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「あ、何かお菓子ないかな?」
「如月さん?」
「久堂さんお腹空きましたよね?」
慌てて立上りキッチンへ行こうとすると、久堂に手を掴まれた。
「大丈夫だよ?気にしないで良いから座って?」
「で、でも・・・。」
手を引かれ、久堂の隣に座った。
「・・・。」
「如月さんが無事で本当に良かった。犯人に刃物を突き付けられているのを見た時、心臓が止まるかと思った。」
「ごめんなさい・・・。」
「謝らなくて良いんだ。如月さんが悪いんじゃないんだから。」
久堂が美咲の頬に手を伸ばす。顔にかかった髪を一筋耳にかけた。
「く・・どう、さん?」
ドキリと心臓が大きく跳ねた。
顔を上げると久堂と視線が合う。
「我慢しなくて良いんだよ?」
「えっ?」
「怖かったよね?本当は泣きたかったんじゃないの?でもあの時我慢したよね?でも今ここには俺しか居ないから泣いても良いんだよ?」
「・・・・。」
あの時我慢した気持ちがぶり返してきた。
カッターを突き付けられ、車に無理矢理乗せられた時の恐怖が。
「・・っつ・・。」
美咲の瞳にみるみる涙がたまっていき、一粒涙が零れた。
久堂は何も言わずに美咲を引き寄せると優しく抱きしめた。
そして、優しくゆっくりと背中をなでた。
美咲の瞳からは次々と涙が零れ落ちる。
「くどう、さんっ・・。」
「うん。大丈夫。もう大丈夫だから。次は俺が必ず守るから。」
髪を優しく撫でられる。
美咲は自分でも驚くほど泣いた。こんなに泣いたのはいつ以来かわからなかった。
5分だったか、10分だったかわからない。ただただ美咲を落ち着かせるように久堂は抱きしめた。
ようやく、美咲が落ち着きを取り戻し久堂の顔を見上げる。
涙の跡を優しく拭ってくれた。
「ごめんなさい。みっともない所見せてしまって、、、」
「そんなことないよ?泣いてくれて良かった。あのままじゃ如月さんの心が心配だったから。」
「私の、こころ?」
「そう。身体は怪我をしたら見えるし治療をすれば治る。でも心は・・心が傷付いて血を流していてもなかなか気が付かない。そうして、無理をしていくといつか心が悲鳴を上げるんだ。そうなってしまってからじゃ遅いんだ。」
「・・・。」
「だから、俺には甘えてくれて良いんだよ?何時だって如月さんの力になるから。」
久堂はそう言うと、優しい笑顔を美咲に向けた。
✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻
気が付くと、既に夜10時を過ぎていた。
「久堂さん、ごめんなさいこんな時間まで付き合わせてしまって・・・。」
「ああ、大丈夫。いつも仕事終わるのこのくらいの時間だし。」
「こんなに遅くまで仕事してるんですか?」
「ははっ、貧乏暇無しだよ。」
「今日も本当は仕事があったんじゃ、、、?」
「大丈夫。その辺は上手くやってるから。心配ないよ。」
「そうなんですか?・・・私はもう大丈夫なので久堂さんもご自宅に帰ってゆっくりしてください。」
「・・・。」
久堂はジッと美咲の顔をみつめた。
「うん。さっきより顔色も良いみたいだね?でも本当に大丈夫?」
「はい。」
「そっか。わかった。」
スーツの上着を着ると玄関に向う。
「じゃあ、帰るけどちゃんと戸締まりするんだよ?」
「はい。駐車場まで送ります。」
「大丈夫だから。俺が帰ったら直ぐに戸締まりする事!わかった?」
「・・・はい、わかりました。」
「うん。じゃあね?明日は無理しなくても良いから休むといいよ。所長の了解も貰ってあるから。」
「でも、、、」
「まだ先は長いんだから焦らなくても良いんじゃないかな?だから明日は心置きなく休んで?いいね?」
「はい。ありがとうございます。」
「うん。じゃあ、お疲れ様。」
部屋を出ると鍵の掛かる音がした。それを確認するとエレベーターでエントランスへ向う。
駐車場からマンションを見上げると美咲の部屋の灯りがみえる。
暫く見つめていたが、車に乗り込むとマンションを後にした。
