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夏の大会編
優梨華VS涼紀の妹
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それから優梨華は、幸長の世話を積極的に行なった。
母親や兄から見れば今まで距離を置いていたのが嘘に思える程、家に帰るギリギリの時間まで幸長の側に寄り添っていた。
一方幸長は医者も驚くような回復を見せ、杖を突きながらも歩くけるようになり、予定より一週間早く退院することが出来た。
その後も幸長は毎日毎日、血の滲むようなリハビリやトレーニングをした。その結果普通に歩くどころか、事故前と変わらない速さで、走ることまで出来るようになった。
もちろん優梨華もリハビリやトレーニングを手伝った。その中でトレーニング、リハビリ中にも決して弱音を履かず常に全力で励んでいた幸長を見て、ますます惚れていった。
そうして、現在。もはや優梨華の愛は手に負えないものにまでなっていた。今も三塁側の中段の通路で、試合前の練習ではなく幸長の写真を見つめていた。
「お兄ちゃんが野球してるとこ、久しぶりに見るなあ。前来た時は凄く打っていたし。今日も、打ってくれて活躍して……。うん。きっと、喜んでくれる。んーー! 堪らないわ!」
優梨華が、妄想に入り浸っていたその時だった。
「あら、珍しいわね。氷の女帝と言われる大島さんが、こんな所にいて、おまけに、いつも見ないようなハイテンションに、いつもと違う、かわいい声出してるなんて。明日は嵐かしら?」
優梨華には聞き覚えのあるハリのある声だった。表情を引き締め咳払いをして後ろを振り返る。
「笠野さん。まさか、こんな所で会うなんてね」
優梨華は、学校の時の声に変えて、言った。
そこにいたのは涼紀の妹である笠野涼花だった。
数十分前。涼花は、兄である涼紀と会っていた。
「へー。ほぼ野球初心者の、バカ兄でもスタメンなんだ」
「まあ。俺は運動能力が高いからな!」
冷めた目の涼花に対し、自慢げにドヤ顔で答えるも涼花は華麗にスルーしていた。
「そういえば、今日はパパも来てるよ」
「え⁈ マジか! どこにいるんだ!!」
熱くなりすぎて、涼花の方へと迫っっていた。
「ちっ、近いし、ウザイし、熱くるしいから離れろ!」
両手で涼紀を突き放す。涼紀は少し深呼吸をして心を落ち着かせた。
「ご、ごめん。で、父さんはどこに?」
「うーんと、もう既に三塁側の観客席かな? パパったら、来るなり釘付けになって観てるんだから。だから、バカ兄に今日は来てるってのを伝えてこい、って伝言されたの」
「なーんだ。せっかく試合前になんかアドバイス貰おうと思ってたのに…」
涼紀は肩を落とした。
「あと、全力を尽くして来いだって。それじゃ、あたしは戻るから」
そう言って、涼花は、観客席の方へと向かった。
「えーっと、あたしは何処から来たんだっけ?」
涼紀のところに行ったのは良かったが、涼花は、元の場所に戻れずにいた。
「こっちだっけ? それともあっちだった……?!」
入口を探していると、涼花はふと、ある人物の気を感じ取り、その方へ振り向いた。
「あの髪の色は……、あいつしかいない!」
涼花は確信した。その気配の正体が、自分のおそらく最大のライバルである優梨華であることを。
涼花はすぐさま後をつけた。学校でライバルである以上、何かしらの弱みを握っておきたい。だが、学校生活ではそんな要素をあまり見せない。あるとしたら、胸のサイズくらいだ。
だが普段誰も見ていない所では、何か隠しているものも出てきたりする。いわば相手の癖などを見抜くチャンスでもあるのだ。
涼花は気づかれないように、ある程度の距離を保っている。
「あいつは気付いていない。大丈夫。けど、あいつはいつも通り、無表情、というか、偉そうな顔してんなー」
涼花はギュッと、拳を握りしめる。それと同時に若干早足になった。
「ちょっと自分が金持ちで、顔が良くて、私より経験がない癖にバスケ上手くて、頭がイイってだけで女王様のような態度取りやがって。本当、イライラするー!」
涼花は次第に、優梨華に対する愚痴をこぼし始めた。
「それにしても、なんでこんな所に来て……あ、表情がなんか緩くなった。珍しいな。恋人か、誰か見つ、え、なんでいきなり走り始めるの⁈」
おそらく、見つけた相手は、幸長である。だが、そんなことを知らない涼花は、戸惑いながらも、見失なわないように、走った。しかし、人混みの中に紛れ、見失ってしまった。
「えっと、どこにい………」
人混みから逃れ、優梨華を見つけた瞬間。涼花はあり得ない光景に、思わず言葉を失った。
「お兄ちゃん!!」
なんとあの優梨華が、頬を緩ませまるでご主人様を見つけた子犬のような態度をとっているではないか。
普段学校では絶対に見ない光景である。
もしも、この様子を写真で撮ってばら撒けば、あいつのイメージは大崩れするはず。
