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ここで…

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「リーネ、あなた、ブライス様とはもう一緒にいられないんじゃない?
あんな事があったんだし、それにさっきの事もある」

「それは…まぁ…そうだけど」

「でも離縁したらマリーを取られてしまうからそれだけは嫌だから拒んでいるんでしょ?」

「そうだよ…」

「だったら…。
リーネ、あなた、やっぱりブライス様と離縁して」

「な、なに言ってるの!?ちゃんと私の話聞いてた?」

私はマリーと一緒に横になっていた体を起こしすぐにユーリに問い詰めていた。
その声は大きく隣で寝ているマリーが起きてもおかしくないくらいに。

興奮気味に話す私とは対照的に至って冷静な顔をしながら私を寝ながら見ているユーリ。
その顔は冷たいというか冷ややかな感じであった。

「ユーリ、あなたがそんな事言うなんて思ってなかった。私の味方だと思っていたのに…」

「…ちゃんと聞いて、リーネ。話は終わってないよ」

むくっと体を起こして私と向き合うユーリは寝ているマリーの頭を優しく起きないように撫でている。

「マリーは渡さない。それは私もそう望んでる。
でもあなたの家はお世辞にも裕福とは言えないでしょ?
離縁したら援助が無くなりキツイのも私は知ってる。
だから離縁しても大丈夫なように私が手を打つから」

「手って…どんな?」

ユーリは私に離縁してもマリーを渡さない方法や両親達を守る『ある』手を話しだしてきた。
それは…。




数日後、私はブライスの部屋の前にいた。
そしてゆっくりとノックをし、返事を確認してからゆっくりと扉を開けて中へと入っていった。

急に来た私に驚く表情を見せるブライス。
椅子に座り執務をしている手を止め、立つと扉近くに立ち尽くしている私の方へと向かってくる。

「ブライス、話があるの」

「…なんだ?そんな場所で話すつもりか?
とにかくこちらに来い、リーネ」

私は首を振り、扉から離れる事を拒み、ここで話したいと要求した。
それは、もしなにか手を出すような事があっても逃げれるようにする為と、ブライスの部屋の近くでユーリが待機していてすぐにでも助けられるように扉に鍵をかけられないようにする為だ。

「なぜそこに拘る?…まぁ、いい。で、なんだ?話とは」

「…あなた、まだアリスと繋がってるよね?」

「何を言うかと思えば…もう無い。」

「いいえ、あるはず。私が知らないと思ってるんでしょうけど、あなたがこそこそと夜出かけているのを知ってる。
バレないように馬車は使ってないみたいだけど」

私の尋問に顔を背けていくブライス。
その行動は正解のようだ。
でも私は本当はそんな事しらない、ただのハッタリだ。

「だとしたらどうする?離縁でもするか?
お前自身が『しない』と俺に言ったはずだ。
マリーを置いていくなら別だがな」

横を向きながらだが、勝ち誇った顔を見せるブライスに私は…。

「…私はあなたと離縁します。」

「あぁ、そうか、じゃあマリーは…」

「でもこれを見て」

私は一枚の紙をブライスに差し出した。
それは、ロータスさんが不正を指示し着服していると告発している文章だ。
それはユーリがレイ事務長から預かっていた物。

私が差し出す紙を見るが、特に驚く事もなく私に話してくる。

「それがなんだ。ロータスさんが勝手にやっていた事だろう。それと離縁になんの問題が…?」

「じゃあ、こっちを見て」

私はそれとは別にもう一枚の紙をポケットからだし紙の右下にブライスの自筆のサインを見せ問い詰めた。

「ここにあるのはあなたのサインでしょ。
あるってことは不正していた事をあなたは容認していた。
あなたにも落ち度はあるの。これを公表してもいい?
そうなったら…」

差し出したもう一枚の紙を見るなり焦った表情を見せ私の方へと手を差し伸ばしてきた。
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