41 / 200
零れ落ちる砂
しおりを挟む
キミコの店は繁華街の一本路地を入った所にあった。
2階に店を構え、3階にはお店で働く女の子達の為に数部屋を借りていた。
「美咲ちゃん?明日も貴女はお仕事なんだからもう良いわよ?部屋は3階の部屋を使って?」
「わかりました。ママ、皆さんお先に失礼します。」
美咲はキミコと女の子達に挨拶すると店を出ていった。
3階の部屋のドアを開けるとワンルームの綺麗な部屋だった。
換気をしようと窓を開ける。その時、いつもの視線を感じて心臓が跳ねた。
道路に視線を移すと一人の男性と目が合う。全身が粟立つ。
(あの人だっ!ここ最近感じていた視線の主は。)
慌ててカーテンを閉めてその場に座り込む。
(ここも、もう知られてしまった。)
でも、キミコの所にいる限り安全だと結城には言われていた。どうやら、早々簡単に手出しの出来ない後ろ盾がキミコには在る様だった。
(昴おじさんが、後は任せろ。と言ってくれたけど、その間長嶺さんに会ってはいけないって・・どうして?何か関係があるのかな?)
ここ数日は、朝早く出勤して定時であがっていた。当然会社が隣同士なので長嶺と会ってしまう可能性があったが幸い今日まで顔を合せる事はなかった。
(長嶺さんから連絡も無いって事はやっぱり・・。)
ため息をつくとベッドに横になる。目を閉じると長嶺の優しい笑顔を思い出す。
「雅也・・さん。」
つい溢れてしまった言葉は虚しく消えていった。日頃の疲れもあってか美咲が眠りに落ちたのはあっという間だった。
「美咲。もう終わりにしよう?」
長嶺から告げられた言葉に何も言えなかった。
「ちょっと変わった子だと思ってさ。毎晩肉だと時々魚が食べたくなるでしょ?それと同じ事だよ?だけどやっぱり君は俺には不釣合だったね?」
「そんな・・。」
長嶺の視線はまるで汚いものを見るようなものだった。
「嫌だっ。そんな目で見ないでっ!!辞めてっ!」
その場に蹲る。
「さよならだ。美咲。もう逢う事も無いだろうね?」
長嶺の足音がどんどんと遠ざかっていく。後を追いたいが身体が言う事をきかない。
「待ってっ!置いて行かないでっ!!」
「まってっっ!!」
自分の叫び声で目を覚ます。
「なんだ・・ゆめ?か。」
大きなため息をつく。自分の手を見ると震えているのに気が付く。その手をギュッと握りしめる。
「ゆめ・・じゃないかもね?」
膝を抱えて顔を伏せた。
自分の大切な物が砂の様に指の間から零れ落ちていく。どんなに望んでも願っても勝手に無くなってしまう。
そうして、結局美咲の手には何も残らない。世の中の不条理をわかってはいたが、改めて認識させられた。
2階に店を構え、3階にはお店で働く女の子達の為に数部屋を借りていた。
「美咲ちゃん?明日も貴女はお仕事なんだからもう良いわよ?部屋は3階の部屋を使って?」
「わかりました。ママ、皆さんお先に失礼します。」
美咲はキミコと女の子達に挨拶すると店を出ていった。
3階の部屋のドアを開けるとワンルームの綺麗な部屋だった。
換気をしようと窓を開ける。その時、いつもの視線を感じて心臓が跳ねた。
道路に視線を移すと一人の男性と目が合う。全身が粟立つ。
(あの人だっ!ここ最近感じていた視線の主は。)
慌ててカーテンを閉めてその場に座り込む。
(ここも、もう知られてしまった。)
でも、キミコの所にいる限り安全だと結城には言われていた。どうやら、早々簡単に手出しの出来ない後ろ盾がキミコには在る様だった。
(昴おじさんが、後は任せろ。と言ってくれたけど、その間長嶺さんに会ってはいけないって・・どうして?何か関係があるのかな?)
ここ数日は、朝早く出勤して定時であがっていた。当然会社が隣同士なので長嶺と会ってしまう可能性があったが幸い今日まで顔を合せる事はなかった。
(長嶺さんから連絡も無いって事はやっぱり・・。)
ため息をつくとベッドに横になる。目を閉じると長嶺の優しい笑顔を思い出す。
「雅也・・さん。」
つい溢れてしまった言葉は虚しく消えていった。日頃の疲れもあってか美咲が眠りに落ちたのはあっという間だった。
「美咲。もう終わりにしよう?」
長嶺から告げられた言葉に何も言えなかった。
「ちょっと変わった子だと思ってさ。毎晩肉だと時々魚が食べたくなるでしょ?それと同じ事だよ?だけどやっぱり君は俺には不釣合だったね?」
「そんな・・。」
長嶺の視線はまるで汚いものを見るようなものだった。
「嫌だっ。そんな目で見ないでっ!!辞めてっ!」
その場に蹲る。
「さよならだ。美咲。もう逢う事も無いだろうね?」
長嶺の足音がどんどんと遠ざかっていく。後を追いたいが身体が言う事をきかない。
「待ってっ!置いて行かないでっ!!」
「まってっっ!!」
自分の叫び声で目を覚ます。
「なんだ・・ゆめ?か。」
大きなため息をつく。自分の手を見ると震えているのに気が付く。その手をギュッと握りしめる。
「ゆめ・・じゃないかもね?」
膝を抱えて顔を伏せた。
自分の大切な物が砂の様に指の間から零れ落ちていく。どんなに望んでも願っても勝手に無くなってしまう。
そうして、結局美咲の手には何も残らない。世の中の不条理をわかってはいたが、改めて認識させられた。
0
お気に入りに追加
39
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥
えっちめシーンの話には♥マークを付けています。
ミックスド★バスの第5弾です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる