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第3話 ストーカー対策しちゃいけないですか⁈
ストーカー対策しちゃいけないですか⁈ ③
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学校のない土曜日の夕方。夕飯の買い出しに私は買い物に出かけた。いつも行っているスーパーで買い物をして、帰っている最中だった。
スタスタスタスタ……。
私以外の足音が聞こえる。明らかに誰かにつけられている。早歩きでなんとか撒けないか試してみる。だが、ストーカーもついてくる。
ダメだ。早歩きじゃ撒けない。走ってもいいが、今は買い物の荷物を持っている状態。中身がぐちゃぐちゃになる事態は避けたい。
ならば警察に電話? だけど、すぐに来てくれないから犯人は取り逃してしまう。打つ手がない。
仕方がない。とにかく追いつかれないように早歩きで家まで帰ろう。
私はなんとか追いつかれないよう、かつ荷物がぐちゃぐちゃにならない速度の早歩きで家に帰った。
家に着いた私は、琴姉と奏お姉ちゃんに先程の状況を伝えて相談することにした。
「うーん……。ここまで被害があるのなら、いよいよ警察に相談するしかないんじゃないかなあ」
開口一番に琴姉は深刻そうな表情で言った。
「そうだねぇ。何かあってからじゃ遅いしねぇ」
奏お姉ちゃんは真剣な表情で言った。奏お姉ちゃんも、その意見に同意しているようだった。
「そうするしかないのかなあ……」
私は少し複雑な気分だった。
確かに警察に相談すれば解決しやすくなるだろう。その方が賢明な選択なのだろう。だが、何故か私はそうしたくないのだ。
解決させたくない訳ではない。ストーカーから一刻も早く解放されたい。そのはずだが、本能的な何かがそれを拒むのだ。
本能的な何かが具体的に何かはわからない。けど、それが警察に相談するのを拒絶しているのだ。
そうやって私が黙り込んでいると、琴姉が口を開いた。
「そんなに悩んでいるのならこうしよう。明日一日私と奏が美優羽と常に一緒に行動する。それでも、誰かにつけられるんなら、警察に直行しよう」
琴姉は私をまっすぐな目で見つめていた。
「そ、そうしよう美優羽ちゃん」
奏お姉ちゃんも私を説得するように見ていた。そこまで二人に言われるのなら、仕方がない。私が折れよう。
「わかったわ。じゃあ明日は二人についてもらう。それでダメなら警察に行く」
「了解。それじゃあ明日は私と奏が一緒について回るから安心しろ」
琴姉は私の手を優しく握ってくれた。
日曜日の夕方。私はどうしても買いたい本があったので本屋に行っていた。今読んでいる小説の最新刊だ。
図書館に続きが置かれるのを待つという手もある。しかし、それだといつ入荷してくるのか分からない。その上、入荷しても直ぐに読める保証がない。
お小遣いが減るのは痛い。ただ、どうしても気になる展開で待たされているので、好奇心が抑えられない。やむを得ず買いに行くわけだ。
新刊ということもあり、本屋さんでお目当ての本はすぐに見つかった。私は会計をさっさと済ませて、家路についていた。
もちろん、この買い物には琴姉と奏お姉ちゃんが着いて来ている。
「なあ。買った小説ってどんな中身なんだ?」
琴姉が興味津々に聞いてきた。
「えっとね。簡単に言うと中世に転生した主人公が旅をして、旅した先々の問題を解決するって話。それで今友人に告白されて、どう答えを出すのかってのが今回の話になるの」
「ふーん。美優羽的にはどうなるって予想してるんだ?」
「多分断ると思うの。主人公は妹が好きだから、妹が振り向くまで頑張ると思うの。けど、妹が好意に気づいてないのが、なんとももどかしいんだよねえ」
「それはまるで……おっとっと」
琴姉は口を止めた。おそらく言おうとしたのは、まるで私みたいだと言うことだろう。そうに違いない。読んでいて私も自分っぽいと思わされるもの。
しかし、それ故とても共感ができて読むことができるのだ。姉と妹という違いはあれど、姉妹を愛する気持ちは変わらないはずだ。きっと私と同じくらい、主人公は妹を愛しているはずだ。
だからこの主人公はとても応援できる。報われてほしいと。まるで自分を重ねるように。
「なあ、奏だったらこういう告白されたらどうするよ」
琴姉が奏お姉ちゃんに尋ねる。奏お姉ちゃんは間の抜けた顔をしていた。
「うーん。私だったら断るのも申し訳ないから付き合うかもしれないなあ。ただ好きな人が別にいるんでしょ? うーん……、迷うよねえ。いい答えが出ないや」
奏お姉ちゃんはそう言って、少し笑って誤魔化した。なるほど。奏お姉ちゃんは押しに弱そうだなあ。もしかすると、私が強引に迫れば案外落ちてくれるかも。そんなことを私は考えだしていた。
その時だった。
グキッ。
後方から謎の音がした。もしかして今さっきまでつけられていた? 私は後を振り向く。
「どうしたの美優羽ちゃん?」
突然私が後を向いたので、奏お姉ちゃんは心配そうに聞いてきた。
「あそこ、なんか怪しい」
私は茂みを指差した。その茂みは草の高さに対して明らかに何かが盛り上がっていた。
「本当だ。怪しい。ちょっと行ってみよう」
奏お姉ちゃんがそこへ近づいていく。すると、そこから人と思われる物が凄い勢いで逃げ出して行った。あれがきっと犯人だろう。
「追いかけるよ! 美優羽ちゃん! 琴葉お姉ちゃん!」
奏お姉ちゃんが猛然と犯人を追いかける。私はなんとか離されないよう必死についていった。
犯人の脚が速くないのもあるだろう。そして奏お姉ちゃんが俊足の持ち主というのもあるだろう。差がどんどん縮まっていく。
犯人は捕まらないよう、障害物を使ってうまいこと逃げようとするが、奏お姉ちゃんにはほとんど意味をなさなかった。
結局差を詰められ、ついには奏お姉ちゃんに捕まえられた。
「捕まえたよっ!」
がっしりと犯人をホールディングしていた。さてようやく捕まったか。一体どんな顔をして……。
「えっ⁈ 嘘でしょ……」
その犯人の顔を見た時私は驚かざるをえなかった。
「な、なんで……楓が……?」
そう。犯人が楓だったのだ。こんなことをするような子じゃないのに一体何故。何が楓をそうさせてしまったのか。
いや、これはたまたまかもしれない。たまたまそう言う風になっただけなのかもしれない。
私の頭は色んな思いで一杯一杯になっていた。
「ご、ごめんなさい! ほんの出来心だったんです!」
涙目になりながら楓は事の顛末を話だした。
楓の話によると、私がストーキングをされていると感じる前の2月中旬から今まで、ずっとストーキングをしていたらしい。
土日に関しては私が買い物によく出かける時間を調べて、それを基にストーキングをしていたとのことだ。
つまり最初から犯人は楓だったわけで、私は犯人に相談をするという、なんともお間抜けなことをしていたらしい。
どおりで3人で帰った時に都合よくストーキングされなかったわけだ。じゃあ、あの苦い顔はストーキングができなくなるから都合が悪いってことでやってたのかな。そう考えると辻褄があう。
しかし、なんでストーキングをやってしまったのだろうか?
「じゃあどうしてストーキングしていたの?」
私は楓に尋ねた。
「…………一緒にいたかったんです」
虫の声のような小さい声で楓は答えた。
「美優羽さんと学校の外でも一緒に居たかったんです。そうすれば、寂しくないから」
なるほど。そんな理由だったのか。恨んでいたとかそう言う理由じゃなくてよかったと、私は一安心した。でも、言うべきことはしっかりと言わないといけない。
「あのね、楓。そういうのはちゃんと言ってくれれば私は断らないし、一緒に居てあげるから。だから、こういうストーキングだけは私も嫌だからやめてね」
「はい……もう二度としません」
楓はしょんぼりと答えた。
「それから、今度から一緒に帰ろう。図書委員の当番の日は一緒に待ってあげるから。だから一緒に帰ろう」
私は楓に右手を差し出した。
「い、いいんですか? こんな私と一緒に帰ってもらって……また仲良くしてもらって……」
「いいに決まってるじゃない。この話はこれで終わりだし、そしたらまた仲良くしましょうよ。仲良くするんだから一緒に帰るくらいどうってことないわよ」
私がそう言うと、楓は私の差し出した右手を握った。その右手にはポツリポツリと、涙が落ちてきていた。
