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第6話 文化祭準備しちゃいけないですか⁈
文化祭準備しちゃいけないですか⁈ ②
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それから料理を食べた後は、楓の部屋で本を読んだり、その感想を言い合ったりおしゃべりをしたりして過ごした。
私の部屋程ではないが、そこそこ広くて白の家具にピンクの壁紙に囲まれた部屋はなんだかとても落ち着いた。
あまり余計と言うか、人形とかそう言うのがない私の部屋に似ているからかもしれない。とにかく居心地が良かった。
5時30頃に私は帰ることにした。楓は名残惜しそうにしていた。私はまた来るからと笑顔でいうと、楓は
「また、来てください」
と手を握りながら言った。その時の少し涙ぐんでいる表情が、不覚にもかわいいなあと私は思ったのだ。もうそろそろ17になるし、普段はあんなに大人っぽい楓の子供のような顔が堪らなかった。
そして今は家に帰ってきて、晩御飯の用意をしている。のだが……奏お姉ちゃんが不機嫌そうにしている。リビングのソファーに深く腰掛け顔を少しぷくーっと膨らませて、しかめっ面をしている。
別に行く前に喧嘩したわけじゃないんだけど、不機嫌そうだ。どうしてだろうか。
「お姉ちゃん……? どうしたの? そんな顔して」
恐る恐る聞いてみる。奏お姉ちゃんの表情は変わらない。
「なにも。別になにもない」
ぶっきらぼうな感じで言葉を放つ。こんな様子で何もないなんてあるわけない。絶対おかしい。絶対に。
「何もないのにそんな顔になるわけないじゃん。私が何かしちゃったなら謝るよ。だから何があったのか教えて? ね?」
そう聞くが奏お姉ちゃんは首を横に振る。
「教えない。絶対に教えない」
奏お姉ちゃんは冷たい目をしていた。うーん。こうなったら多分教えてくれないだろうなあ。どうしようか。後で琴姉に相談しようか。私はそう考えながら、リビングを後にしキッチンへと戻った。
夕食後。片付けを最速で済ませて琴姉の部屋へと向かった。
「美優羽か。どうしたんだ?」
琴姉はゲーミングチェアに座り、私を向いていた。
「あのね。奏お姉ちゃんが変なの」
「奏が変……?」
そこから私は最近の様子と今日のことを洗いざらい話した。話を聞いた琴姉は顎に手を当て考え始めた。
「あの奏がか……。まあそうか。――だからなあ……。多分そうだろうな」
何やらぶつぶつと呟いている。一体どう言うことなのだろうか。私は気になって仕方ない。そして独り言を言い終えると黙ってしまった。その間、目を閉じたり首を捻ったりと忙しなく動いていた。そしてしばらくして結論が出たのだろう。口を開いた。
「私はどう言うことか、大体検討が付いた。恐らく合っていると思う」
流石は琴姉だ。私だけの情報でわかるなんて凄い。私は琴姉に感心した。
「ただ、それを美優羽に言ったところで解決しない。いい方向に転ぶかもしれないが、恐らく余計に酷くなる。だから、すまないけど私からはどうしてなのかは言えない」
琴姉は申し訳なさそうにしていた。そんな……。折角分かると思って来たのに。それにそれが分かったら酷くなるなんて。私はがっかりした。
「まあがっかりさせたくはなかったんだけど、今後を考えたらやっぱり言えないんだ。ただ、少しだけ言えることがある。美優羽と奏は双子だ。そして思っている以上に似た者同士だ。これで分かるかは微妙だろうが、私から言えるのは以上だ」
そう言うと、琴姉はパソコンの方に目を落とした。
双子。似た者同士。うーん、何が言いたいんだろう。さっぱりわからない。私と奏お姉ちゃんはそんなに似てないのになあ。
奏お姉ちゃんは素直でいい子。かわいくて殆どの事を完璧にこなす誰にでも優しい女の子。対して私は普通で素直になれないめんどくさい女の子。これの何処が似た者だと言うのだろうか。私には分からない。
