになったものの、まだ冒険者ギルドに行っていないため、何の武器も持っていない。
それなのに弓使いと言ってしまっては、配信を見てからここに来たことの証明になってしまう。
「あ、ゴメンだけど今通報させてもらったから。もうすぐGM来ると思う」
「な、なんで!」
《このゲームの利用規約違反に該当する行為を確認しましたので、アカウントを停止させていただきます》
こうして大勢の目の前で一人の男が姿を消した。
「ちょっとスタートから不安なことがあったけど、そのまま続けまーす。みんなはコネファンやっててもこんなことしないよーに気をつけてねー」
そう言うと、野次馬のような人たちも散っていき、流れの速かったコメントもいつも通りに戻るのだった。
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