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嘘
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歩いてくるジャックさんは私に気付くと少し目を伏した。
どうやら反省しているようで、歩く速度も少し遅くなっている。
「どうしたんですか?」
「いや、さっきは……」
「傷、開いたりしますよ。戻ってください」
「そういう訳には」
「もうさっきの事はいいです。でも次あったら許しませんよ」
「……はい」
「でも、今日はここに私はいます」
「そうですか……そうですよね……」
期待した返事を貰えなかった事に落胆しつつジャックさんは引き返していった。
そんな後ろ姿はエリスに会えなかった時と同じく小さく見えた。
ーーーーーー
翌朝、周囲に人があれから来なかったみたいで私は無事に朝を迎えることができた。
「…っ」
手を上げ、伸びをしつつジャックさんのいる方を見た。
(まだ落ち込んでいるのだろうか…)
傷の件もあるので私は立ち、家へと向かう事にした。
そして近づいていくと家の不気味さが際立って見えた。
朽ちた木にボロボロの板、外からでも中の様子が見える箇所がいくつもある。
そんな家に私は来ていたんだと…。
あのままこの家にいたら病気にでもなりそうなくらいだ。
そんな家の中で寝るジャックさんはまだ起きてないようだった。
恐る恐る中の様子が見える箇所から覗くと自然に横になり寝ていた。
「良く寝れるなぁ……こんな場所で……」
長年森の小屋で暮らしていたからこんな家でも普通に暮らせる精神が身についたのだろうか、度胸があると言うか……。
そんな風に見ていると『ふわぁ』とあくびをしつつ起きてくる。
「あっ」
つい声を出してしまっていた。
「……リースさん?」
私に声をかけてくるジャックさんの声から隠れるように小屋の隅へと急いで移動した。
「リースさんでしょ!……ねぇ」
飛び起き家をでるとすぐに私は見つかった。
「やっぱり、……覗きとは変な趣味がありますね」
「……違います」
「じゃあ何故ここにいるんです?」
「いたらダメですか?人がせっかく心配したというのに」
「心配?もしかして私が落ち込んでいるから?」
「ま、まぁ……。それよりも傷の方が心配ですが」
「あなたは優しいのか、それとも天の邪鬼なのか……」
「いいですっ。そこまで言うなら!?」
せっかくの厚意を押さえつけてくるこの人の事を見にくるんじゃなかったと思った。
だからまた家から離れるように私は引き返していった。
「待って!どこに!?」
「どこでも良いでしょ」
「良くないです、あなたは街にいくのが嫌なはず。もう少しここに」
「こんな不気味な家にいたらどうかなりそうです!街のがまだ安全です!」
ズンズンと歩く私を追うようにジャックさんは追いかけ隣に並びつつ説得してくる。
「いいから、街は……」
「もうバレても構いません、耐えれば良いだけですから!」
「いやいや、何を言ってるんです。あなたに耐えれる訳ない」
「いいえ、大丈夫です。お構いなく」
「無理ですって!?」
私の手首を掴み、引き止めては歩くのをやめさそうとしてきた。
「掴まないでくださいっ。声を上げますよ!」
「ここには人なんて来ませんよ」
「いいえ、来ます!昨日だって!?」
「昨日?……誰が来たんです」
「いや、……そう、散歩してくる人とか」
「昨日って夜ですよね?そんな時間にこんな外れに散歩?おかしいですよね」
「いいえ、私はちゃんと見ました。人が居たのを」
エリスが来た事を告げず、嘘を重ねていきなんとか誤魔化そうとした。
「じゃあ特徴を言ってください」
「とく、ちょう?」
「えぇ、見たなら言えますよね?……教えてください」
「なんで教えないと……。いたのは事実ですからそれで十分ですよね」
「本当に見たんですか?……ならなんでこんな脈が早いんです?」
まさかそんな方法で嘘を見抜いてくるなんて……と思った。
脈を測り私の嘘を暴こうとしてきた。
「私の脈は早いんです」
咄嗟の嘘も浅はかなもので……。
「ぷっっ」
「なに笑ってるんですか!?」
「脈が早いなんて嘘、初めて聞きましたよ。……体が嘘だって素直なくせに」
「うるさいっ」
私はバッと手首を振り払った。
どうやら反省しているようで、歩く速度も少し遅くなっている。
「どうしたんですか?」
「いや、さっきは……」
「傷、開いたりしますよ。戻ってください」
「そういう訳には」
「もうさっきの事はいいです。でも次あったら許しませんよ」
「……はい」
「でも、今日はここに私はいます」
「そうですか……そうですよね……」
期待した返事を貰えなかった事に落胆しつつジャックさんは引き返していった。
そんな後ろ姿はエリスに会えなかった時と同じく小さく見えた。
ーーーーーー
翌朝、周囲に人があれから来なかったみたいで私は無事に朝を迎えることができた。
「…っ」
手を上げ、伸びをしつつジャックさんのいる方を見た。
(まだ落ち込んでいるのだろうか…)
傷の件もあるので私は立ち、家へと向かう事にした。
そして近づいていくと家の不気味さが際立って見えた。
朽ちた木にボロボロの板、外からでも中の様子が見える箇所がいくつもある。
そんな家に私は来ていたんだと…。
あのままこの家にいたら病気にでもなりそうなくらいだ。
そんな家の中で寝るジャックさんはまだ起きてないようだった。
恐る恐る中の様子が見える箇所から覗くと自然に横になり寝ていた。
「良く寝れるなぁ……こんな場所で……」
長年森の小屋で暮らしていたからこんな家でも普通に暮らせる精神が身についたのだろうか、度胸があると言うか……。
そんな風に見ていると『ふわぁ』とあくびをしつつ起きてくる。
「あっ」
つい声を出してしまっていた。
「……リースさん?」
私に声をかけてくるジャックさんの声から隠れるように小屋の隅へと急いで移動した。
「リースさんでしょ!……ねぇ」
飛び起き家をでるとすぐに私は見つかった。
「やっぱり、……覗きとは変な趣味がありますね」
「……違います」
「じゃあ何故ここにいるんです?」
「いたらダメですか?人がせっかく心配したというのに」
「心配?もしかして私が落ち込んでいるから?」
「ま、まぁ……。それよりも傷の方が心配ですが」
「あなたは優しいのか、それとも天の邪鬼なのか……」
「いいですっ。そこまで言うなら!?」
せっかくの厚意を押さえつけてくるこの人の事を見にくるんじゃなかったと思った。
だからまた家から離れるように私は引き返していった。
「待って!どこに!?」
「どこでも良いでしょ」
「良くないです、あなたは街にいくのが嫌なはず。もう少しここに」
「こんな不気味な家にいたらどうかなりそうです!街のがまだ安全です!」
ズンズンと歩く私を追うようにジャックさんは追いかけ隣に並びつつ説得してくる。
「いいから、街は……」
「もうバレても構いません、耐えれば良いだけですから!」
「いやいや、何を言ってるんです。あなたに耐えれる訳ない」
「いいえ、大丈夫です。お構いなく」
「無理ですって!?」
私の手首を掴み、引き止めては歩くのをやめさそうとしてきた。
「掴まないでくださいっ。声を上げますよ!」
「ここには人なんて来ませんよ」
「いいえ、来ます!昨日だって!?」
「昨日?……誰が来たんです」
「いや、……そう、散歩してくる人とか」
「昨日って夜ですよね?そんな時間にこんな外れに散歩?おかしいですよね」
「いいえ、私はちゃんと見ました。人が居たのを」
エリスが来た事を告げず、嘘を重ねていきなんとか誤魔化そうとした。
「じゃあ特徴を言ってください」
「とく、ちょう?」
「えぇ、見たなら言えますよね?……教えてください」
「なんで教えないと……。いたのは事実ですからそれで十分ですよね」
「本当に見たんですか?……ならなんでこんな脈が早いんです?」
まさかそんな方法で嘘を見抜いてくるなんて……と思った。
脈を測り私の嘘を暴こうとしてきた。
「私の脈は早いんです」
咄嗟の嘘も浅はかなもので……。
「ぷっっ」
「なに笑ってるんですか!?」
「脈が早いなんて嘘、初めて聞きましたよ。……体が嘘だって素直なくせに」
「うるさいっ」
私はバッと手首を振り払った。
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