もしかして私に惚れている? いやいや。それもないでしょ。素直な奏お姉ちゃんならもっとストレートに感情を出して来るはず。こんな面倒なことはしない。だから違うはず。となると……何も思いつかない。
結局わからずじまいか。私は自分の部屋の方へと帰った。
それから部屋のベッドに寝転びながら、その言葉の意味を考えたが、結局分かることはなかった。
あの日から2週間程が過ぎて、文化祭前日になった。計画は何事もなく着々と進み、あとは本番を待つのみだ。
料理の方も、楓が上手いこと色々指導しているようでメンバーの腕も上達しているみたいだ。中には楓に弟子入りしたいと頼んだ人も居たとか。一体どんな指導をしたんだろう。熱血な指導でもしたんだろうか。それとも、それほどまでに楓の腕に魅了されたのだろうか。それ本人達のみ知ることだろう。
そんなわけで順調に来ている。今は何をしているのかと言うと、3階の空き教室で楓を待っている。なんでも、放課後に空き教室に来て欲しいと言われたのだ。なんの用なんだろ。
本番前の打ち合わせ? だとしたらこんなところでやる必要はない。何か怒らせるようなことしたっけ? ただ思い当たる節はない。楓にそんな嫌がらせをしたことはない。さっぱり見当がつかない。楓が来るのを待とう。
適当に見つけた椅子に座り楓を待った。ただ、楓は中々来ない。時計を見てまだかな、まだかなと待つが来ない。そうしているうちに10分程が過ぎた。埒が明かない。それに楓に何かあったのかもしれない。こちらから探しに行こう。
そう思って立ち上がった時に、扉の外に人影が見えた。おそらく楓だ。私は少し安心した。ガラガラと小さく音を鳴らしながら、楓は教室に入ってくる。
「すみません。少し先生に呼ばれて遅くなってしまいました……」
少しだけ息を切らしているようだった。その様子からするに急いで来たのだろう。
「いいのよ。中々来ないから少し心配したけど、無事に来たから安心したわ」
そう声を掛けると、楓はよかったですと言って胸を撫で下ろしているようだった。
「ところで、ここに呼んでなんの用なの? 私何か怒らせたかしら?」
私の言葉に楓は首を横に大きく振る。そう言うことではなかったらしい。私も安心した。ただ、そのせいかなぜ呼ばれたかがより一層分からなくなった。一体何のため。どう言う――
「美優羽さん。私、美優羽さんの事が好きです」
「…………私の事が好き? 私も楓のことは好きだわ」
「そうじゃないんです。私の好きは恋愛的な好きなんです」
楓ははっきりと私の目をしっかりと見て言った。その目には覚悟のような何かが宿っている様だった。
「美優羽さん。もし、もしも私でよければ恋人として付き合ってくれませんか」
楓の言葉は愛の告白の言葉だった。私は正直驚いている。楓にとって特別な存在だと言うことは、楓のお父さんに聞いていたから知っていた。でもここまでの存在だとは思ってすらいなかった。驚いている。それと同時に嬉しさを感じている自分もいる。誰かに好かれると言うのは悪いものじゃないし、こうやって口にしてもらえると言うのも中々ないからだ。
けど、私には好きな人がいる。奏お姉ちゃんと言う最愛の人が。だから断らなきゃいけないという気持ちもある。嬉しい気持ちと同じくらいに。故に戸惑っている。どう返せばいいのか。どうすればいいのか。嬉しいと思う自分に従うべきか。私の元々好きだった人の為に断るべきか。心が揺れ動いて何の反応もできない。口からえっとと言う言葉が溢れるだけで、何も返事ができない。どうすればいいのだろうか。二つの感情のせいで私は混乱している。
「美優羽さん。私は知ってるんです。美優羽さんが奏さんの事が好きなこと。だから、混乱してるんですよね?」
えっと思わず声が出てしまった。楓は知ってたんだ。私が奏お姉ちゃんが好きなこと。バラした事も、バラす様な事もしてないのに。普段は好きな雰囲気をあまり出してなかったはずなのに。
どうして? 私はヘマはしていなかったはず。なのになんで?
