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それぞれの朝

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翌朝。
葵は自分のベッドで目を覚ました。

「んっ・・・。あれ?わたし・・昨日。」

(確か家に帰って来たら司が居て、それから・・どうしたんだっけ?)

リビングに行くと司がキッチンで朝食を作っていた。

「おはよう。良く眠れた?」

「・・・おはよう。」

「もうすぐ出来るからちょっと待ってて?」

「ありがとう。・・・支度してくる。」



朝食を済ませて、一緒に後片付けをしていると司の機嫌が良さそうだった。

「・・・つかさ?何かいい事でもあった?」

「うん。何かこういうの良いなって思って・・。」

「こういうの?」

「朝ご飯を一緒に食べて、後片付けを一緒にして、一人だと面倒だって思う事も好きな人と一緒ならこんなにも違うんだって思って。」

「・・・。」

「葵?俺はこんな些細な事でも嬉しいって思ってる。そんな俺が警察庁を辞めた事なんて後悔してると思うか?人は人。俺は俺だ。」

「っつ・・・。」

葵は司を見上げたが、その瞳は不安そうに揺らいでいた。
そんな葵を優しい眼差しで見つめた。




********




雪乃は鼻歌混じりで朝の支度をしていた。
そこへ、和泉がやってくる。

「雪乃お嬢様、おはようございます。朝食の準備が出来ました。」

「おはよう、和泉。わかったわ。」

機嫌の良さそうな雪乃を和泉は不思議そうに見つめた。

「雪乃様?何か良い事がありましたか?」

「ふふっ!やっぱり解る?私運命の人に出会ったのっ!!やっぱりあの方が私の運命の人だったんだわ!!」

「運命の・・人?」

「そうなの!先日、お見合いから逃げ出した時に出会ったの。また、会えるなんて思ってなかった!だから運命の人なのよっ!」

雪乃は瞳をキラキラさせて言った。

「・・・そうなんですか。」

「和泉も応援してね?私と運命の人が結ばれる様に!!」

「・・・はい。」

雪乃は今まで見たことが無いくらいはしゃいでいた。

「・・運命の人って・・なんだよっ!!」

和泉の呟きは虚しく消えていった。


和泉の父親は、相良柊一朗の秘書をしていた。
屋敷の別棟の家に父親と一緒に住んでいたのだ。
雪乃とは歳も近い事もあり幼い頃から一緒に過ごす事が多くその時から、和泉は雪乃の事が好きでずっと想っていた。
父が亡くなり、和泉は相良家の使用人になった。
柊一朗にお願いをして、雪乃の担当にしてもらった。
少しでも近くで雪乃を見ていたかった。
ただ、それだけで幸せだった。
まさか、雪乃に好きな人が出来るなんて思ってもいなかった・・・。
でも、雪乃も年頃だ好きな人が出来ても不思議ではない。
自分の気持ちを伝える事なんてないと思っていたが、いざ雪乃に好きな人が出来たと聞くとたまらない気持ちになった。

「俺はどうしたら良いんだ・・・。」




********




マンションを出た葵と司は一緒に大学に向かっていた。

「まさか、葵と一緒に通学するなんて思ってなかったよ?」

「そうね・・・。でも、一緒に行くのは最寄りの駅までだからね?」

「わかってるよ。」

大学の最寄り駅に着くと、別々に大学に向かう。
葵は大学に着くと校舎を見上げた。

「学校・・か・・。」

キャンパスには、楽しそうに友人と話す人達・サークル活動する人達が生き生きとその瞬間を謳歌していた。
葵にとっては、それがとてつもなく眩しく見えた。

「・・・今さら・・か。」

葵は自嘲すると大学の中に消えていった。
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