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祝宴の始まり
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「あの…」
「なんだ?」
「暗くて何も見えないです。あなたは蝋燭はお持ちでは無いですか?」
「悪いが持ってない、ただ様子を見に来ただけだからな」
「それなのに灯りも持たず何故ここにいるんですか?
ただ様子を見に来ただけなんて思えないのですが?」
私の的確な問いにその人は、ふっ、っと笑ったかと思ったら、『ハハハ!』と大きく笑い出した。
「なかなか鋭いじゃないか。
そう、俺はあんたに伝言を伝え、様子を見に来ただけじゃない」
「…やっぱり」
「なぁ…あんた、別れたなら独り身だろう?
俺も同じ独り身だ。今お互いに相手がいないなら誰も困らないはず」
「結局、そういう事をしたいのですね…」
「フフフ、あぁ。その通りだ。あの時はブライス様が来て止めになったが、今日はブライス様達は大事な日だからな。邪魔しにくるなんて事はない。
めでたい日を俺達も祝おうじゃないか!」
そういうとおもむろにポケットから蝋燭を出し、灯りに火を灯し始めた。
持ってない、なんて嘘だった。
ぼんやりと揺らめく蝋燭の火が牢屋内を照らし出す。
たった一本の蝋燭が私とその人を映し、暗い地下に二人の影が伸びていた。
「さて…」
牢屋の鍵に近づき、腰元に付けていた鍵を取り、カチャカチャと鍵を開けようとしてくる。
「…意外だな。もっと騒ぐと思ったのだが。
それとも諦めがついて受け入れる事にでもしたか?」
私は何も言わず、ただ開ける様子をずっと見ていた。
そして、カチャリ…と鍵を開け中へと入ってくる。
鍵は取られる心配が無い、と思ったのだろう。
そのまま鍵穴につけたままだった。
「ククク…さぁてどうしようか」
まるで品定めをするかのように私の頭から足までを見てくる。
その見方はとても気持ち悪く対峙する私は気分が悪くなるのが分かった。
「…早くしたらどうですか?もしブライス以外の人が来たらどうするんですか?」
「来るはずない、この階段を登っても要るのは俺の部下達だけだ。
さっきも言ったが今日ほど都合が良い日はないんだよ。
だから諦めて俺に捧げ」
そう言いながら私の元へと一歩、また一歩と近づいてくる。
そして、私の両肩を掴み出してくる。
ビクッと反応を見せる私にその人は呼吸を荒くしていった。
「なんだ、あんたも本当はそういう気持ちだったんじゃないか。じゃあ…」
その人は私にキスを迫り顔を近づけてきた。
目を瞑りゆっくりと私の方へと来る。
でも、私はこの人にそんな事を絶対にさせるつもりはない。
ガンッ
目を瞑るその人の鼻に思いっきり頭突きを喰らわし、怯んだ隙に私は牢屋を出て鍵を閉めた。
「お、お前!?」
鼻を押さえ痛がる人をそのまま置き去りにして私は階段を登り始めた。
(確か、階段の外には警備員がいるって)
登りながらどうやって振り切るかを考えた。
幸いこの屋敷の事はこの牢屋以外はなんとか分かる。
(捕まらない、絶対…)
捕まったらもう二度と出れない、それにさっき以上の事をされてもおかしくない。
たった一度のチャンス…。
階段を出て一気に廊下に出ると警備員達はいきなり出てきた私に驚き目を見開いているだけで、動かず立ち止まっていた。
(今しか…)
すぐに私は警備員がいる方とは逆の方へと走り出し逃げた。
ポカンとした警備員達だったが、すぐに『待て!!?」と私を追いかけてくる。
右に折れ、そして次は左と私は振り切るように逃げているとメイドが多く出入りしている場所にたどり着いた。
「まさか…ここで…」
そこはブライスの部屋から少し離れた場所。
一際大きな扉が立ちはだかりいかにも何かをするには、って場所だった。
後ろからは警備員達の怒号と足音。
迷ってる暇はない。
私はすぐにその大きな扉を開き、中へと入るとそこはブライスとユーリの祝宴が執り行われていた最中だった…。
「なんだ?」
「暗くて何も見えないです。あなたは蝋燭はお持ちでは無いですか?」
「悪いが持ってない、ただ様子を見に来ただけだからな」
「それなのに灯りも持たず何故ここにいるんですか?