私の頭は余計に混乱していた。
「だからすぐに断られて終わる。踏ん切りをつける為にしたんですが、こうなるとは思ってもなかったです。これはある意味嬉しい誤算です。美優羽さん。明日の放課後まで待ちます。明日の放課後同じ場所でお返事を聞かせて下さい。どんな答えでも、私は受け入れますので。それでは失礼します」
「あっ、待って楓……」
私の静止を聞かず、楓は教室から出て行った。
私はどうしていいか分からず、ただその場に立ち尽くすだけだった。
私の部屋程ではないが、そこそこ広くて白の家具にピンクの壁紙に囲まれた部屋はなんだかとても落ち着いた。
あまり余計と言うか、人形とかそう言うのがない私の部屋に似ているからかもしれない。とにかく居心地が良かった。
5時30頃に私は帰ることにした。楓は名残惜しそうにしていた。私はまた来るからと笑顔でいうと、楓は
「また、来てください」
と手を握りながら言った。その時の少し涙ぐんでいる表情が、不覚にもかわいいなあと私は思ったのだ。もうそろそろ17になるし、普段はあんなに大人っぽい楓の子供のような顔が堪らなかった。
そして今は家に帰ってきて、晩御飯の用意をしている。のだが……奏お姉ちゃんが不機嫌そうにしている。リビングのソファーに深く腰掛け顔を少しぷくーっと膨らませて、しかめっ面をしている。
別に行く前に喧嘩したわけじゃないんだけど、不機嫌そうだ。どうしてだろうか。
「お姉ちゃん……? どうしたの? そんな顔して」
恐る恐る聞いてみる。奏お姉ちゃんの表情は変わらない。
「なにも。別になにもない」
ぶっきらぼうな感じで言葉を放つ。こんな様子で何もないなんてあるわけない。絶対おかしい。絶対に。
「何もないのにそんな顔になるわけないじゃん。私が何かしちゃったなら謝るよ。だから何があったのか教えて? ね?」
そう聞くが奏お姉ちゃんは首を横に振る。
「教えない。絶対に教えない」
奏お姉ちゃんは冷たい目をしていた。うーん。こうなったら多分教えてくれないだろうなあ。どうしようか。後で琴姉に相談しようか。私はそう考えながら、リビングを後にしキッチンへと戻った。
夕食後。片付けを最速で済ませて琴姉の部屋へと向かった。
「美優羽か。どうしたんだ?」
琴姉はゲーミングチェアに座り、私を向いていた。
「あのね。奏お姉ちゃんが変なの」
「奏が変……?」
そこから私は最近の様子と今日のことを洗いざらい話した。話を聞いた琴姉は顎に手を当て考え始めた。
「あの奏がか……。まあそうか。――だからなあ……。多分そうだろうな」
何やらぶつぶつと呟いている。一体どう言うことなのだろうか。私は気になって仕方ない。そして独り言を言い終えると黙ってしまった。その間、目を閉じたり首を捻ったりと忙しなく動いていた。そしてしばらくして結論が出たのだろう。口を開いた。
「私はどう言うことか、大体検討が付いた。恐らく合っていると思う」
流石は琴姉だ。私だけの情報でわかるなんて凄い。私は琴姉に感心した。
「ただ、それを美優羽に言ったところで解決しない。いい方向に転ぶかもしれないが、恐らく余計に酷くなる。だから、すまないけど私からはどうしてなのかは言えない」
琴姉は申し訳なさそうにしていた。そんな……。折角分かると思って来たのに。それにそれが分かったら酷くなるなんて。私はがっかりした。
「まあがっかりさせたくはなかったんだけど、今後を考えたらやっぱり言えないんだ。ただ、少しだけ言えることがある。美優羽と奏は双子だ。そして思っている以上に似た者同士だ。これで分かるかは微妙だろうが、私から言えるのは以上だ」
そう言うと、琴姉はパソコンの方に目を落とした。
双子。似た者同士。うーん、何が言いたいんだろう。さっぱりわからない。私と奏お姉ちゃんはそんなに似てないのになあ。
奏お姉ちゃんは素直でいい子。かわいくて殆どの事を完璧にこなす誰にでも優しい女の子。対して私は普通で素直になれないめんどくさい女の子。これの何処が似た者だと言うのだろうか。私には分からない。
もしかして私に惚れている? いやいや。それもないでしょ。素直な奏お姉ちゃんならもっとストレートに感情を出して来るはず。こんな面倒なことはしない。だから違うはず。となると……何も思いつかない。