「ありがとう……ございます……」
楓は涙で声を振るわせながら言った。そんな楓を私は抱きしめて背中をさすってあげた。
「はぁ、はぁ。やっと追いついた……って何事⁈」
ようやく追いついた琴姉はこの状況を見て驚くしかなかったようだった。
スタスタスタスタ……。
私以外の足音が聞こえる。明らかに誰かにつけられている。早歩きでなんとか撒けないか試してみる。だが、ストーカーもついてくる。
ダメだ。早歩きじゃ撒けない。走ってもいいが、今は買い物の荷物を持っている状態。中身がぐちゃぐちゃになる事態は避けたい。
ならば警察に電話? だけど、すぐに来てくれないから犯人は取り逃してしまう。打つ手がない。
仕方がない。とにかく追いつかれないように早歩きで家まで帰ろう。
私はなんとか追いつかれないよう、かつ荷物がぐちゃぐちゃにならない速度の早歩きで家に帰った。
家に着いた私は、琴姉と奏お姉ちゃんに先程の状況を伝えて相談することにした。
「うーん……。ここまで被害があるのなら、いよいよ警察に相談するしかないんじゃないかなあ」
開口一番に琴姉は深刻そうな表情で言った。
「そうだねぇ。何かあってからじゃ遅いしねぇ」
奏お姉ちゃんは真剣な表情で言った。奏お姉ちゃんも、その意見に同意しているようだった。
「そうするしかないのかなあ……」
私は少し複雑な気分だった。
確かに警察に相談すれば解決しやすくなるだろう。その方が賢明な選択なのだろう。だが、何故か私はそうしたくないのだ。
解決させたくない訳ではない。ストーカーから一刻も早く解放されたい。そのはずだが、本能的な何かがそれを拒むのだ。
本能的な何かが具体的に何かはわからない。けど、それが警察に相談するのを拒絶しているのだ。
そうやって私が黙り込んでいると、琴姉が口を開いた。
「そんなに悩んでいるのならこうしよう。明日一日私と奏が美優羽と常に一緒に行動する。それでも、誰かにつけられるんなら、警察に直行しよう」
琴姉は私をまっすぐな目で見つめていた。
「そ、そうしよう美優羽ちゃん」
奏お姉ちゃんも私を説得するように見ていた。そこまで二人に言われるのなら、仕方がない。私が折れよう。
「わかったわ。じゃあ明日は二人についてもらう。それでダメなら警察に行く」
「了解。それじゃあ明日は私と奏が一緒について回るから安心しろ」
琴姉は私の手を優しく握ってくれた。
日曜日の夕方。私はどうしても買いたい本があったので本屋に行っていた。今読んでいる小説の最新刊だ。
図書館に続きが置かれるのを待つという手もある。しかし、それだといつ入荷してくるのか分からない。その上、入荷しても直ぐに読める保証がない。
お小遣いが減るのは痛い。ただ、どうしても気になる展開で待たされているので、好奇心が抑えられない。やむを得ず買いに行くわけだ。
新刊ということもあり、本屋さんでお目当ての本はすぐに見つかった。私は会計をさっさと済ませて、家路についていた。
もちろん、この買い物には琴姉と奏お姉ちゃんが着いて来ている。
「なあ。買った小説ってどんな中身なんだ?」
琴姉が興味津々に聞いてきた。
「えっとね。簡単に言うと中世に転生した主人公が旅をして、旅した先々の問題を解決するって話。それで今友人に告白されて、どう答えを出すのかってのが今回の話になるの」
「ふーん。美優羽的にはどうなるって予想してるんだ?」
「多分断ると思うの。主人公は妹が好きだから、妹が振り向くまで頑張ると思うの。けど、妹が好意に気づいてないのが、なんとももどかしいんだよねえ」
「それはまるで……おっとっと」
琴姉は口を止めた。おそらく言おうとしたのは、まるで私みたいだと言うことだろう。そうに違いない。読んでいて私も自分っぽいと思わされるもの。
しかし、それ故とても共感ができて読むことができるのだ。姉と妹という違いはあれど、姉妹を愛する気持ちは変わらないはずだ。きっと私と同じくらい、主人公は妹を愛しているはずだ。
だからこの主人公はとても応援できる。報われてほしいと。まるで自分を重ねるように。
「なあ、奏だったらこういう告白されたらどうするよ」
琴姉が奏お姉ちゃんに尋ねる。奏お姉ちゃんは間の抜けた顔をしていた。
