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日常
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「如月さん、そろそろ行こうか?」
「あっ、はい解りました。」
ホワイトボードに
『久堂同行』
と書く。
久堂と一緒に会社を出ると、会社裏にある駐車場に向う。
(あれ?)
不思議に思う。
会社裏にある駐車場には試乗車やお客様から預かった車が置いてある。
久堂は、置いてあった試乗車に乗る。
「・・・・・。久堂さん、代車があるなら私が一緒に行く必要無いんじゃ・・?」
咄嗟に久堂の人差し指が美咲の唇に触れた。
「っつ・・・・。」
「如月さんと二人きりになる口実。」
柔らかい笑顔を浮かべる、そんな久堂に美咲は何も言えなかった。
「さぁ、行こうか?」
「・・・・。はい。」
そう答えるのが精一杯だった。
「昨日は何してたの?」
「はい、お土産を渡しに出掛けてました。」
「そう。結城さんとかに?」
「はい。後は知り合いのママと女の子達に。」
「そっか。」
「・・はい。」
美咲が居た堪れなくて、視線を落とした。
久堂は、助手席に座る美咲の手を握る。
「気にする事はないよ?俺にとってもう如月さんは大切な存在になってたから・・。」
思わず、美咲の手を握る腕に力がこめられた。
その手を、恐る恐る優しく握り返した。
その仕草が可愛くて、久堂は満面の笑みを浮かべる。
「ふふっ。可愛い。」
「もうっ、久堂さんっ!?」
「ははっ、ごめん。でも、可愛いのは本当だから。」
結局、この日は簡単な挨拶と車の引き取りで終わってしまった。
「ごめん。明日は君の為に時間開けといたから
。いくらでも、手伝うよ?」
「大丈夫ですよっ!そんな気にしないで下さい。」
久堂が美咲に近付く。
美咲の頬に手を伸ばす。
「俺にそんな遠慮はしてほしくないな?」
「で、でも、ほら久堂さんは忙しいから。ホントに気にしないで下さい。」
二人で会社に戻る。
時間は20時を過ぎていた。会社はもう既に暗くて鍵が掛かっている。
「あれ~?今日は皆帰っちゃったのか・・・・。」
久堂はセキュリティを解除して事務所に入る。
「まぁ、初日ですしね?」
「そうだね。ごめんね?こんな時間にまで付き合わせちゃって。」
「ふふっ、大丈夫です。どうせ、家に帰っても一人ですし。」
美咲にとっては何気ない一言だったが久堂は顔を曇らせた。
「そんな寂しい事言わないで・・?」
「あっ!そんな事ないんですよ?一人には慣れてるし、自分の好きな事できるしっ!」
言ってしまってから慌てた。美咲にとってはそれが日常だったから他意は本当に無かった。
でも、久堂に気を使わせてしまったと思うと内心落ち込んだ。
「久堂さん、コーヒーでも飲みますか?」
「ああ、ありがと。」
給湯室に行くと久堂のカップと自分のカップを出す。ホットコーヒーは既に無かったので、アイスコーヒーを用意した。
「どうぞ?」
「ありがとう。」
美咲は自分の席に座るとノートパソコンを起動する。
メールのチェックや日報の記入をする。
「よしっと。」
大体の雑務が終わると久堂の方も終わったみたいだった。
「終わった?じゃあ、帰ろっか?」
「はい。そうですね。」
二人で事務所を後にした。一緒に駐車場まで行く。
「じゃあ、久堂さんお疲れ様でした。」
「・・・うん。」
自分の車に乗り込もうとすると久堂に腕を掴まれる。
「久堂さんっ?」
「・・・・。如月さんの事一人で帰したくないな?」
「さっきの気にしてるんですかっ?あれはホントに大丈夫ですから!!久堂さんもほら早く家に帰らないとっ!!」
「・・・・。」
「く、久堂さん?」
視線が絡み合うと美咲の視線が彷徨った。
「如月さん?」
「は、はい。」
「食事にでも行こうか?遅くまで付き合わせちゃったし。」
「・・・、大丈夫ですよ?それにちゃんとお家でご飯食べて下さいっ!!」
「でもっ・・。」
「ほらほら、家族が帰りを待ってますよっ?早く帰らないと!!ねっ?」
久堂の車の側までグイグイと押すと
「き、如月さんっ!?」
「奥さんと子供達が待ってますよ?気を付けて帰ってくださいね?お疲れ様でした。」
そう言うと、美咲は自分の車に乗り込んでエンジンを掛けた。
「じゃ、お疲れ様です!!」
そう言うと車を出した。
「あ、危なかったぁ・・・。もう、駄目だよ。久堂さんには家族が居るんだからっ!」
自分に言い聞かせるように呟くと自宅へと向かった。
「あっ、はい解りました。」
ホワイトボードに
『久堂同行』
と書く。
久堂と一緒に会社を出ると、会社裏にある駐車場に向う。
(あれ?)
