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揺るがない想い

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結城と別れた後もう一度美咲の携帯に電話した。相変わらず、留守電になってしまう。

『美咲?長嶺だけど、今日会いたい。夜7時過ぎには美咲の所に行けると思う。もし・・美咲が居なくてもずっと、ずっと待ってるから・・。』

メッセージを入れると電話を切った。




午後7時。
長嶺は美咲の部屋の前に居た。
インターホンを鳴らす。

「・・・・・。」

(駄目か・・。)

暫くするとドアが開いた。

「みさき?入っても良いかな?」

「・・どうぞ。」

テーブルの上に買ってきたコーヒーとパンを置いた。

「これ、食べて?」

「ありがとうございます。」

「うん。それで体調はどう?ちゃんと食べてる?」

聞きたいことが沢山あった、でも美咲の顔を見た瞬間どうでも良くなった。
ただ、顔を見れたことが嬉しくて美咲の手を握ると引き寄せた。

「もっと近くでちゃんと顔見せて?」

「な、長嶺さん?」

近くで見つめると彷徨うように視線を揺らした。

「俺を見て?」

「・・・。」

やっと視線が絡む。
柔らかい笑顔を浮かべた長嶺は確信したように言葉を紡ぐ。

「やっぱり、俺は美咲が好きだ。この前言った事は本気だよ。俺が美咲の笑顔を守る。過去は辛いものだったかもしれない。でもそんな事忘れる位新しい楽しい思い出を二人で作ろう?」

「どうして?どうしてそこまで言ってくれるの・・?私なんて・・。」

「美咲?『私なんて』なんて言わないで?俺は美咲がいいんだ。」

「こんな、何も持っていない私でも?」

「うん。」

「また、逃げるかもしれないよ?」

「何度でも捕まえる。」

みるみるうちに美咲の瞳に涙がたまっていく。

「こんな、駄目な私でも・・?」

「駄目じゃない。」

長嶺は美咲の手を握ると指先に口づけをした。

「もう一度言わせて?俺は美咲が好きだ。付き合ってほしい。絶対に大切にする。」

「・・・っつ。」

美咲の瞳から涙がはらはらと溢れる。
長嶺は頬に手を伸ばすと涙を拭う。

「・・はい。」

消えてしまいそうな声で答えた。
長嶺は美咲をギュッと抱き締めた。
長嶺の香りに包まれると穏やかな気持ちになる。

「良かったぁー。緊張した。」

「えっ?長嶺さんでも?」

「するよ。こんな気持ちになったの初めてだし。」

「そうなんですか?」

クスリと小さく笑った。

「やっと笑ってくれた。」

長嶺は笑いながら美咲の瞼に口づけをした。

「ながみね・・さん。」

「うん?」

見つめ合うとどちらともなく口づけを交わす。
薄く開いた唇からスルリと器用な舌が入ると優しく絡ませる。

「んっ・・。」

指を絡めて握ると、やんわりと押し倒される。

「美咲。可愛い。」

もう一度深い口づけをすると思わず長嶺の服をキュと握る。

「あっ・・。」

耳朶を喰むと首筋に唇を這わせる、美咲の口から甘い声が溢れる。

「やっ・・なが・みねさんっ。」

「どうしたの?」

耳元で甘く囁かれる。

「ふぁ・・。やっ、そこで喋らないでっ。」

「本当に可愛い。ここ好きなの?」

変わらずに耳元で艶っぽく囁く。

「んっ・・。はぁっ・・。」

美咲の瞳に涙が浮かぶ、それは決して悲しい涙ではなかった。。

「ははっ。可愛いね?」

もう一度口づけをする。
懸命に長嶺に答えようとする美咲が愛おしくて仕方ない。
何度口づけても触れても欲を掻き立てられた。
美咲を抱き締めながら長嶺は笑う。

「ずっとずっとこうしていたい。美咲?愛してる。」

真摯に告げられた言葉がジワリと心にしみていった。
今度は長嶺の頬に美咲が触れる。

「・・わたしも・・。」

「うんっ。」

たった一言だけれども長嶺を心から幸福な気持ちにさせた。
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