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平行線
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レイ事務長に見られながら二階へと登る階段に足を付ける。
でもその足取りはとても重く一歩、また一歩と上に上がるが上がる度に重い空気が私を包んでいく。
(どんな顔して会えば良いんだろう…)
二階の部屋の灯りが目に映ると階段の踊り場で私は立ち止まった。
「はぁ…」
深くため息をつき、下を向いたまま項垂れているが、階段の下からレイ事務長の視線が突き刺さる。
早く行きなさい。と言わんばかりにずっと見ている。
その傍らにはマリーも私の事をレイ事務長に隠れつつ見ている。
(行くしかないのね…)
意を決し、階段を登り切り、灯りのする部屋へと進み軽く開いている扉をゆっくりと開けた。
キィィ…と音を立て開く扉の方へと顔を向けるユーリがいた。
その膝には『あの』本が置かれ、今まで読んでいたのだろう。
「…あ、あの」
他人行儀みたいに私は話し出すが、ユーリはすぐに本へと目を戻していった。
その様子に少しイラっとしてしまい、手を握り出す。
「何か用?」
こちらに顔を向けず、背中越しから聞こえるユーリの声。
私と顔を突き合わせて話したくないと言わんばかりだ。
「なんでこっちを見ないの?」
「今は見たくないからこうしてるだけ」
「…そう。ユーリってそんな感じだったんだ。
知らなかった。もっとしっかり話し合ってくれると思ってた」
「そっか、それはごめん。
でも、今はあなたの顔を見て話したくないって思ってしまう」
ペラペラ…と読んでいるわけでもないみたいだ。
ただページを次々に送り、気を紛らせている様子だった。
「もう寝ようか。疲れたでしょ?」
話を切り上げたいのか、そのように提案するユーリに私は…。
ドガッ、っとユーリが腰掛けているベットの隣に座り出し、持っている本を取り上げた。
「なにするの!?」
そしてその本を私のベットの方へと投げた。
「リーネ!」
「顔見て話してよ。…あの本、今まで読んだ事なんてないでしょ。
なんで持ってきたの?」
「いいでしょ、私の勝手でしょ!」
投げた本を取り戻そうと私のベットの方へと移動するユーリを私は腕を掴み再びベットへと座らせた。
「話は終わってない。明日私が聞く。いいよね?」
「さっき言った事聞いてなかったの?
あなたじゃ何も答えてくれないし、無駄に終わるだけ。
私に任せてくれたら上手く行く。だから何もしないで」
「なんで言い切れるの?私が弱いから?
一番気になってるのは私、ユーリじゃない」
「もう、いい!?」
ドン、っと私をベットから押し出すとユーリはベットに横になり私をシャットアウトした。
横になってしまったユーリを睨みつけたが、もう一切こちら側を見る事もなく、そっぽを向いたままだった。
「わかった、ユーリはそういう態度なんだね!」
私も同じようにベットに向かい、投げつけた本を手に取るとユーリの背中にポイっと当てるように投げ、ユーリに背中を向ける形で私も横になり、お互いそのまま夜を過ごした…。
でもその足取りはとても重く一歩、また一歩と上に上がるが上がる度に重い空気が私を包んでいく。
(どんな顔して会えば良いんだろう…)
二階の部屋の灯りが目に映ると階段の踊り場で私は立ち止まった。
「はぁ…」
深くため息をつき、下を向いたまま項垂れているが、階段の下からレイ事務長の視線が突き刺さる。
早く行きなさい。と言わんばかりにずっと見ている。
その傍らにはマリーも私の事をレイ事務長に隠れつつ見ている。
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意を決し、階段を登り切り、灯りのする部屋へと進み軽く開いている扉をゆっくりと開けた。
キィィ…と音を立て開く扉の方へと顔を向けるユーリがいた。
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その様子に少しイラっとしてしまい、手を握り出す。
「何か用?」
こちらに顔を向けず、背中越しから聞こえるユーリの声。
私と顔を突き合わせて話したくないと言わんばかりだ。
「なんでこっちを見ないの?」
「今は見たくないからこうしてるだけ」
「…そう。ユーリってそんな感じだったんだ。
知らなかった。もっとしっかり話し合ってくれると思ってた」
「そっか、それはごめん。
でも、今はあなたの顔を見て話したくないって思ってしまう」
ペラペラ…と読んでいるわけでもないみたいだ。
ただページを次々に送り、気を紛らせている様子だった。
「もう寝ようか。疲れたでしょ?」
話を切り上げたいのか、そのように提案するユーリに私は…。
ドガッ、っとユーリが腰掛けているベットの隣に座り出し、持っている本を取り上げた。
「なにするの!?」
そしてその本を私のベットの方へと投げた。
「リーネ!」
「顔見て話してよ。…あの本、今まで読んだ事なんてないでしょ。
なんで持ってきたの?」
「いいでしょ、私の勝手でしょ!」
投げた本を取り戻そうと私のベットの方へと移動するユーリを私は腕を掴み再びベットへと座らせた。
「話は終わってない。明日私が聞く。いいよね?」
「さっき言った事聞いてなかったの?
あなたじゃ何も答えてくれないし、無駄に終わるだけ。
私に任せてくれたら上手く行く。だから何もしないで」
「なんで言い切れるの?私が弱いから?
一番気になってるのは私、ユーリじゃない」
「もう、いい!?」
ドン、っと私をベットから押し出すとユーリはベットに横になり私をシャットアウトした。
横になってしまったユーリを睨みつけたが、もう一切こちら側を見る事もなく、そっぽを向いたままだった。
「わかった、ユーリはそういう態度なんだね!」
私も同じようにベットに向かい、投げつけた本を手に取るとユーリの背中にポイっと当てるように投げ、ユーリに背中を向ける形で私も横になり、お互いそのまま夜を過ごした…。
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