不思議に思う。
会社裏にある駐車場には試乗車やお客様から預かった車が置いてある。
久堂は、置いてあった試乗車に乗る。
「・・・・・。久堂さん、代車があるなら私が一緒に行く必要無いんじゃ・・?」
咄嗟に久堂の人差し指が美咲の唇に触れた。
「っつ・・・・。」
「如月さんと二人きりになる口実。」
柔らかい笑顔を浮かべる、そんな久堂に美咲は何も言えなかった。
「さぁ、行こうか?」
「・・・・。はい。」
そう答えるのが精一杯だった。
「昨日は何してたの?」
「はい、お土産を渡しに出掛けてました。」
「そう。結城さんとかに?」
「はい。後は知り合いのママと女の子達に。」
「そっか。」
「・・はい。」
美咲が居た堪れなくて、視線を落とした。
久堂は、助手席に座る美咲の手を握る。
「気にする事はないよ?俺にとってもう如月さんは大切な存在になってたから・・。」
思わず、美咲の手を握る腕に力がこめられた。
その手を、恐る恐る優しく握り返した。
その仕草が可愛くて、久堂は満面の笑みを浮かべる。
「ふふっ。可愛い。」
「もうっ、久堂さんっ!?」
「ははっ、ごめん。でも、可愛いのは本当だから。」
結局、この日は簡単な挨拶と車の引き取りで終わってしまった。
「ごめん。明日は君の為に時間開けといたから
。いくらでも、手伝うよ?」
「大丈夫ですよっ!そんな気にしないで下さい。」
久堂が美咲に近付く。
美咲の頬に手を伸ばす。
「俺にそんな遠慮はしてほしくないな?」
「で、でも、ほら久堂さんは忙しいから。ホントに気にしないで下さい。」
二人で会社に戻る。
時間は20時を過ぎていた。会社はもう既に暗くて鍵が掛かっている。
「あれ~?今日は皆帰っちゃったのか・・・・。」
久堂はセキュリティを解除して事務所に入る。
「まぁ、初日ですしね?」
「そうだね。ごめんね?こんな時間にまで付き合わせちゃって。」
「ふふっ、大丈夫です。どうせ、家に帰っても一人ですし。」
美咲にとっては何気ない一言だったが久堂は顔を曇らせた。
「そんな寂しい事言わないで・・?」
「あっ!そんな事ないんですよ?一人には慣れてるし、自分の好きな事できるしっ!」
言ってしまってから慌てた。美咲にとってはそれが日常だったから他意は本当に無かった。
でも、久堂に気を使わせてしまったと思うと内心落ち込んだ。
「久堂さん、コーヒーでも飲みますか?」
「ああ、ありがと。」
給湯室に行くと久堂のカップと自分のカップを出す。ホットコーヒーは既に無かったので、アイスコーヒーを用意した。
「どうぞ?」
「ありがとう。」
美咲は自分の席に座るとノートパソコンを起動する。
メールのチェックや日報の記入をする。
「よしっと。」
大体の雑務が終わると久堂の方も終わったみたいだった。
「終わった?じゃあ、帰ろっか?」
「はい。そうですね。」
二人で事務所を後にした。一緒に駐車場まで行く。
「じゃあ、久堂さんお疲れ様でした。」
「・・・うん。」
自分の車に乗り込もうとすると久堂に腕を掴まれる。
「久堂さんっ?」
「・・・・。如月さんの事一人で帰したくないな?」
「さっきの気にしてるんですかっ?あれはホントに大丈夫ですから!!久堂さんもほら早く家に帰らないとっ!!」
「・・・・。」
「く、久堂さん?」
視線が絡み合うと美咲の視線が彷徨った。
「如月さん?」
「は、はい。」
「食事にでも行こうか?遅くまで付き合わせちゃったし。」
「・・・、大丈夫ですよ?それにちゃんとお家でご飯食べて下さいっ!!」
「でもっ・・。」
「ほらほら、家族が帰りを待ってますよっ?早く帰らないと!!ねっ?」
久堂の車の側までグイグイと押すと
「き、如月さんっ!?」
「奥さんと子供達が待ってますよ?気を付けて帰ってくださいね?お疲れ様でした。」
そう言うと、美咲は自分の車に乗り込んでエンジンを掛けた。
「じゃ、お疲れ様です!!」
そう言うと車を出した。
「あ、危なかったぁ・・・。もう、駄目だよ。久堂さんには家族が居るんだからっ!」
自分に言い聞かせるように呟くと自宅へと向かった。
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