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束の間の楽しみ

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「ちょっと!さとしん、なんでついてくるの?どっか行ってよ!」
帰り道、ついてくる佐藤君を追い払う綾。
「えりちゃん~楽しみにしてるからね~」
手を降り意気揚々と帰っていく佐藤君。

綾がなにか私に言いたいんだろうなと言うのは薄々気付いた。
「あのさ、あや…怒ってる?」
「怒ってないけど、心配しかない。翔太君は大丈夫だと思ってるけど、さとしんがいるのが…。
あ~あ、日曜日、バイト入れるんじゃなかったなぁ」
「ごめんね…」
「でも」
「でも?何?」
「えりりん、翔太君に可愛いって思って貰いたいよね?」
「…うん」

やっぱりそう思われたい。普段は学校で会うが、
プライベートな時間に会うから少しでも良く思われたいと思うのは普通なのだから。
それに好みや趣味とか知れる良い機会だなぁと。

(翔太君の私服ってどんなのだろう)

「えりりん、土曜日時間ある?あるなら服見に行かない?色々選んであげる!」
「土曜日…。ごめん、予定があって…」
「そっかぁ…じゃあ、今から行かない?行こうよ、えりりん」
グイッと腕を引っ張り、服を買いに駆け出す。
こうやって色々考えてしてくれる綾に感謝しっぱなしだ。
駅に隣接されているショッピングモールに行き、私に合いそうな服を探してくれている。
「えりりんは綺麗より可愛い系が良いからなぁ、こっちの店かな。あ、でも、えりりんも見たい店あったら言ってね」
昔からよく遊んだりしていたからか私の特徴をよく掴んでる。
「あ、この店、良さそう。行こう行こう」
「いらっしゃいませ、何かお探しですか?」
「この子が、今度、彼氏とデートなんで合いそうな服を探してます」
「違います!あや、彼氏じゃないから…。」
「いつかはなるんじゃないの~」
ニヤニヤしながら私に話す姿はいじるのを楽しんでいるみたいだ。
店員が私を見て、合いそうな服をチョイスしてくれた。
「これなんかどうですか?」
持ってきてくれたのは
薄いピンクのワンピース、所々に花柄が刺繍されている。それにベージュのカーディガンを合わせる形。
「わぁ。可愛い、えりりん着てみて、着てみて!」
「うん」
普段が緩めのトップスにスカートばかりであり
自分では着ないような感じなので少し恥ずかしさが出てしまう。
「えりりん、着れた??」「…うん」
試着室のカーテンをシャッと開ける。
「……」
「……」 
あやも店員も無言の感じだとやっぱり合わなかったんだなぁって察していたが

「…可愛い」
「…似合いすぎる」

「えりりん!可愛いすぎるよ!ズルい!」
「ズルいって言われても…」
店員も選んで良かったって顔で私達を見ている。

カシャ

突然カメラのシャッター音が響く。
見ると綾が私にカメラを向けていた。
「ちょ、ちょっと何撮ってるの!?」
「いいから、いいから」
そういいながら何枚も写真を撮り続けるので堪らず試着室のカーテンを閉めた。
「あや!怒るよ、本当に!」
「可愛いのになぁ…見てごらんよ」
そう言うからカーテンを開け、撮った写真を私に見せてくれた。
「…」
「ね。可愛いでしょ」
こんな風なんだ…って素直に思って、画面を見続けた。
「これに決めよ、いいよね?あ、良かったらそのまま帰ろうよ。周りの反応が凄いと思うなぁ~」
「ダメダメダメ!恥ずかしいから!」
そんなのお構い無しに、あやは店員に買ってこのまま帰る旨を伝えている。
「大丈夫ですか?」
横を見ると目をキラキラさせながらこっちを見るあや。
断り切れないなぁと思い、軽くため息をつき、頷く。


「良いもの買えたね、えりりん!」
満足そうな顔でいうあやに対し、私は周りからの目が痛いくらい伝わってきて…。
(おい、あの子可愛くね?)
(あんな子が彼女なら絶対手放さないなぁ)
早く家に帰りたい…。そればかり考えてしまう。
「じゃあ、私こっちだから。ナンパされたらちゃんと断るんだよ~」
「え、近くまで居てくれないの?」
「ダメダメ、頼ってばかりじゃ。じゃあね~」
そう言うと、店を出たとこで綾と別れた。

急に1人きりで心細くなり、足早に家に帰ろうと家路に向かうが
「ねぇねぇ、今1人?」

(本当にナンパされた!)

「凄い可愛いね。良かったらお茶とかどう?」
「ご、ご、ごめんなさい!」
すぐにその場から走って逃げた。

ひたすら走って家に着いたら、
ふと、綾に写真を消してもらう事忘れていた。
(誰かに見せたりする前に消してもらわないと…)

悪い予感は当たってしまう…。
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