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心境

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後を追う事をやめた父は、後ろの方で大声を張り上げ何かを叫んでいた。
でもそのどれも私は反応せず森へと向かった。


森の入り口にたどり着くと父の言葉が重くのしかかった。

(……盗人)

緊急時とはいえ、黙って持ってくる行為は家族といえど盗人だ。
深く刺さる言葉に私は座り込み泣いた。

夜の森の中は危険。
そう教わったため入る事を諦め、その日は森の前で周りを注意しつつ体を休めた。



ーーーーーー


翌日、雨が降り出してきた。
まるで昨日行った行為の者に罰を与えるような感じだ。

「行かなきゃ……」

降る雨の中、私は置いてきた『目印』を頼りに慎重に、かつ、早く辿り着くため軽く小走りで森を進んだ。
目印があるため迷う事なくあの洞穴近くまで来れた。

だが、隠すように置かれた草が乱れているように見えた私は急いで洞穴へと急いだ。

「ジャックさん!」

中には息をし、眠るジャックさんがおり、それを見た私は持ってきた物全てを落とした。

「……良かった」

落とした物の音に驚いたジャックさんは目を開くと頭を持ち上げ私の事を見てきた。

「どこに、行ってたんです。心配しましたよ」
「……私の台詞です。それ」

落とした物が医療道具だと知ると、ゆっくり体を起こし始めた。

「これ、どこで?」
「私の、家です」
「……森、抜けたんですか?」
「はい」
「迷うはずなのに、どうやって?」

疑問を言うジャックさんは裾がボロボロで所々破れている姿を見て『そこまでして……』と察したようだ。

転がるアルコールが入った瓶を持つとそれをジッと見たあと、グッと力を入れた。

「……ります」
「え?」

何かを言ったようだが私には聞こえなかった。
それよりも今は手当てを、と思い、瓶を渡すようにお願いした。

赤く染まったタンクトップを脱ぎ、傷口にゆっくりアルコールを流す。

「っく」
「ごめんなさい!」
「……いや」

終始無言で手当てをしていると、お腹が鳴った。
カァァ…と赤くなる私にジャックさんは手当てもそこそこに出て行こうとする。

「動いたらダメです!?」
「……あなたばかり無理させるわけにはいきません」
「ダメです!今は私のいう事聞きなさい!」

立ちあがろうとするジャックさんの肩を押さえつけた。
すると、そっと手を添えてきた。

「ありがとう」

優しく言うその言葉は私の心に染み渡った。
と同時に、体温が上がってしまった。

「……とにかく、休んで貰わないと。この辺に、何か食べれそうな物は」

目を合わさず言う私に出たら近くに実がなってるはず、と言う。
それを聞いた私はすぐに洞穴から出ていった。

(なんで、こんなドキドキしてるの……)

相手は殺人者なのに……。
自分の気持ちがわからなくなってしまった。
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