涼花はスマホを取り出し、写真を撮った。
そして、優梨華と対峙している、今に至る。
母親や兄から見れば今まで距離を置いていたのが嘘に思える程、家に帰るギリギリの時間まで幸長の側に寄り添っていた。
一方幸長は医者も驚くような回復を見せ、杖を突きながらも歩くけるようになり、予定より一週間早く退院することが出来た。
その後も幸長は毎日毎日、血の滲むようなリハビリやトレーニングをした。その結果普通に歩くどころか、事故前と変わらない速さで、走ることまで出来るようになった。
もちろん優梨華もリハビリやトレーニングを手伝った。その中でトレーニング、リハビリ中にも決して弱音を履かず常に全力で励んでいた幸長を見て、ますます惚れていった。
そうして、現在。もはや優梨華の愛は手に負えないものにまでなっていた。今も三塁側の中段の通路で、試合前の練習ではなく幸長の写真を見つめていた。
「お兄ちゃんが野球してるとこ、久しぶりに見るなあ。前来た時は凄く打っていたし。今日も、打ってくれて活躍して……。うん。きっと、喜んでくれる。んーー! 堪らないわ!」
優梨華が、妄想に入り浸っていたその時だった。
「あら、珍しいわね。氷の女帝と言われる大島さんが、こんな所にいて、おまけに、いつも見ないようなハイテンションに、いつもと違う、かわいい声出してるなんて。明日は嵐かしら?」
優梨華には聞き覚えのあるハリのある声だった。表情を引き締め咳払いをして後ろを振り返る。
「笠野さん。まさか、こんな所で会うなんてね」
優梨華は、学校の時の声に変えて、言った。
そこにいたのは涼紀の妹である笠野涼花だった。
数十分前。涼花は、兄である涼紀と会っていた。
「へー。ほぼ野球初心者の、バカ兄でもスタメンなんだ」
「まあ。俺は運動能力が高いからな!」
冷めた目の涼花に対し、自慢げにドヤ顔で答えるも涼花は華麗にスルーしていた。
「そういえば、今日はパパも来てるよ」
「え⁈ マジか! どこにいるんだ!!」
熱くなりすぎて、涼花の方へと迫っっていた。
「ちっ、近いし、ウザイし、熱くるしいから離れろ!」
両手で涼紀を突き放す。涼紀は少し深呼吸をして心を落ち着かせた。
「ご、ごめん。で、父さんはどこに?」
「うーんと、もう既に三塁側の観客席かな? パパったら、来るなり釘付けになって観てるんだから。だから、バカ兄に今日は来てるってのを伝えてこい、って伝言されたの」
「なーんだ。せっかく試合前になんかアドバイス貰おうと思ってたのに…」
涼紀は肩を落とした。
「あと、全力を尽くして来いだって。それじゃ、あたしは戻るから」
そう言って、涼花は、観客席の方へと向かった。
「えーっと、あたしは何処から来たんだっけ?」
涼紀のところに行ったのは良かったが、涼花は、元の場所に戻れずにいた。
「こっちだっけ? それともあっちだった……?!」
入口を探していると、涼花はふと、ある人物の気を感じ取り、その方へ振り向いた。
「あの髪の色は……、あいつしかいない!」
涼花は確信した。その気配の正体が、自分のおそらく最大のライバルである優梨華であることを。
涼花はすぐさま後をつけた。学校でライバルである以上、何かしらの弱みを握っておきたい。だが、学校生活ではそんな要素をあまり見せない。あるとしたら、胸のサイズくらいだ。
だが普段誰も見ていない所では、何か隠しているものも出てきたりする。いわば相手の癖などを見抜くチャンスでもあるのだ。
涼花は気づかれないように、ある程度の距離を保っている。
「あいつは気付いていない。大丈夫。けど、あいつはいつも通り、無表情、というか、偉そうな顔してんなー」
涼花はギュッと、拳を握りしめる。それと同時に若干早足になった。
「ちょっと自分が金持ちで、顔が良くて、私より経験がない癖にバスケ上手くて、頭がイイってだけで女王様のような態度取りやがって。本当、イライラするー!」
涼花は次第に、優梨華に対する愚痴をこぼし始めた。
「それにしても、なんでこんな所に来て……あ、表情がなんか緩くなった。珍しいな。恋人か、誰か見つ、え、なんでいきなり走り始めるの⁈」
おそらく、見つけた相手は、幸長である。だが、そんなことを知らない涼花は、戸惑いながらも、見失なわないように、走った。しかし、人混みの中に紛れ、見失ってしまった。
「えっと、どこにい………」
人混みから逃れ、優梨華を見つけた瞬間。涼花はあり得ない光景に、思わず言葉を失った。
「お兄ちゃん!!」
なんとあの優梨華が、頬を緩ませまるでご主人様を見つけた子犬のような態度をとっているではないか。
普段学校では絶対に見ない光景である。
もしも、この様子を写真で撮ってばら撒けば、あいつのイメージは大崩れするはず。
涼花はスマホを取り出し、写真を撮った。
そして、優梨華と対峙している、今に至る。
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