「うーん。私だったら断るのも申し訳ないから付き合うかもしれないなあ。ただ好きな人が別にいるんでしょ? うーん……、迷うよねえ。いい答えが出ないや」
奏お姉ちゃんはそう言って、少し笑って誤魔化した。なるほど。奏お姉ちゃんは押しに弱そうだなあ。もしかすると、私が強引に迫れば案外落ちてくれるかも。そんなことを私は考えだしていた。
その時だった。
グキッ。
後方から謎の音がした。もしかして今さっきまでつけられていた? 私は後を振り向く。
「どうしたの美優羽ちゃん?」
突然私が後を向いたので、奏お姉ちゃんは心配そうに聞いてきた。
「あそこ、なんか怪しい」
私は茂みを指差した。その茂みは草の高さに対して明らかに何かが盛り上がっていた。
「本当だ。怪しい。ちょっと行ってみよう」
奏お姉ちゃんがそこへ近づいていく。すると、そこから人と思われる物が凄い勢いで逃げ出して行った。あれがきっと犯人だろう。
「追いかけるよ! 美優羽ちゃん! 琴葉お姉ちゃん!」
奏お姉ちゃんが猛然と犯人を追いかける。私はなんとか離されないよう必死についていった。
犯人の脚が速くないのもあるだろう。そして奏お姉ちゃんが俊足の持ち主というのもあるだろう。差がどんどん縮まっていく。
犯人は捕まらないよう、障害物を使ってうまいこと逃げようとするが、奏お姉ちゃんにはほとんど意味をなさなかった。
結局差を詰められ、ついには奏お姉ちゃんに捕まえられた。
「捕まえたよっ!」
がっしりと犯人をホールディングしていた。さてようやく捕まったか。一体どんな顔をして……。
「えっ⁈ 嘘でしょ……」
その犯人の顔を見た時私は驚かざるをえなかった。
「な、なんで……楓が……?」
そう。犯人が楓だったのだ。こんなことをするような子じゃないのに一体何故。何が楓をそうさせてしまったのか。
いや、これはたまたまかもしれない。たまたまそう言う風になっただけなのかもしれない。
私の頭は色んな思いで一杯一杯になっていた。
「ご、ごめんなさい! ほんの出来心だったんです!」
涙目になりながら楓は事の顛末を話だした。
楓の話によると、私がストーキングをされていると感じる前の2月中旬から今まで、ずっとストーキングをしていたらしい。
土日に関しては私が買い物によく出かける時間を調べて、それを基にストーキングをしていたとのことだ。
つまり最初から犯人は楓だったわけで、私は犯人に相談をするという、なんともお間抜けなことをしていたらしい。
どおりで3人で帰った時に都合よくストーキングされなかったわけだ。じゃあ、あの苦い顔はストーキングができなくなるから都合が悪いってことでやってたのかな。そう考えると辻褄があう。
しかし、なんでストーキングをやってしまったのだろうか?
「じゃあどうしてストーキングしていたの?」
私は楓に尋ねた。
「…………一緒にいたかったんです」
虫の声のような小さい声で楓は答えた。
「美優羽さんと学校の外でも一緒に居たかったんです。そうすれば、寂しくないから」
なるほど。そんな理由だったのか。恨んでいたとかそう言う理由じゃなくてよかったと、私は一安心した。でも、言うべきことはしっかりと言わないといけない。
「あのね、楓。そういうのはちゃんと言ってくれれば私は断らないし、一緒に居てあげるから。だから、こういうストーキングだけは私も嫌だからやめてね」
「はい……もう二度としません」
楓はしょんぼりと答えた。
「それから、今度から一緒に帰ろう。図書委員の当番の日は一緒に待ってあげるから。だから一緒に帰ろう」
私は楓に右手を差し出した。
「い、いいんですか? こんな私と一緒に帰ってもらって……また仲良くしてもらって……」
「いいに決まってるじゃない。この話はこれで終わりだし、そしたらまた仲良くしましょうよ。仲良くするんだから一緒に帰るくらいどうってことないわよ」
私がそう言うと、楓は私の差し出した右手を握った。その右手にはポツリポツリと、涙が落ちてきていた。
「ありがとう……ございます……」
楓は涙で声を振るわせながら言った。そんな楓を私は抱きしめて背中をさすってあげた。
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