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第38回『なぞかけ 月 カレーうどん』
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YouTubeで行った
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第38回『なぞかけ 月 カレーうどん』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約1時間15分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=csk9uinbHgA
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
「ぐわっ。やられたっ。」
梨乃が天を仰いだ。
僕たちはこたつを向かい合わせてカレーうどんを食べている。
つまり梨乃の叫び声の正体は明らかだ。
僕はすかさずティッシュを一枚梨乃に差し出した。
「そんなに勢いよくすするからだよ。」
梨乃はティッシュを丸めて服の上からぽんぽんと叩いていた。
幸いずいぶん着古した服なので、今更カレーのシミがついたところでどうってことはないだろう。
しかし梨乃は服がもったいないのか、それともカレーうどんに一杯食わされたようで悔しいのか──もっとも、一杯のカレーうどんを食べているのは梨乃の方だが──、敗北感に打ちのめされていた。
「くそうっ、翼の折れたエンジェルのようなカレーうどんはないのかーー。」
突如出てきた中村あゆみに僕はそのままカレーうどんをちゅるちゅるっと吸うことしかできなかった。
「なにそれ。とりあえずカレーを食べてるときにくそって言うのやめて。」
どうやら梨乃は翼の折れたエンジェルという言葉にもっと触れてほしかったようで、カレーうどんだけでなく僕にも不満の視線をぶつけていた。
「羽根がない、はねない、跳ねないカレーうどんはないかってことよ。」
先ほどの教訓を忘れたかのように梨乃は勢いよくうどんをすすった。
梨乃はうどんを噛みながら鼻をすすっていたが、僕はなぞかけのようなものをとっさに出した梨乃に少し感心してしまった。
だがそのあと僕は梨乃が狼男が変身できない、セーラームーンがお仕置きできないとぶつぶつ言っているのを聞いてしまった。
どうやら次は運がなかった自分をツキがないというなぞかけを作ろうとしているらしい。
梨乃とはもう何年も一緒に暮らしているが、今までなぞかけを作ったことなんて一度もなかったのになぜ今日に限ってこだわっているのか僕にはわからなかった。
これもカレーうどんの反撃を喰らった悔しさゆえだろうか。
「まあ、運がなかったね。」
「カレーを食べてるときにうんって言うのやめて。」
さっきの僕の発言に対してやり返したつもりらしいが、僕はその理不尽さに驚いてしまった。
だが梨乃は月という発想からすでに別のことを妄想しているらしい。
「ねえ、月でカレーうどん食べると、むっちゃ跳ねそうじゃない?」
梨乃はいたずらを思いついた子供のようににこにこしていたが、僕も重力が小さいためにそこら中に汁を飛び散らせながらカレーうどんを一生懸命食べている宇宙飛行士を想像してうどんを吹き出しそうになってしまった。
「だね。だから月ではカレーうどんは食べられないね。月では月見うどんを食べるんじゃない?」
僕が合いの手を打つと、梨乃は跳ねた汁のことは忘れてごきげんになってきた。
「月見だからそれは地球で食べるんじゃない? 月でならやっぱ力うどんでしょ。」
僕が月面でうどん屋を開いている2匹のうさぎを想像していると、梨乃はテーブルに突っ伏してもだえた。
「っあー、自分で言ってたら力うどん食べたくなっちゃったーっ。」
食事を終えて僕と梨乃はどんぶりの洗い上げをしていた。
僕がどんぶりを洗い梨乃に手渡すと、彼女はすばやくふきんで水滴をぬぐって水切りラックに立てかけた。
「今日は災難だったね。今度力うどん食べる? おいしいお店探しておくから。」
おいしいものを食べに行く話をするといつもは喜ぶのだが、梨乃はしばらく黙って考え込んだ。
うどんはもう食べたくないのかなと思ったが、よく見ると梨乃の唇はぶつくさと動いていた。
そしてはっとすると、勝ち誇った顔をこっちに向けた。
「服についたカレーうどんとかけてあなたの言葉と解きます。」
「その心は?」
「よく沁みるでしょう。」
梨乃はなぞかけを思いついた自分に満足しているだけのはずだが、僕にはその笑顔が自分に向けられているようでまだ昼間だというのに梨乃に対して気持ちが込みあがってきた。
その視線で梨乃は僕の考えていることを察し、
「してほしいの?」
と聞いてきた。
僕が小さな声でうんと言うと、梨乃は軽くキスをして僕のチャックをゆっくりとおろした。
「梨乃。あ、あの……。」
「何?」
「服にかかっちゃったらごめん。」
「下ネタ言うのやめて。」
梨乃はほほえんでいた。
~・~・~・~・~
~感想~
オチは最初から決まっていたので、伏線として計3回「言うのやめて」というセリフをいれておくことができました。
ただオチに行く流れを直前でボツにしたので、新たに考え直すのに時間を取ってしまいました。