「如月さん?」
「久堂さんお腹空きましたよね?」
慌てて立上りキッチンへ行こうとすると、久堂に手を掴まれた。
「大丈夫だよ?気にしないで良いから座って?」
「で、でも・・・。」
手を引かれ、久堂の隣に座った。
「・・・。」
「如月さんが無事で本当に良かった。犯人に刃物を突き付けられているのを見た時、心臓が止まるかと思った。」
「ごめんなさい・・・。」
「謝らなくて良いんだ。如月さんが悪いんじゃないんだから。」
久堂が美咲の頬に手を伸ばす。顔にかかった髪を一筋耳にかけた。
「く・・どう、さん?」
ドキリと心臓が大きく跳ねた。
顔を上げると久堂と視線が合う。
「我慢しなくて良いんだよ?」
「えっ?」
「怖かったよね?本当は泣きたかったんじゃないの?でもあの時我慢したよね?でも今ここには俺しか居ないから泣いても良いんだよ?」
「・・・・。」
あの時我慢した気持ちがぶり返してきた。
カッターを突き付けられ、車に無理矢理乗せられた時の恐怖が。
「・・っつ・・。」
美咲の瞳にみるみる涙がたまっていき、一粒涙が零れた。
久堂は何も言わずに美咲を引き寄せると優しく抱きしめた。
そして、優しくゆっくりと背中をなでた。
美咲の瞳からは次々と涙が零れ落ちる。
「くどう、さんっ・・。」
「うん。大丈夫。もう大丈夫だから。次は俺が必ず守るから。」
髪を優しく撫でられる。
美咲は自分でも驚くほど泣いた。こんなに泣いたのはいつ以来かわからなかった。
5分だったか、10分だったかわからない。ただただ美咲を落ち着かせるように久堂は抱きしめた。
ようやく、美咲が落ち着きを取り戻し久堂の顔を見上げる。
涙の跡を優しく拭ってくれた。
「ごめんなさい。みっともない所見せてしまって、、、」
「そんなことないよ?泣いてくれて良かった。あのままじゃ如月さんの心が心配だったから。」
「私の、こころ?」
「そう。身体は怪我をしたら見えるし治療をすれば治る。でも心は・・心が傷付いて血を流していてもなかなか気が付かない。そうして、無理をしていくといつか心が悲鳴を上げるんだ。そうなってしまってからじゃ遅いんだ。」
「・・・。」
「だから、俺には甘えてくれて良いんだよ?何時だって如月さんの力になるから。」
久堂はそう言うと、優しい笑顔を美咲に向けた。
✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻
気が付くと、既に夜10時を過ぎていた。
「久堂さん、ごめんなさいこんな時間まで付き合わせてしまって・・・。」
「ああ、大丈夫。いつも仕事終わるのこのくらいの時間だし。」
「こんなに遅くまで仕事してるんですか?」
「ははっ、貧乏暇無しだよ。」
「今日も本当は仕事があったんじゃ、、、?」
「大丈夫。その辺は上手くやってるから。心配ないよ。」
「そうなんですか?・・・私はもう大丈夫なので久堂さんもご自宅に帰ってゆっくりしてください。」
「・・・。」
久堂はジッと美咲の顔をみつめた。
「うん。さっきより顔色も良いみたいだね?でも本当に大丈夫?」
「はい。」
「そっか。わかった。」
スーツの上着を着ると玄関に向う。
「じゃあ、帰るけどちゃんと戸締まりするんだよ?」
「はい。駐車場まで送ります。」
「大丈夫だから。俺が帰ったら直ぐに戸締まりする事!わかった?」
「・・・はい、わかりました。」
「うん。じゃあね?明日は無理しなくても良いから休むといいよ。所長の了解も貰ってあるから。」
「でも、、、」
「まだ先は長いんだから焦らなくても良いんじゃないかな?だから明日は心置きなく休んで?いいね?」
「はい。ありがとうございます。」
「うん。じゃあ、お疲れ様。」
部屋を出ると鍵の掛かる音がした。それを確認するとエレベーターでエントランスへ向う。
駐車場からマンションを見上げると美咲の部屋の灯りがみえる。
暫く見つめていたが、車に乗り込むとマンションを後にした。
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