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義姉からの申し出
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泣き崩れた野村さんを近くで見守っていた小林さんが優しく声をかける。
「よく頑張ったね、明日香。行こう…」
小林さんに支えられて野村さんはクラスを後にした…。
「野村さん」
私は彼女を追いかけようとしたけど、綾と佐藤君に静止された。
今は行くべきじゃない、と。
「えりちゃん、俺は君が好きだよ。
気持ちが届かなくても近くに居させて欲しい。
立花との約束だから、朝や放課後は来ないけど、昼はいいかな…?」
「…はい」
いつものふざけた感じの佐藤君からは想像出来ない真面目な感じに少し優しくなれそうな気がした。
放課後
綾と帰るが、いつもの様に迫ってくる佐藤君は居なかった。約束を守ってくれてるみたいだ。
「えりりん、少し寂しかったりする?」
「どうして?」
「いつもなら、さとしんが来るから」
「ん~…ちょっとだけ」
「近くには来ないけど、見ていたりはするよ、ほら」
後ろを指差すと、見つかってマズいと言った顔をした佐藤君がいた。目が合い、いつもなら逸らすが、笑顔で返す自分がそこにはいた。
帰り道、綾がクラスで言っていた『卒業』が頭をよぎり、話をしてみた。
「ねぇ、あや、私達、卒業したら別々になるね…」
「そうだね、あと1年かぁ、なんかすぐ来ちゃいそうだね~。でも、私はえりりんの側にいるよ。
進学しても就職してもいつでも、えりりんに会いに行くよ」
今この時間を大事にしたい、より強く思えた。
綾と一緒の学校や会社に行くのは出来ないけど
会いに来ると言ってくれた気持ちが嬉しかった。
「えりりん、泣いてるの?」
「え…ホントだ、なんでだろう…」
気付かないうちに目から涙を流していた。
そんな私の手を握り、自分に引き寄せハグをしてくれた。
「大丈夫だよ、私はえりりんの親友だからいつでも呼んでね」
「うん…」
ちょっとだけ綾に甘えていたい、そう思った…。
「えりりん、また来週ね。日曜日の事ちゃんと教えてね!さとしんが変な事してきたら言って。とっ捕まえるから!」
「ありがとう」
明後日は日曜日。
3人だけど、デートかぁ…と思いながら家に向かった。
「ただいま」
「おう、おかえり、衣里」
「お帰り、衣里ちゃん」
「え…由佳さん、どうして?」
「どうしても謝らないといけない事があって、お邪魔させて貰ったの。もし良かったらあなたの部屋で話せない?」
「…わかりました、どうぞ」
突然の由佳さんの訪問。謝らないといけない事とはなんだろうと考えながら部屋に招く。
「すみません、汚くて…。適当に座ってください。あ、飲み物持って来ますね。何が良いですか?」
「すぐ帰るから気にしなくて大丈夫よ、あなたも座って」
由佳さんとしっかり話すのは初めてで、何を話していいか分からず、黙り込んでしまった。
「そんな緊張しないでね。」
「はい…すみません。あの、謝らないといけない事って何ですか?」
「実は…担当してるお客様がいて、どうしても明日が良いと言ってて…昔からのお得意様だから断れなくて」
「担当してるお客様…ですか?」
「あ、ごめんなさい。私、美容師をしてるの」
初めて会った時に、思っていたけど髪のアレンジとか上手だし、そうなのかもと予想していたが、本当だったんだ。
「そうなんですね、ビックリです!」
「でも、ごめんなさい。明日はどうしてもダメになってしまって…」
「大丈夫です、お仕事なら仕方ないですから。お気になさらず」
由佳さんが私をジッと見て、何か考えている。
時々悩んだりしてるけど…私に何かあるんだろうかと思い、体をキョロキョロ見たりした。
しかし、特にない様に思えたが、由佳さんはずっと考えている…。
「あ、あの…」
何かを決めたようで私を見つめる。
「衣里ちゃん、最近、髪切った?」
「えっと、3か月くらい前に切ってからは無いですが、どうしてですか?」
「良かったら明日、私の仕事後に切らせて貰えないかな?」
