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第102回『アニメーション 涙ぐましい 時間割』
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YouTubeで行った
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第102回『アニメーション 涙ぐましい 時間割』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約55分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
ぽこん。
頭に軽い衝撃が来て、机の上に白い小さな物が転がった。
つまんでみるとそれが消しゴムの破片だということがわかった。
先生が黒板に向かって書きだした隙に振り返ると、吉岡がにまにまとしながら俺を見ていた。
シャーペンを持った手がノートの上でゆらゆらとしていたが、きっと何も書いていないだろう。
どうやら授業中に暇を持て余した吉岡のいたずららしい。
俺は消しゴムの破片を吉岡に投げ返してやろうと思ったが、先生は生徒の方をなかなかそのチャンスがやってこなかった。
俺は注意深く授業を聞いた。
教科書の内容と照らし合わせながら、同時に先生の目線や手元の動きも追わなければならない。
先生のクセも考慮に入れる必要があるので、俺は今までの授業での先生の一挙手一同を思い出していた。
大事なのは先を読むこと。
「まあ、これはつまり──。」
そう言って先生は少し黒板の方を向いた。
チャンスかと思ったが、あの手の動きはチョークを持とうとする動きではないことが見て取れた。
今先生が説明していることは板書してあることと関連性があるので、そこを指で指すために振り向いたのだろう。
しかしその箇所は先生から近いことは近いが、先生の右側に書かれてある。
先生は左から振り向いていた。
それは右から振り向くよりもわずかにタイムロスがあるということだ。
時計は授業の残り時間が10分も残っていることを示していた。
この後も先生が長々と黒板に向かうときは2回はやってくるだろう。
しかし、それはいつだろう?
1分後?
5分後だったら遅すぎる。
吉岡は俺に消しゴムを投げたことに飽きて、別のことを始めている可能性がある。
ならば今しかない。
俺の体に戦慄が走った。
先生が黒板の右側の箇所を指摘するわずかな時間でできること。
振り返るのは無理だ。
体が前に戻りきる前に先生はこっちを向いて、気付かれてしまうだろう。
最適解はこれだ。
俺は全神経を集中して吉岡の席の位置を思い出し、教室を俯瞰の視点で眺めるイメージをして、俺と吉岡の距離と方角を測った。
脳裏に吉岡の姿がありありと浮かぶと、俺は前を向いたまま先ほど吉岡が俺に向かって投げた消しゴムの破片を上空に向かって音もなく投げた。
消しゴムが俺の手を離れると、俺は耳を澄ませた。
吉岡があっと言うような気配がした。
俺が消しゴムを投げたことに気付いたのだろう。
先生はあ、こっちかと黒板の右側を指さした。
まもなく先生はこっちを見るだろう。
今、消しゴムは教室の上空をゆるりとした放物線を描いているはずだ。
そして俺と吉岡の中間で頂点を通過した消しゴムは、落下に入っているはずだ。
当たれ。
俺は耳を澄ませた。
ぽとん。
その音は予定よりもずっと下方、床から聞こえた。
吉岡の笑いをこらえる声が続いた。
このように早く終われと言わんばかりに俺たちは授業中に涙ぐましい努力をした。
消しゴムを投げる、変顔をする、手紙を渡す、などなど。
時には1コマずつ交代でノートにへたくそな漫画を描いて、お互いに相手がさっき描いた漫画を読んで授業中に吹き出してしまうなんてこともあった。
5コマや6コマが時間割ではなくアニメーションだったら、一瞬で過ぎ去っていくだろう。
俺らはそれを願っていたのになぜだろう、二人でいたずらをし合えばし合うほど時間の流れはスローモーションのように感じられた。
これが俺らの青春の1コマだ。
~・~・~・~・~
~感想~
お題に関連することを前半に長々と書き、お題そのものは後半で消化するという構成にしてみました。
当初は青春の1コマという文章は段落の冒頭にあったのですが、コマという言葉が段落後半に集中していたので、流れに合わせて段落の最後に置きました。