あとカレーうどんを食べたあとにしてもらうとひどいことになるんじゃないかとも思いましたがそれはもう後の祭りです。
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第38回『なぞかけ 月 カレーうどん』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約1時間15分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=csk9uinbHgA
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
「ぐわっ。やられたっ。」
梨乃が天を仰いだ。
僕たちはこたつを向かい合わせてカレーうどんを食べている。
つまり梨乃の叫び声の正体は明らかだ。
僕はすかさずティッシュを一枚梨乃に差し出した。
「そんなに勢いよくすするからだよ。」
梨乃はティッシュを丸めて服の上からぽんぽんと叩いていた。
幸いずいぶん着古した服なので、今更カレーのシミがついたところでどうってことはないだろう。
しかし梨乃は服がもったいないのか、それともカレーうどんに一杯食わされたようで悔しいのか──もっとも、一杯のカレーうどんを食べているのは梨乃の方だが──、敗北感に打ちのめされていた。
「くそうっ、翼の折れたエンジェルのようなカレーうどんはないのかーー。」
突如出てきた中村あゆみに僕はそのままカレーうどんをちゅるちゅるっと吸うことしかできなかった。
「なにそれ。とりあえずカレーを食べてるときにくそって言うのやめて。」
どうやら梨乃は翼の折れたエンジェルという言葉にもっと触れてほしかったようで、カレーうどんだけでなく僕にも不満の視線をぶつけていた。
「羽根がない、はねない、跳ねないカレーうどんはないかってことよ。」
先ほどの教訓を忘れたかのように梨乃は勢いよくうどんをすすった。
梨乃はうどんを噛みながら鼻をすすっていたが、僕はなぞかけのようなものをとっさに出した梨乃に少し感心してしまった。
だがそのあと僕は梨乃が狼男が変身できない、セーラームーンがお仕置きできないとぶつぶつ言っているのを聞いてしまった。
どうやら次は運がなかった自分をツキがないというなぞかけを作ろうとしているらしい。
梨乃とはもう何年も一緒に暮らしているが、今までなぞかけを作ったことなんて一度もなかったのになぜ今日に限ってこだわっているのか僕にはわからなかった。
これもカレーうどんの反撃を喰らった悔しさゆえだろうか。
「まあ、運がなかったね。」
「カレーを食べてるときにうんって言うのやめて。」
さっきの僕の発言に対してやり返したつもりらしいが、僕はその理不尽さに驚いてしまった。
だが梨乃は月という発想からすでに別のことを妄想しているらしい。
「ねえ、月でカレーうどん食べると、むっちゃ跳ねそうじゃない?」
梨乃はいたずらを思いついた子供のようににこにこしていたが、僕も重力が小さいためにそこら中に汁を飛び散らせながらカレーうどんを一生懸命食べている宇宙飛行士を想像してうどんを吹き出しそうになってしまった。
「だね。だから月ではカレーうどんは食べられないね。月では月見うどんを食べるんじゃない?」
僕が合いの手を打つと、梨乃は跳ねた汁のことは忘れてごきげんになってきた。
「月見だからそれは地球で食べるんじゃない? 月でならやっぱ力うどんでしょ。」
僕が月面でうどん屋を開いている2匹のうさぎを想像していると、梨乃はテーブルに突っ伏してもだえた。
「っあー、自分で言ってたら力うどん食べたくなっちゃったーっ。」
食事を終えて僕と梨乃はどんぶりの洗い上げをしていた。
僕がどんぶりを洗い梨乃に手渡すと、彼女はすばやくふきんで水滴をぬぐって水切りラックに立てかけた。
「今日は災難だったね。今度力うどん食べる? おいしいお店探しておくから。」
おいしいものを食べに行く話をするといつもは喜ぶのだが、梨乃はしばらく黙って考え込んだ。
うどんはもう食べたくないのかなと思ったが、よく見ると梨乃の唇はぶつくさと動いていた。
そしてはっとすると、勝ち誇った顔をこっちに向けた。
「服についたカレーうどんとかけてあなたの言葉と解きます。」
「その心は?」
「よく沁みるでしょう。」
梨乃はなぞかけを思いついた自分に満足しているだけのはずだが、僕にはその笑顔が自分に向けられているようでまだ昼間だというのに梨乃に対して気持ちが込みあがってきた。
その視線で梨乃は僕の考えていることを察し、
「してほしいの?」
と聞いてきた。
僕が小さな声でうんと言うと、梨乃は軽くキスをして僕のチャックをゆっくりとおろした。
「梨乃。あ、あの……。」
「何?」
「服にかかっちゃったらごめん。」
「下ネタ言うのやめて。」
梨乃はほほえんでいた。
~・~・~・~・~
~感想~
オチは最初から決まっていたので、伏線として計3回「言うのやめて」というセリフをいれておくことができました。
ただオチに行く流れを直前でボツにしたので、新たに考え直すのに時間を取ってしまいました。
あとカレーうどんを食べたあとにしてもらうとひどいことになるんじゃないかとも思いましたがそれはもう後の祭りです。
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