突然由佳さんから切りたいと言う申し出。
髪型が変なのかなと思う一方、何かあるのかなと両方考えてしまった。
「よく頑張ったね、明日香。行こう…」
小林さんに支えられて野村さんはクラスを後にした…。
「野村さん」
私は彼女を追いかけようとしたけど、綾と佐藤君に静止された。
今は行くべきじゃない、と。
「えりちゃん、俺は君が好きだよ。
気持ちが届かなくても近くに居させて欲しい。
立花との約束だから、朝や放課後は来ないけど、昼はいいかな…?」
「…はい」
いつものふざけた感じの佐藤君からは想像出来ない真面目な感じに少し優しくなれそうな気がした。
放課後
綾と帰るが、いつもの様に迫ってくる佐藤君は居なかった。約束を守ってくれてるみたいだ。
「えりりん、少し寂しかったりする?」
「どうして?」
「いつもなら、さとしんが来るから」
「ん~…ちょっとだけ」
「近くには来ないけど、見ていたりはするよ、ほら」
後ろを指差すと、見つかってマズいと言った顔をした佐藤君がいた。目が合い、いつもなら逸らすが、笑顔で返す自分がそこにはいた。
帰り道、綾がクラスで言っていた『卒業』が頭をよぎり、話をしてみた。
「ねぇ、あや、私達、卒業したら別々になるね…」
「そうだね、あと1年かぁ、なんかすぐ来ちゃいそうだね~。でも、私はえりりんの側にいるよ。
進学しても就職してもいつでも、えりりんに会いに行くよ」
今この時間を大事にしたい、より強く思えた。
綾と一緒の学校や会社に行くのは出来ないけど
会いに来ると言ってくれた気持ちが嬉しかった。
「えりりん、泣いてるの?」
「え…ホントだ、なんでだろう…」
気付かないうちに目から涙を流していた。
そんな私の手を握り、自分に引き寄せハグをしてくれた。
「大丈夫だよ、私はえりりんの親友だからいつでも呼んでね」
「うん…」
ちょっとだけ綾に甘えていたい、そう思った…。
「えりりん、また来週ね。日曜日の事ちゃんと教えてね!さとしんが変な事してきたら言って。とっ捕まえるから!」
「ありがとう」
明後日は日曜日。
3人だけど、デートかぁ…と思いながら家に向かった。
「ただいま」
「おう、おかえり、衣里」
「お帰り、衣里ちゃん」
「え…由佳さん、どうして?」
「どうしても謝らないといけない事があって、お邪魔させて貰ったの。もし良かったらあなたの部屋で話せない?」
「…わかりました、どうぞ」
突然の由佳さんの訪問。謝らないといけない事とはなんだろうと考えながら部屋に招く。
「すみません、汚くて…。適当に座ってください。あ、飲み物持って来ますね。何が良いですか?」
「すぐ帰るから気にしなくて大丈夫よ、あなたも座って」
由佳さんとしっかり話すのは初めてで、何を話していいか分からず、黙り込んでしまった。
「そんな緊張しないでね。」
「はい…すみません。あの、謝らないといけない事って何ですか?」
「実は…担当してるお客様がいて、どうしても明日が良いと言ってて…昔からのお得意様だから断れなくて」
「担当してるお客様…ですか?」
「あ、ごめんなさい。私、美容師をしてるの」
初めて会った時に、思っていたけど髪のアレンジとか上手だし、そうなのかもと予想していたが、本当だったんだ。
「そうなんですね、ビックリです!」
「でも、ごめんなさい。明日はどうしてもダメになってしまって…」
「大丈夫です、お仕事なら仕方ないですから。お気になさらず」
由佳さんが私をジッと見て、何か考えている。
時々悩んだりしてるけど…私に何かあるんだろうかと思い、体をキョロキョロ見たりした。
しかし、特にない様に思えたが、由佳さんはずっと考えている…。
「あ、あの…」
何かを決めたようで私を見つめる。
「衣里ちゃん、最近、髪切った?」
「えっと、3か月くらい前に切ってからは無いですが、どうしてですか?」
「良かったら明日、私の仕事後に切らせて貰えないかな?」
突然由佳さんから切りたいと言う申し出。
髪型が変なのかなと思う一方、何かあるのかなと両方考えてしまった。
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