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「待って、メリッサ」
「お嬢様?」

私は迫ろうとしたメリッサの横を通りメリーへと近づいていった。

「なんですか?」
「あなたに聞きたいことがある」
「……手短かにお願いしますね。リスティア様のお側に行かなくてはいけないので」
「えぇ、……あなた、あの日、私の部屋に入ってベットを直した?」
「なんですか、それは??」
「いいから答えて、あなた以外いないはずだから」

キッと見る私の目を見て、一瞬下を向くがまた直ぐに目線を戻してきた。

「えぇ、そうですよ。レスティア様の指示ですから。それがなにか?」
「じゃあ、その時、カップも……」
「カップ?……あぁ、あの睡眠薬入りのですか?もちろん。証拠なんて残していてもいい事ないですからね。入れ替えましたよ。でもそんな事いまさらどうこう言うのも可笑しいですよね?話なのでは?」
「あなた……」
「……話は終わりですよね。それでは」

去ろうとするメリーを私は追いかけず下を向いた。

(やっぱり……)

「あっ、お嬢様、あそこ……」

メリッサの言葉に顔をあげるとゆっくりとこちらへとやってくる人物がいた。

「……に、ニコラス?」

メリーは近づくニコラスに道を譲るためにすぐに廊下の端へと移動し、そして私の前へとやってきた。

「久しぶりだな、……フェリス」

これから始まるというのに控室を出て私の元へとやってきたニコラスは真っ白なタキシード姿に首元には赤いスカーフを巻いていた。

「なんでここに?」
「始まる前に少しだけお前と話がしたくてな」
「……私はあなたとはしたくない」
「ふっ、そう言うな。ほんの少しだけだ」
「ほんの少しでも私は嫌……」
「ちょっと!ニコラス様が言ってるのよ!?ちょっと図に乗りすぎじゃないの!?」

ニコラスがメリーへと右手をゆっくり伸ばす。

「やめろ、メリー。俺が呼んだ招待客だ。
そんな物言いは良くないな」
「も、申し訳ありません……」
「……ほんの少しだ、いいだろう?フェリス」
「だったら、早くしたら?あなたの花嫁が待ってるでしょ?」
「まぁな。……ところでお前、よく無事だな?あんな奴の元に行ったのに。てっきり手紙を受け取らずに野垂れ死んでるかと思った」

(この人……)

「少し痩せたか?んんっ?よく顔を見せてみろ」

一歩ニコラスが近くに寄るとメリッサが間に入ってきた。

「……お言葉ですが、お嬢様はもうあなた様の事なんとも思っていません。お引き取りを」
「こ、こらっ!?メリッサ!今のいい草は看過出来ないわ!?訂正、……いやっ、撤回しなさい!!?」

メリーの大声が響く。

「……メリッサ、お前もなかなかの図太い奴になったな。フェリスを支えるしか能が無かったのに」
「……」
「ニコラス、今のはメリッサに失礼よ、撤回して」
「だったら先にメリッサでしょ!??早くしなさいよ!?あんな言葉を発して許してもらおうと思ったら土下座くらいしなさいよっ」
「……メリー、少し黙れ。前に出過ぎだ」
「で、でもっ」
「んんっ?なんか言ったか?」

ニコラスの鋭い視線が刺さり、メリーは口を真一文字にし、黙り込む。

「……二人とも変わったもんだな。だが、その態度は後々自分達を苦しめるぞ」
「どういう意味?」
「さぁな」

ニコラスは私達の元を去っていった。
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