締めとしても、これはいい感じになったとは思ってます。
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第102回『アニメーション 涙ぐましい 時間割』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約55分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
ぽこん。
頭に軽い衝撃が来て、机の上に白い小さな物が転がった。
つまんでみるとそれが消しゴムの破片だということがわかった。
先生が黒板に向かって書きだした隙に振り返ると、吉岡がにまにまとしながら俺を見ていた。
シャーペンを持った手がノートの上でゆらゆらとしていたが、きっと何も書いていないだろう。
どうやら授業中に暇を持て余した吉岡のいたずららしい。
俺は消しゴムの破片を吉岡に投げ返してやろうと思ったが、先生は生徒の方をなかなかそのチャンスがやってこなかった。
俺は注意深く授業を聞いた。
教科書の内容と照らし合わせながら、同時に先生の目線や手元の動きも追わなければならない。
先生のクセも考慮に入れる必要があるので、俺は今までの授業での先生の一挙手一同を思い出していた。
大事なのは先を読むこと。
「まあ、これはつまり──。」
そう言って先生は少し黒板の方を向いた。
チャンスかと思ったが、あの手の動きはチョークを持とうとする動きではないことが見て取れた。
今先生が説明していることは板書してあることと関連性があるので、そこを指で指すために振り向いたのだろう。
しかしその箇所は先生から近いことは近いが、先生の右側に書かれてある。
先生は左から振り向いていた。
それは右から振り向くよりもわずかにタイムロスがあるということだ。
時計は授業の残り時間が10分も残っていることを示していた。
この後も先生が長々と黒板に向かうときは2回はやってくるだろう。
しかし、それはいつだろう?
1分後?
5分後だったら遅すぎる。
吉岡は俺に消しゴムを投げたことに飽きて、別のことを始めている可能性がある。
ならば今しかない。
俺の体に戦慄が走った。
先生が黒板の右側の箇所を指摘するわずかな時間でできること。
振り返るのは無理だ。
体が前に戻りきる前に先生はこっちを向いて、気付かれてしまうだろう。
最適解はこれだ。
俺は全神経を集中して吉岡の席の位置を思い出し、教室を俯瞰の視点で眺めるイメージをして、俺と吉岡の距離と方角を測った。
脳裏に吉岡の姿がありありと浮かぶと、俺は前を向いたまま先ほど吉岡が俺に向かって投げた消しゴムの破片を上空に向かって音もなく投げた。
消しゴムが俺の手を離れると、俺は耳を澄ませた。
吉岡があっと言うような気配がした。
俺が消しゴムを投げたことに気付いたのだろう。
先生はあ、こっちかと黒板の右側を指さした。
まもなく先生はこっちを見るだろう。
今、消しゴムは教室の上空をゆるりとした放物線を描いているはずだ。
そして俺と吉岡の中間で頂点を通過した消しゴムは、落下に入っているはずだ。
当たれ。
俺は耳を澄ませた。
ぽとん。
その音は予定よりもずっと下方、床から聞こえた。
吉岡の笑いをこらえる声が続いた。
このように早く終われと言わんばかりに俺たちは授業中に涙ぐましい努力をした。
消しゴムを投げる、変顔をする、手紙を渡す、などなど。
時には1コマずつ交代でノートにへたくそな漫画を描いて、お互いに相手がさっき描いた漫画を読んで授業中に吹き出してしまうなんてこともあった。
5コマや6コマが時間割ではなくアニメーションだったら、一瞬で過ぎ去っていくだろう。
俺らはそれを願っていたのになぜだろう、二人でいたずらをし合えばし合うほど時間の流れはスローモーションのように感じられた。
これが俺らの青春の1コマだ。
~・~・~・~・~
~感想~
お題に関連することを前半に長々と書き、お題そのものは後半で消化するという構成にしてみました。
当初は青春の1コマという文章は段落の冒頭にあったのですが、コマという言葉が段落後半に集中していたので、流れに合わせて段落の最後に置きました。
締めとしても、これはいい感じになったとは思ってます。
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