ただ様子を見に来ただけなんて思えないのですが?」
私の的確な問いにその人は、ふっ、っと笑ったかと思ったら、『ハハハ!』と大きく笑い出した。
「なかなか鋭いじゃないか。
そう、俺はあんたに伝言を伝え、様子を見に来ただけじゃない」
「…やっぱり」
「なぁ…あんた、別れたなら独り身だろう?
俺も同じ独り身だ。今お互いに相手がいないなら誰も困らないはず」
「結局、そういう事をしたいのですね…」
「フフフ、あぁ。その通りだ。あの時はブライス様が来て止めになったが、今日はブライス様達は大事な日だからな。邪魔しにくるなんて事はない。
めでたい日を俺達も祝おうじゃないか!」
そういうとおもむろにポケットから蝋燭を出し、灯りに火を灯し始めた。
持ってない、なんて嘘だった。
ぼんやりと揺らめく蝋燭の火が牢屋内を照らし出す。
たった一本の蝋燭が私とその人を映し、暗い地下に二人の影が伸びていた。
「さて…」
牢屋の鍵に近づき、腰元に付けていた鍵を取り、カチャカチャと鍵を開けようとしてくる。
「…意外だな。もっと騒ぐと思ったのだが。
それとも諦めがついて受け入れる事にでもしたか?」
私は何も言わず、ただ開ける様子をずっと見ていた。
そして、カチャリ…と鍵を開け中へと入ってくる。
鍵は取られる心配が無い、と思ったのだろう。
そのまま鍵穴につけたままだった。
「ククク…さぁてどうしようか」
まるで品定めをするかのように私の頭から足までを見てくる。
その見方はとても気持ち悪く対峙する私は気分が悪くなるのが分かった。
「…早くしたらどうですか?もしブライス以外の人が来たらどうするんですか?」
「来るはずない、この階段を登っても要るのは俺の部下達だけだ。
さっきも言ったが今日ほど都合が良い日はないんだよ。
だから諦めて俺に捧げ」
そう言いながら私の元へと一歩、また一歩と近づいてくる。
そして、私の両肩を掴み出してくる。
ビクッと反応を見せる私にその人は呼吸を荒くしていった。
「なんだ、あんたも本当はそういう気持ちだったんじゃないか。じゃあ…」
その人は私にキスを迫り顔を近づけてきた。
目を瞑りゆっくりと私の方へと来る。
でも、私はこの人にそんな事を絶対にさせるつもりはない。
ガンッ
目を瞑るその人の鼻に思いっきり頭突きを喰らわし、怯んだ隙に私は牢屋を出て鍵を閉めた。
「お、お前!?」
鼻を押さえ痛がる人をそのまま置き去りにして私は階段を登り始めた。
(確か、階段の外には警備員がいるって)
登りながらどうやって振り切るかを考えた。
幸いこの屋敷の事はこの牢屋以外はなんとか分かる。
(捕まらない、絶対…)
捕まったらもう二度と出れない、それにさっき以上の事をされてもおかしくない。
たった一度のチャンス…。
階段を出て一気に廊下に出ると警備員達はいきなり出てきた私に驚き目を見開いているだけで、動かず立ち止まっていた。
(今しか…)
すぐに私は警備員がいる方とは逆の方へと走り出し逃げた。
ポカンとした警備員達だったが、すぐに『待て!!?」と私を追いかけてくる。
右に折れ、そして次は左と私は振り切るように逃げているとメイドが多く出入りしている場所にたどり着いた。
「まさか…ここで…」
そこはブライスの部屋から少し離れた場所。
一際大きな扉が立ちはだかりいかにも何かをするには、って場所だった。
後ろからは警備員達の怒号と足音。
迷ってる暇はない。
私はすぐにその大きな扉を開き、中へと入るとそこはブライスとユーリの祝宴が執り行われていた最中だった…。
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