結局わからずじまいか。私は自分の部屋の方へと帰った。
それから部屋のベッドに寝転びながら、その言葉の意味を考えたが、結局分かることはなかった。
あの日から2週間程が過ぎて、文化祭前日になった。計画は何事もなく着々と進み、あとは本番を待つのみだ。
料理の方も、楓が上手いこと色々指導しているようでメンバーの腕も上達しているみたいだ。中には楓に弟子入りしたいと頼んだ人も居たとか。一体どんな指導をしたんだろう。熱血な指導でもしたんだろうか。それとも、それほどまでに楓の腕に魅了されたのだろうか。それ本人達のみ知ることだろう。
そんなわけで順調に来ている。今は何をしているのかと言うと、3階の空き教室で楓を待っている。なんでも、放課後に空き教室に来て欲しいと言われたのだ。なんの用なんだろ。
本番前の打ち合わせ? だとしたらこんなところでやる必要はない。何か怒らせるようなことしたっけ? ただ思い当たる節はない。楓にそんな嫌がらせをしたことはない。さっぱり見当がつかない。楓が来るのを待とう。
適当に見つけた椅子に座り楓を待った。ただ、楓は中々来ない。時計を見てまだかな、まだかなと待つが来ない。そうしているうちに10分程が過ぎた。埒が明かない。それに楓に何かあったのかもしれない。こちらから探しに行こう。
そう思って立ち上がった時に、扉の外に人影が見えた。おそらく楓だ。私は少し安心した。ガラガラと小さく音を鳴らしながら、楓は教室に入ってくる。
「すみません。少し先生に呼ばれて遅くなってしまいました……」
少しだけ息を切らしているようだった。その様子からするに急いで来たのだろう。
「いいのよ。中々来ないから少し心配したけど、無事に来たから安心したわ」
そう声を掛けると、楓はよかったですと言って胸を撫で下ろしているようだった。
「ところで、ここに呼んでなんの用なの? 私何か怒らせたかしら?」
私の言葉に楓は首を横に大きく振る。そう言うことではなかったらしい。私も安心した。ただ、そのせいかなぜ呼ばれたかがより一層分からなくなった。一体何のため。どう言う――
「美優羽さん。私、美優羽さんの事が好きです」
「…………私の事が好き? 私も楓のことは好きだわ」
「そうじゃないんです。私の好きは恋愛的な好きなんです」
楓ははっきりと私の目をしっかりと見て言った。その目には覚悟のような何かが宿っている様だった。
「美優羽さん。もし、もしも私でよければ恋人として付き合ってくれませんか」
楓の言葉は愛の告白の言葉だった。私は正直驚いている。楓にとって特別な存在だと言うことは、楓のお父さんに聞いていたから知っていた。でもここまでの存在だとは思ってすらいなかった。驚いている。それと同時に嬉しさを感じている自分もいる。誰かに好かれると言うのは悪いものじゃないし、こうやって口にしてもらえると言うのも中々ないからだ。
けど、私には好きな人がいる。奏お姉ちゃんと言う最愛の人が。だから断らなきゃいけないという気持ちもある。嬉しい気持ちと同じくらいに。故に戸惑っている。どう返せばいいのか。どうすればいいのか。嬉しいと思う自分に従うべきか。私の元々好きだった人の為に断るべきか。心が揺れ動いて何の反応もできない。口からえっとと言う言葉が溢れるだけで、何も返事ができない。どうすればいいのだろうか。二つの感情のせいで私は混乱している。
「美優羽さん。私は知ってるんです。美優羽さんが奏さんの事が好きなこと。だから、混乱してるんですよね?」
えっと思わず声が出てしまった。楓は知ってたんだ。私が奏お姉ちゃんが好きなこと。バラした事も、バラす様な事もしてないのに。普段は好きな雰囲気をあまり出してなかったはずなのに。
どうして? 私はヘマはしていなかったはず。なのになんで?
私の頭は余計に混乱していた。
「だからすぐに断られて終わる。踏ん切りをつける為にしたんですが、こうなるとは思ってもなかったです。これはある意味嬉しい誤算です。美優羽さん。明日の放課後まで待ちます。明日の放課後同じ場所でお返事を聞かせて下さい。どんな答えでも、私は受け入れますので。それでは失礼します」
「あっ、待って楓……」
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