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温かな温もり

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「う・・ん・・?」

朝の日差しを感じて目を覚ます。
何時もの見慣れた天井だ。
手に温かなぬくもりを感じて視線を向けると、結城がベッドの傍らで美咲の手を握りしめて眠っていた。

「・・・・・。」

思わず握られている手に少し力を込めた。

「すばる・・おじさん?」

「んっ・・。」

結城が目を覚ます。美咲は思わず結城の手を握り返した。

「みさきっ!?」

「昴・・おじさん?わたし・・。」

「良いんだ。今は無事に美咲がここに居るだけで!」

涙を浮かべて結城は美咲の手を握り締めた。

「・・・・・。」

美咲は混乱していた。昨日あった事や今自分がどうやってこの部屋に居るのかが。でも、朧気に記憶はあった。

「暫く会社は休むといい。私から上手く説明しておくから。」

「・・はい。ありがとうございます。」

「美咲はまだ寝ていて良いよ?身体、痛い所とかは無いかな?」

口の中が切れていて少し喋りづらいがそれ以外は平気だった。

「大丈夫です。」

結城は優しい笑顔を浮かべた。

「そっか?私はちょっと電話をしてくるから少しの間一人でも平気かな?」

「ふふっ。大丈夫ですよ?」

美咲は笑ってみせた。

「そうか。良かった。」

そう言うと美咲の頭を撫でて電話をしにいった。
美咲は必死に昨日のことを思い出そうとした。
少しづつ記憶が蘇ってくるがまだ霧がかかった様に鮮明には思い出せなかった。




一方、結城は美咲の会社に電話をして暫く休む旨を伝えた。
それから、久堂に電話をした。

「おはようございます。久堂さん、今大丈夫ですか?」

『おはようございます。大丈夫ですよ?如月さんはどうですか?』

「まだ状況が良く理解出来てないみたいですが、大丈夫ですよ?」

『そうですかっ!良かった。それだけが気掛かりだったので。後で如月さんの所に顔を出しても平気ですか?』

「もちろんです。是非、会ってやって下さい。」

『わかりました。とにかく、無事なら良かったです。』

「久堂さん。本当にありがとうございました。美咲の命の恩人です。私からも改めてお礼させてください。」

『何を言ってるんですか?私は当たり前の事をしただけですよ?』




電話が終わると美咲の元に戻る。
すると、美咲は鏡を見ていた。
自分の姿に少し驚いていた。

「どうしたんだ?鏡なんて見て?」

「あっ。」

美咲は少し気まずそうにしていた。

「この顔。私どうしたんでしょう?」

結城は手を伸ばすと青アザになっている口元に優しく触れた。

「痛いかい?」

頭をフルフルと振る。

「大丈夫。」

「そっか?そうそう、会社は大丈夫だったよ。暫く休むといい。今は心も身体もイッパイイッパイだろうからね?」

「ありがとうございます。」

窓を開けると、清々しい空気が入り込み二人の頬を撫でた。
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