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優しい気持ち

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震える手をギュッと握った。

「ごめん、如月さん。ちゃんと話しておけば良かったね?変に怖がらせてもと思ったんだ。まさかこんな事になるなんて思ってなかったから・・・。」

久堂は美咲の前に座りソッと震える手を握った。
温かい体温が冷えた美咲の身体に染み渡っていった。

「久堂さんは何も悪くないです。私がぼんやりしてたから・・・。」

「・・・。」

「・・・。」

短い沈黙の中、視線が絡み合う。
するとそこへ一人の刑事がやって来た。久堂はスッと立ち上がると刑事と入れ替えで休憩室を出ていった。

「如月さん?大丈夫ですか?」

「はい。少し落ち着きました。」

「それは良かった。怪我とかはありませんか?」

「はい。」

「でしたら申し訳ないんですが少しお話出来ますか?」

「大丈夫です。」

簡単な事情聴取が終わると午後7時を回ったところだった。
その頃にはだいぶ落ち着きも取り戻していた。
刑事が出ていくと暫くして久堂が入ってきた。

「如月さん、お疲れ様。遅くなっちゃったけど今日はもう帰っても大丈夫だよ。家まで俺が送って行くから。」

「そ、そんな!大丈夫ですよ?一人で帰れますから・・・。」

「だーめ。俺が心配だから、送らせて?」

「・・・。わかりました、お願いします。」

「うん。じゃあ、帰りの準備してきて?俺は車で待ってるから。」

「はい。」

事務所に戻り帰りの支度をする。
残っていた社員に挨拶をして会社を出ると、ショールームの前の駐車場に久堂の車が停まっていた。
助手席に乗り込むと静かに会社を後にした。

「如月さん一人暮らしなんだって?」

「あ、はい。実家からですとちょっと遠いので。」

「そうなんだ。もう慣れた?」

「はい。全然平気です。」

久堂に心配をかけたくないと思い一際明るく言った。

「・・・そっか。」

そんな話をしていると、マンションの駐車場に着いた。

(もう着いちゃった、、、。本当は一人になるのが怖い。でも、久堂さんに心配掛けたくないし。)

色々と考えていると

「本当に一人で平気?」

美咲の瞳を見つめながら聞いてきた。

「っ・・・。」

自分の心を見透かされた様で俯いてしまった。

「・・・。部屋の前まで送るよ。」

「えっ?でも、、、。」

「いいから!さっ行こう。」

久堂は車から降りてしまった。美咲も後を追う様に慌てて車から降りた。
エレベーターから降りると直ぐに美咲の部屋がある。

「ここです。」

バッグから鍵を取り出してドアを開けた。

「じゃあ、ちゃんと戸締まりするんだよ?」

「はい。・・・。」

久堂が帰ろうとしたとき、美咲は思わず久堂のスーツの裾を引っ張ってしまった。

「如月さん?」

「あっ、ごめんなさい。何でもないんです。送って下さってありがとうございました。」

「・・・。俺で良ければ気持ちが落ち着くまで側に居るよ?」

「えっと・・。」

「いや、側に居させて?如月さんの事が心配なんだ。」

「・・・。じゃ、お願い・・します。」

「うん。」

美咲は部屋に入ると電気をつけた。

「すみません、まだ引っ越して来たばかりで片付いてなくて。」

「全然大丈夫だよ。」

荷物を置くとキッチンでコーヒーを淹れ久堂の前に置いた。
二人っきりになった事を急に意識してしまい美咲は気持ちを落ち着ける為にコーヒーを一口飲んだ。

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